『モアナと伝説の海』の主題歌は、英語で How Far I'll Go。作詞作曲は、ブロードウェイの『ハミルトン』で知られるリン=マニュエル・ミランダです。
そして、ここが一番よく間違えられるところなのですが、この曲は第89回アカデミー賞の歌曲賞に「ノミネート」されただけで、受賞はしていません。代わりに第60回グラミー賞では受賞しています。賞の名前だけが独り歩きして「アカデミー賞受賞曲」と紹介されている記事が少なくないので、最初にはっきりさせておきます。
この記事では、主題歌How Far I'll Goを筆頭に、You're WelcomeWe Know the WayShinyWhere You Areといった劇中歌を、曲名・作詞作曲者・歌っている人・使われる場面・曲名そのものの英語の意味という切り口で整理します。あわせて、多くの人がつまずく「この曲、そもそも英語じゃないのでは?」という疑問にも、作曲者本人の公式サイトを根拠に答えます。
なお、著作権に配慮して本記事では歌詞を一行も引用しません。扱うのは曲名・作り手・受賞歴・歌われる場面・そして曲名に使われている語の意味だけです。それでも書ききれないほどの分量になりました。
劇中歌を英語の歌声のまま聴くなら、Disney+がいちばん手軽です。日本のアカウントのまま、再生画面の設定を切り替えるだけで英語音声・英語字幕にできます(VPNや海外アカウントは不要)。気になる方はDisney+をのぞいてみてください。
Contents
- 1 モアナと伝説の海の主題歌は英語で「How Far I'll Go」
- 2 劇中歌を作った3人|ミランダ/フォアイ/マンシーナ
- 3 劇中歌ぜんぶの曲名リスト|英語題・日本語題・歌っている人
- 4 曲名に使われている英語の意味
- 5 聞き取れなくて当然|英語ではない曲がある
- 6 日本語版でも「訳されなかった曲」がある
- 7 劇伴26曲の英語タイトルは、そのまま英文法の練習問題になる
- 8 『モアナと伝説の海2』の楽曲|担当者が交代している
- 9 実写版『モアナと伝説の海』(2026年)の楽曲
- 10 Disney+で劇中歌を英語音声のまま聴く方法(VPN不要)
- 11 歌詞を使わずに主題歌から英語を学ぶ5つの方法
- 12 モアナの主題歌についてよくある質問
- 13 まとめ|曲名と言語が分かると、モアナの音楽は別物に聞こえる
モアナと伝説の海の主題歌は英語で「How Far I'll Go」
結論から言うと、主題歌の英語表記はHow Far I'll Goのひと言です。日本語題は「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」で、日本語訳と英語の原題が1つのタイトルに同居しているという、少し珍しい形をしています。
主題歌の基本データ|作詞作曲・歌手・受賞
まず、押さえておきたい情報を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語の曲名 | How Far I'll Go |
| 日本語の曲名 | どこまでも 〜How Far I'll Go〜 |
| 作詞・作曲 | Lin-Manuel Miranda(リン=マニュエル・ミランダ) |
| 英語版の歌唱(劇中) | Auli'i Cravalho(アウリイ・クラヴァーリョ/モアナ役) |
| 英語版の歌唱(エンドクレジット) | Alessia Cara(アレッシア・カーラ) |
| 日本語版の歌唱(劇中) | 屋比久知奈(モアナ役) |
| 日本版エンドソング | 加藤ミリヤ |
| 収録アルバム | Moana: Original Motion Picture Soundtrack(2016年11月18日) |
| アカデミー賞 | 第89回 歌曲賞 ノミネート(受賞はしていない) |
| グラミー賞 | 第60回 Best Song Written for Visual Media 受賞 |
Best Original Songという部門名は、日本語では「歌曲賞」とも「主題歌賞」とも訳されます。本記事では歌曲賞で統一しました。
アカデミー賞は「受賞」ではなく「ノミネート」
ここは本当に間違えやすいので、独立した見出しを立てておきます。
『モアナと伝説の海』はアカデミー賞を1つも受賞していません。第89回アカデミー賞で長編アニメーション映画賞と歌曲賞の2部門にノミネートされましたが、どちらも受賞を逃しています。歌曲賞を獲ったのは、同じ年の『ラ・ラ・ランド』のCity of Starsでした。
同じ年の第74回ゴールデングローブ賞でも、アニメ映画賞と歌曲賞にノミネートされ、こちらでもCity of Starsに敗れています。ゴールデングローブとアカデミーで2回続けて同じ曲に負けた、という形です。
一方で、第60回グラミー賞のBest Song Written for Visual Media(映像作品のために書かれた楽曲部門)では受賞しています。ここだけは「受賞」と書いて問題ありません。アニー賞でも視覚効果賞と、モアナ役アウリイ・クラヴァーリョのボイスキャスト賞を受賞しています。
ついでに補足すると、作詞作曲のリン=マニュエル・ミランダは、この時点でもいまだに競争部門のオスカーを獲っていません。本作(2017年)と『ミラベルと魔法だらけの家』のDos Oruguitas(2022年)で2度ノミネートされ、2度とも受賞を逃しています。エミー・グラミー・トニーはすでに持っているので、オスカーだけがEGOT達成の最後のピースとして残っている状態です。
曲名「How Far I'll Go」は文が途中で終わっている
英語の勉強として面白いのは、この曲名が文として完結していないことです。
How far I'll goを分解すると、how far(どれくらい遠くまで)+I'll go(私は行くだろう)。これは疑問文ではなく、「私がどれくらい遠くまで行くのか」という名詞のかたまりです。本来ならI don't know how far I'll go(どこまで行くのか自分でも分からない)のように、前に主節がくるべきところを、その主節をまるごと省いて曲名にしているわけです。
だから、この曲名は答えを言っていません。「どこまで行くんだろう」と問いかけたまま宙に浮いている。ヒロインが「まだ何も決まっていない」段階で歌う曲だからこそ、文法的に未完成なタイトルが効いているという設計です。
もうひとつ、I'llがI willの短縮形である点も見逃せません。英語のwillは単なる未来ではなく話し手の意志を表せます。I goでもI'm goingでもなくI'll goにしたことで、「行くことになる」ではなく「行くつもりだ」という決意のニュアンスが混ざります。
日本語題「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」は英語題を残した折衷形
日本語の曲名は「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」。ディズニー作品の邦題は完全に日本語化されることが多いなかで、英語の原題を副題として残しているのは珍しい形です。
「どこまでも」だけだとHow far I'll goのI'll(=主人公の意志)が消えてしまいます。英語題を並べて残すことで、原曲の意味を補っているとも読めます。日本語詞は、実写版のサウンドトラック公式ページで訳詞:高橋知伽江とクレジットされています(アニメーション版の日本語詞も同じ訳詞者とする資料が多数あります)。
作品タイトルそのものの英語については英語タイトル『Moana』の意味と由来で詳しく扱っています。
劇中歌を作った3人|ミランダ/フォアイ/マンシーナ
この映画の音楽は、1人の作曲家が全部書いたのではありません。ウォルト・ディズニー・レコードのプレスリリース(2016年11月18日)は、はっきりと「Lin-Manuel Miranda、Opetaia Foa'i、Mark Mancina による原曲」と書いています。
リン=マニュエル・ミランダ|『ハミルトン』の人
Lin-Manuel Miranda(リン=マニュエル・ミランダ)は、ブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』の作詞作曲・脚本・主演をひとりで担った人物です。『ハミルトン』は2016年のトニー賞で史上初の13部門16ノミネートという記録を打ち立てました。
彼が『モアナと伝説の海』で書いたのは、How Far I'll GoYou're WelcomeShinyWhere You Areなど、英語で歌われるいわゆる「ミュージカルナンバー」の部分です。プレスリリースでは、How Far I'll Goについて「ディズニー・アニメーションのI wantソングを書くのは怖い」「『リトル・マーメイド』のアリエル、『ムーラン』のReflectionを思い出してしまうから」と語っています。
I want song(アイ・ウォント・ソング)というのは、主人公が物語の序盤で「自分は本当は何が欲しいのか」を歌う定番の曲種を指すミュージカル用語です。この構造を知っていると、ディズニー作品の序盤の歌がぐっと聞きやすくなります。
オペタイア・フォアイ|Te Vakaのリーダー
Opetaia Foa'i(オペタイア・フォアイ)は、太平洋の音楽グループTe Vaka(テ・ヴァカ)の創設者でありリードシンガーです。プレスリリースでは「20年以上、世界を巡って、史上最高の航海者だった祖先の物語を語り続けてきた」という本人のコメントが引かれています。
彼が書いたのは、Tulou TagaloaAn Innocent WarriorLogo Te Pate、そしてWe Know the Way。つまり、この映画で「英語ではない言葉」で歌われている部分は、ほぼすべて彼の担当です。後半で詳しく扱いますが、ここが本作の音楽をほかのディズニー作品と決定的に分けている点になります。
マーク・マンシーナ|スコア全曲と共作
Mark Mancina(マーク・マンシーナ)は、『スピード』や『ターザン』を手がけた3度のグラミー受賞作曲家です。本作では劇伴(スコア)26曲すべてを担当し、あわせてWhere You AreShinyI Am MoanaKnow Who You Areなどの作曲にも共作として名を連ねています。
本人はプレスリリースで「音楽は物語の感情に対する巨大な虫めがねのようなもの」と語っています。劇場を出たあとも頭の中で鳴っている曲を書きたい、という趣旨のコメントです。
誰がどの曲を書いたのか(作詞・作曲の分担表)
3人の分担を曲ごとに整理すると、こうなります。
| 曲名(英語) | 作詞 | 作曲 |
|---|---|---|
| Tulou Tagaloa | Foa'i | Foa'i |
| An Innocent Warrior | Foa'i | Foa'i |
| Where You Are | Miranda | Miranda, Foa'i, Mancina |
| How Far I'll Go | Miranda | Miranda |
| We Know the Way | Foa'i, Miranda | Foa'i |
| How Far I'll Go (Reprise) | Miranda | Miranda, Mancina |
| You're Welcome | Miranda | Miranda |
| Shiny | Miranda | Miranda, Mancina |
| Logo Te Pate | Foa'i | Foa'i |
| I Am Moana (Song of the Ancestors) | Miranda, Foa'i | Miranda, Foa'i, Mancina |
| Know Who You Are | Foa'i, Miranda | Foa'i, Miranda, Mancina |
| We Know the Way (Finale) | Foa'i, Miranda | Foa'i |
こうして並べると、How Far I'll GoとYou're Welcomeだけが、ミランダひとりで詞も曲も書いた曲だと分かります。もっとも有名な2曲が、いちばんシンプルな体制で生まれているのは面白いところです。
劇中歌ぜんぶの曲名リスト|英語題・日本語題・歌っている人
ここからは全曲の対応表です。英語題と日本語題がまったく違う曲が多いので、検索するときの手がかりとして使ってください。
サウンドトラック全14曲の対応表
日本語題と歌唱者は、ユニバーサル ミュージック公式の日本語版サウンドトラック(品番UWCD-8061)の記載に基づいています。
| # | 英語題 | 日本語題 | 英語版の歌唱 | 日本語版の歌唱 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Tulou Tagaloa | タガロア神への祈り | Olivia Foa'i, Opetaia Foa'i | オリビア・フォアイ(原語のまま) |
| 2 | An Innocent Warrior | 無垢な勇者 | Vai Mahina ほか | ヴァイ・マヒナ ほか(原語のまま) |
| 3 | Where You Are | いるべき場所 | Christopher Jackson, Rachel House, Nicole Scherzinger, Auli'i Cravalho, Louise Bush | 安崎求、夏木マリ、中村千絵、屋比久知奈 ほか |
| 4 | How Far I'll Go | どこまでも 〜How Far I'll Go〜 | Auli'i Cravalho | 屋比久知奈 |
| 5 | We Know the Way | もっと遠くへ | Opetaia Foa'i, Lin-Manuel Miranda | 渕上祥人、竹内浩明 |
| 6 | How Far I'll Go (Reprise) | どこまでも(リプライズ) | Auli'i Cravalho | 屋比久知奈 |
| 7 | You're Welcome | 俺のおかげさ | Dwayne Johnson | 尾上松也 |
| 8 | Shiny | シャイニー | Jemaine Clement | ROLLY |
| 9 | Logo Te Pate | パーテー・ドラム・ダンス | Olivia Foa'i ほか | オリビア・フォアイ ほか(原語のまま) |
| 10 | I Am Moana (Song of the Ancestors) | モアナ | Rachel House, Auli'i Cravalho | 夏木マリ、屋比久知奈 |
| 11 | Know Who You Are | 自分をみつめて | Auli'i Cravalho ほか | 屋比久知奈 |
| 12 | We Know the Way (Finale) | もっと遠くへ(フィナーレ) | Lin-Manuel Miranda, Opetaia Foa'i | 渕上祥人、竹内浩明 |
| 13 | How Far I'll Go (Alessia Cara version) | どこまでも(エンドソング) | Alessia Cara | 加藤ミリヤ |
| 14 | You're Welcome (feat. Lin-Manuel Miranda) | 俺のおかげさ(ジョーダン・フィッシャー版) | Jordan Fisher | 同左(原語のまま) |
You're Welcomeが「俺のおかげさ」、Know Who You Areが「自分をみつめて」。曲名だけで検索してもたどり着けないのは、この対応がずれているからです。
英語版と日本語版で歌手が入れ替わる曲がある
表を見て気づくのは、曲によって「日本語版で歌う人」がまったく違うことです。
- モアナの歌:英語版はAuli'i Cravalho、日本語版は屋比久知奈
- マウイの歌:英語版はDwayne Johnson(ザ・ロック本人)、日本語版は尾上松也
- タマトアの歌:英語版はJemaine Clement、日本語版はROLLY
タマトア役の Jemaine Clement は、ニュージーランドのコメディ音楽デュオ Flight of the Conchords のメンバーです。歌がうまい俳優ではなく「歌でふざけられる俳優」を当てているのがこの役の面白さで、日本語版でROLLYさんが起用されたのも同じ発想でしょう。
キャラクターと声の対応をまとめて確認したい方はキャラクターの英語名一覧もあわせてどうぞ。
日本版エンドソングは加藤ミリヤ、劇中は屋比久知奈
日本で特にややこしいのが、主題歌の歌手が2人いることです。
- 劇中で歌っているのは屋比久知奈さん(モアナの日本語版声優)
- エンドクレジットで流れるのは加藤ミリヤさん(日本版エンドソング)
ディズニー公式の作品ページにも「日本版エンドソング ♪どこまでも ~How Far I'll Go~/加藤ミリヤ」と明記されています。加藤ミリヤさんのシングルは2017年3月1日発売で、映画の日本公開(2017年3月10日)の直前でした。
英語版もまったく同じ構造で、劇中はAuli'i Cravalho、エンドクレジットはAlessia Caraという2人体制です。「主題歌を歌っているのは誰?」という質問に答えが2つあるのは、この二重構造のせいです。
トゥイだけは「セリフの声」と「歌の声」が別人
もう1つ、知られていない仕掛けがあります。モアナの父トゥイ村長は、しゃべる声と歌う声が別の人です。
セリフを担当しているのはマオリ系俳優のTemuera Morrisonですが、Where You Areで歌っているのはChristopher Jackson。ジャクソンは『ハミルトン』でジョージ・ワシントンを演じた俳優で、ミランダが自分のミュージカルの座組から連れてきた人選ということになります。
曲名に使われている英語の意味
ここからは、歌詞ではなく曲名だけを英語として読み解いていきます。曲名は数語しかないのに、意外なほど文法が詰まっています。
How Far I'll Go|how far と I'll に全部入っている
前述のとおり、how far+I'll goで「私がどれくらい遠くまで行くのか」。疑問文の形をしていながら疑問文ではない、いわゆる間接疑問(名詞節)です。
英語ではHow far will I go?と語順をひっくり返せば疑問文になりますが、この曲名はI'll goという平叙文の語順のままです。語順が入れ替わっていないから疑問文ではない、というのは学校文法そのままの見分け方で、曲名がそのまま例文になっています。
farは「遠い」という形容詞・副詞ですが、How far is it?(どれくらいの距離ですか)のように距離を尋ねる定型として日常でもよく使います。
You're Welcome|お礼を言われる前に言う「どういたしまして」
You're welcome.は、Thank you.への返事として最初に習う定型表現です。直訳すると「あなたは歓迎されている」で、そこから「(お礼など)どういたしまして」に落ち着いています。
この曲がおかしいのは、マウイがまだお礼を言われていないのに、先回りして「どういたしまして」と歌い出すところです。返事であるはずの言葉を、返事より先に言ってしまう。英語話者にとってはそれだけで十分に笑える設定で、キャラクターの図々しさを1語で説明しきっています。
日本語題が「俺のおかげさ」になっているのは、直訳の「どういたしまして」ではこの先回り感がまったく伝わらないからでしょう。ウォルト・ディズニー・レコードのプレスリリースでも、この曲は「マウイのカラフルな性格を見せる曲」と紹介されており、ミランダ自身も「ドウェイン・ジョンソンが持つ魅力が、キャラクターの自信と生意気さをそのまま体現している」という趣旨のコメントを残しています。
We Know the Way|the way は「道」と「やり方」の両方
We know the way.は3語で「私たちは道を知っている」。ただしwayは「道」と「やり方・方法」の両方を意味する単語です。
この曲は祖先の航海(ウェイファインディング)を描いた曲なので、「海路を知っている」と「航海の術を知っている」の二重の意味がそのまま重なります。劇中で使われるwayfinder(ウェイファインダー=星や波を読んで航海する人)という語も、このwayから来ています。スコアにもWayfindingという曲名がそのまま入っています。
そして、この曲こそが「英語だと思って聞いたのに聞き取れない」の正体です。詳しくは次の章で扱います。
Shiny|shine に -y を付けると形容詞になる
shinyは「ぴかぴかの、光り輝く」。動詞shine(輝く)に形容詞をつくる接尾辞-yが付いた形です。
この-yは非常に生産的で、rain→rainy、sun→sunny、salt→salty、sleep→sleepyのように次々に作れます。英単語を1個覚えると、-yを足して形容詞をもう1個ただで手に入れられるという、実用性の高いパターンです。
なおshineは不規則動詞で、過去形・過去分詞はshone。ただし「(靴などを)磨く」という他動詞のときはshinedになる、という例外もあります。曲名1語から派生の話にも不規則動詞の話にも行けるので、辞書を引く価値があります。
Where You Are|「あなたが今いる場所」という名詞のかたまり
Where you areは「あなたがいる場所」。これもHow Far I'll Goと同じ、疑問詞で始まるのに疑問文ではない名詞節です。
Where are you?(あなたはどこ?)とWhere you are(あなたがいる場所)は、語順が違うだけで意味の種類がまったく変わります。ここは日本語話者がいちばん混乱するところなので、曲名2つを並べて覚えてしまうと早いです。
村の暮らしを歌う曲にこのタイトルが付いているのは、「あなたがいるべき場所は、いま、ここだ」という村の価値観をそのまま言い切っているからです。日本語題「いるべき場所」は、その含みをうまく足した訳と言えます。
I Am Moana (Song of the Ancestors)|ancestor と副題の of
I Am Moanaは「私はモアナ」。中学1年で習うI am 〜の形ですが、自己紹介ではなく「自分が何者かを取り戻す」宣言として使われるのがこの曲の役どころです。日本語版のトラック名は単に「モアナ」となっています。
副題のSong of the Ancestorsは「祖先の歌」。ancestor(祖先・先祖)はancestry(家系・血統)とセットで覚えると使いやすい単語です。A of Bは「BのA」と訳しますが、ここでは祖先が歌う歌とも祖先について歌う歌とも読めます。劇中の場面を知っていると、前者の意味が強いことが分かります。
Know Who You Are|命令文+間接疑問の組み合わせ
Know who you are.は「自分が何者かを知りなさい」。動詞の原形で始まる命令文に、who you areという名詞節が目的語としてくっついた形です。
who you areも語順は平叙文のまま。Who are you?(あなたは誰?)とは別物で、「あなたという存在そのもの」を指す言い回しになります。Be who you are(ありのままでいなさい)のような形でもよく使われる、英語圏では非常にポピュラーな表現です。
日本語題「自分をみつめて」は、このwho you areのニュアンスをうまく日本語に着地させています。作品全体を通した英語表現は作品に出てくる使える英語フレーズ集でもまとめています。
聞き取れなくて当然|英語ではない曲がある
ここからが本記事の核心です。
「モアナの歌をリスニング教材にしようとしたら、まったく聞き取れない曲があった」——それはあなたの耳のせいではありません。この映画の劇中歌には、そもそも英語ではない曲が複数あります。
作曲者本人の公式サイトが曲ごとの言語を公開している
驚くことに、作曲者のOpetaia Foa'i 本人の公式サイトに「Exclusive Translations」というページがあり、自分が書いた曲についてどの言語で書かれているかと英訳を公開しています。ファンサイトの推測ではなく、書いた本人が言語ラベルを付けて出している一次情報です。
そこにはAn Innocent WarriorFinding the WayLakalakaLogo Te PateMana VavauTulou TagaloaWe Know The WayWe're Back (Te Vaka version)のページが並んでいます。歌詞そのものは本記事では引用しませんが、言語の情報だけを取り出すと次のようになります。
曲別・使われている言語の一覧
| 曲名 | 公式サイトが示す言語 |
|---|---|
| Tulou Tagaloa | サモア語 |
| An Innocent Warrior | ツバル語・トケラウ語・サモア語の混成 |
| We Know the Way | サモア語パート+トケラウ語パート(+英語) |
| Logo Te Pate | トケラウ語 |
| Mana Vavau(続編) | マウイ=サモア語/タウタイ・ヴァサとタラ=トケラウ語 |
| Finding the Way(続編) | トケラウ語 |
| We're Back (Te Vaka version)(続編) | トケラウ語 |
| Lakalaka | トケラウ語 |
サウンドトラックのアルバム情報でも、収録言語は「English, Samoan, Tokelauan, Tuvaluan」と表記されています。英語だけのアルバムではない、と公式に明記されているわけです。
We Know the Wayは特に分かりやすい例で、冒頭がサモア語、コーラス部分がトケラウ語、その後に英語という三層構造になっています。「途中から急に聞き取れるようになる」と感じた人は、耳が悪くなったのでも良くなったのでもなく、単に言語が切り替わっているだけです。
ハワイ語でもマオリ語でもない
検索されている語を見ると「モアナの歌はハワイ語?」「マオリ語?」という疑問が多いのですが、上の表のとおり、実際に使われているのはサモア語・トケラウ語・ツバル語です。
混同されやすいのには理由があります。出演者にハワイ出身・マオリ系・サモア系の俳優が多いからです。モアナ役のAuli'i Cravalhoと母シーナ役のNicole Scherzingerはハワイ生まれのネイティブ・ハワイアン系、マウイ役のDwayne Johnsonはサモア系、祖母タラ役のRachel House、父トゥイ役のTemuera Morrison、タマトア役のJemaine Clementはマオリ系です。
さらに、本作にはマオリ語吹替版とハワイ語吹替版が別途制作されています。「マオリ語のモアナ」も「ハワイ語のモアナ」も確かに存在するのですが、それは吹替版の話であって、オリジナル版の劇中歌の言語とは別です。ここは混ぜずに切り分けて理解しておくのが正解です。
なぜ英語にしなかったのか
Opetaia Foa'i は、太平洋の島々の音楽を20年以上演奏してきた人です。プレスリリースには「『モアナ』が航海の物語だと知ったとき、すべてが自分の目的と一致した」という趣旨のコメントが載っています。
ディズニーが彼を「英語の歌詞を書ける作曲家」としてではなく、「太平洋の言語と音楽をそのまま持ち込む人」として起用したことが、この言語構成につながっています。世界中で公開される英語映画に、あえて英語以外の言語の曲を何曲も入れたという判断そのものが、この作品の特徴です。
「英語じゃない」と分かると、聞き取りの自信は減らない
英語学習者として、これはかなり実用的な話だと思っています。
リスニングの練習で怖いのは、「聞き取れなかった」という体験が自信を削ることです。でも、聞き取れなかった原因が「そもそも英語ではなかった」なら、削る必要はまったくありません。
Remember Meで有名な『リメンバー・ミー』にスペイン語の曲名が混ざっているのと同じで、ディズニー作品には「英語だと思い込んで聞くと沼にはまる曲」がときどき紛れています。曲名リストを先に見て、どれが英語でどれが英語でないかを把握してから聴く。それだけで、リスニング練習の質は目に見えて変わります。
日本語版でも「訳されなかった曲」がある
この「英語ではない曲がある」という話には、日本側からの裏付けもあります。
日本語版サントラで原語のまま残った3曲
ユニバーサル ミュージック公式の日本語版サウンドトラック(UWCD-8061)を見ると、面白いことが分かります。
- 1曲目「タガロア神への祈り」=歌唱はオリビア・フォアイ(英語版と同じ)
- 2曲目「無垢な勇者」=歌唱はヴァイ・マヒナ、スラタ・フォアイ=アミアツ、マシュー・イネリオ(英語版と同じ)
- 9曲目「パーテー・ドラム・ダンス」=歌唱はオリビア・フォアイ ほか(英語版と同じ)
日本語のタイトルは付いているのに、歌っている人が英語版と同一。つまり歌そのものは吹き替えられていません。「翻訳しなかった」のではなく「翻訳する対象が英語ではなかった」という順序です。
続編ではさらに増えて6曲
続編『モアナと伝説の海2』の日本盤サウンドトラックでは、この傾向がもっとはっきりします。
日本盤の曲目リストで、日本語のタイトルすら付かず英語表記のまま並んでいる曲が6つあります。Tulou Tagaloa (Sei e Va'ai Mai)Tuputupu (The Feast)My Wish For You (Innocent Warrior)Finding The WayMana VavauNuku O Kaigaです。一方、英語で書かれた曲には「帰ってきた、本当のわたしに」「最高の世界」「迷え!」のような日本語題がきちんと付いています。
日本盤の曲目リストが、そのまま「どれが英語でどれが英語でないか」の答え合わせになっているわけです。
ここから分かる「言語の線引き」
まとめると、こうなります。
- ミランダが書いた曲=英語。日本語版では日本語に吹き替えられる
- フォアイが書いた曲=サモア語・トケラウ語・ツバル語。日本語版でも原語のまま
- 両者が共作した曲(
We Know the WayKnow Who You Areなど)=英語と原語が混ざる
作り手の分担表と、日本語版で吹き替えられたかどうかがきれいに一致しているのは、偶然ではありません。曲を誰が書いたかを知ることが、そのまま「何語か」の答えになるという、かなり気持ちのいい構造をしています。
劇伴26曲の英語タイトルは、そのまま英文法の練習問題になる
歌がある曲だけが音楽ではありません。Mark Mancina が書いた劇伴(スコア)26曲にも、当然ながら英語のタイトルが付いています。そしてこれが、地味に良い教材です。
If I Were the Ocean|仮定法過去の were
If I Were the Oceanは「もし自分が海だったら」。主語がIなのにwasではなくwereになっている点が最大のポイントで、これは仮定法過去の形です。
現実には起こりえないことを言うとき、英語は動詞をわざと過去形にして「これは現実の話ではない」と合図します。If I were you(もし私があなただったら)という定型はその代表例です。曲名を1つ知っているだけで、仮定法のwereが例文つきで頭に残ります。
The Ocean Chose You / He Was You|不規則動詞と過去形
The Ocean Chose Youは「海はあなたを選んだ」。日本語版の曲名は「海に選ばれた者」で、能動態が受動態に変換されているのも比較として面白いところです。
choseはchoose(選ぶ)の過去形。choose - chose - chosenという不規則変化で、chosen one(選ばれし者)という言い回しでもおなじみです。
He Was Youは「彼はあなただった」。日本語版では「お父さんもあなたと同じ」というタイトルになっており、英語の3語が日本語では説明的に開かれているのが分かります。
Battle of Wills / Hand of a God|名詞と冠詞のニュアンス
Battle of Willsは直訳すると「意志と意志の戦い」。このwillは助動詞ではなく「意志」という名詞で、複数形willsになっています。日本語版のタイトルは「意地の張り合い」で、これはかなり見事な訳です。
Hand of a Godは「ある神の手」。the God(唯一神)ではなくa God(数ある神のうちの一柱)になっているところに、この作品の世界観がそのまま出ています。冠詞1文字で神様の数が変わるという、英語らしい例です。
Village Crazy Lady / Great Escape|名詞を並べるだけの英語
Village Crazy Lady(村の変わり者)は、名詞village+形容詞crazy+名詞ladyをただ並べただけの形です。英語は名詞を前から重ねていくだけで説明を足せる言語なので、こういう無理のない省略が日常的に起こります。
Great Escape(大脱出)、Tamatoa's Lair(タマトアのねぐら)、Sails to Te Fiti(テ・フィティへ向けて出帆)も同じで、前置詞と冠詞をどこで使い、どこで省いているかを見るだけで、英語の語感が育ちます。劇伴のトラックリストは、こういう短い英語表現の宝庫です。
『モアナと伝説の海2』の楽曲|担当者が交代している
2024年公開の続編『モアナと伝説の海2』は、日本公開2024年12月6日。音楽の担当者が大きく変わっているので、1作目と同じ感覚で聴くと戸惑います。
なお、続編のタイトルは権利元ディズニー公式が全角の「2」で表記しているため、本記事もそれに揃えています。
ミランダは不参加。バーロウ&ベアが引き継いだ
続編にリン=マニュエル・ミランダは参加していません。楽曲を書いたのはAbigail Barlow(アビゲイル・バーロウ)とEmily Bear(エミリー・ベア)のデュオです。Mark Mancina と Opetaia Foa'i は続投しました。
2人は『The Unofficial Bridgerton Musical』で注目された作家で、ウォルト・ディズニー・ミュージックのトム・マクドゥーガル社長が2021年秋に起用したと報じられています。ディズニー映画の楽曲を書いた史上最年少であり、初の女性のみのソングライティング・デュオでもあります。
ミランダが不参加だったのはスケジュールの都合で、同時期に『ライオン・キング:ムファサ』の楽曲を手がけていたためだと本人が説明しています。「降ろされた」わけではありません。
続編の曲名リスト(英語題・日本語題・歌手)
日本盤サウンドトラックの表記に基づく対応表です。
| 英語題 | 日本語題 | 歌唱(日本盤クレジット) |
|---|---|---|
| Tulou Tagaloa (Sei e Va'ai Mai) | ―(原語のまま) | Olivia Foa'i, Te Vaka |
| We're Back | 帰ってきた、本当のわたしに | 屋比久知奈&キャスト |
| Tuputupu (The Feast) | ―(原語のまま) | Te Vaka |
| Beyond | ビヨンド ~越えてゆこう~ | 屋比久知奈 with 夏木マリ |
| My Wish For You (Innocent Warrior) | ―(原語のまま) | Olivia Foa'i ほか |
| Finding The Way | ―(原語のまま) | Olivia Foa'i, Te Vaka |
| What Could Be Better Than This? | 最高の世界 | 屋比久知奈, 小関裕太, 鈴木梨央, 山路和弘 |
| Get Lost | 迷え! | ソニン |
| Can I Get A Chee Hoo? | できるさ!チーフー! | 尾上松也 |
| Mana Vavau | ―(原語のまま) | Dwayne Johnson, Opetaia Foa'i, Rachel House |
| Beyond (Reprise) | ビヨンド ~越えてゆこう~(リプライズ) | 屋比久知奈 |
| Nuku O Kaiga | ―(原語のまま) | Te Vaka |
| We Know The Way (Te Fenua te Malie) | もっと遠くへ | 屋比久知奈 ほか |
| Beyond (End Credit Version) | ― | Auli'i Cravalho Featuring Te Vaka |
英語版の主題歌にあたるのはBeyondで、歌うのは1作目と同じAuli'i Cravalho。ディズニーは公式に、この曲をHow Far I'll Goの「精神的な続編」として発表しています。
Get Lost|「迷え」と「消えろ」の二重の意味
続編でいちばん英語として面白い曲名がGet Lostです。
get lostは「道に迷う」という意味の熟語ですが、命令形のGet lost!は日常英語では「消えうせろ」「あっち行け」という強い追い払いの表現になります。日本語題は「迷え!」で、こちらは前者の意味を採っています。
この曲を歌うのは、モアナを惑わす存在マタンギ(日本語版はソニンさん)。「道に迷わせる」と「消えうせろ」の両方が同時に成り立つキャラクターに、この2語を当てたセンスはかなりのものです。1つの熟語が文脈で意味を変える好例なので、覚えておいて損はありません。
Can I Get a Chee Hoo?|Can I get a 〜? はコール&レスポンスの型
マウイの新曲Can I Get a Chee Hoo?も、英語の型として知っておくと便利です。
Can I get a 〜?はもともと「〜をもらえますか」ですが、ライブやショーで観客に何かを返させるときの定型でもあります。Can I get an amen?(アーメンと言ってくれ)が典型で、会場に向かって反応を要求する呼びかけの形です。
chee hoo(チーフー)は、ハワイや太平洋地域で使われる歓声・かけ声。日本語題「できるさ!チーフー!」は、かけ声だけをカタカナで残す判断をしています。1作目のYou're Welcomeと同じく、マウイの曲はいつも観客に向かって話しかける構造になっているのが分かります。
日本版エンドソングはME:I、劇中は屋比久知奈
続編でも、日本の主題歌は二重構造のままです。
- 劇中で歌うのは屋比久知奈さん(「ビヨンド ~越えてゆこう~」)
- 日本版エンドソングは ME:I Featuring Te Vaka(同じ曲名)
ディズニー公式の作品ページにも「日本版エンドソング『ビヨンド ~越えてゆこう~』Performed by ME:I Featuring Te Vaka」と明記されています。1作目の「屋比久知奈+加藤ミリヤ」と完全に同じ設計で、続編でもこの型が踏襲されました。
実写版『モアナと伝説の海』(2026年)の楽曲
さらに新しい動きもあります。実写版『モアナと伝説の海』が2026年7月31日に日本公開されました(米国は同年7月10日)。本記事執筆時点(2026年8月)では劇場公開中です。
ミランダが復帰し、新曲 Along The Way が加わった
実写版では、楽曲にリン=マニュエル・ミランダが復帰しています。Opetaia Foa'i と Mark Mancina も引き続き参加し、1作目と同じ3人体制に戻りました。監督は『ハミルトン』の演出家トーマス・ケイルで、ここでもミランダとの縁がつながっています。
サウンドトラック(2026年7月31日発売)の曲目を見ると、How Far I'll GoYou're WelcomeShinyWe Know The Wayといったおなじみの曲が並ぶ一方で、1作目にあったLogo Te Pateの位置に、新曲Along The Way (Malaga Ki Ei)が入っています。さらにエンドクレジット用にAlong The Wayも収録されています。
along the wayは「その道すがら、途中で」という意味の副詞句です。We Know the Wayのwayを引き継いだ曲名になっているのは、明らかに意図的でしょう。
日本版エンドソングは「旅立とう 〜Along The Way〜」
日本版エンドソングは「旅立とう 〜Along The Way〜」。ユニバーサル ミュージック公式によれば、これはリン=マニュエル・ミランダが書き下ろした新曲で、2026年7月24日にデジタル配信が始まりました。
歌っているのは3人です。
- 屋比久知奈(アニメーション版モアナ役)
- TSUZUMI(ME:I)(実写版モアナの日本版声優)
- 尾上松也(マウイ役)
アニメーション版のモアナと実写版のモアナが同じ曲で歌うという、かなり珍しい構成になっています。ここでも「日本版エンドソング」という枠組みは維持されました。
実写版では劇中歌の日本語歌唱もTSUZUMIに交代
実写版の劇中「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」は、公式表記でPerformed by TSUZUMI (ME:I) / Music and Lyrics by Lin-Manuel Miranda / 訳詞:高橋知伽江 となっています。
つまり日本語版の系譜はこうです。
- 2016年アニメーション版:劇中=屋比久知奈/エンドソング=加藤ミリヤ
- 2024年続編:劇中=屋比久知奈/エンドソング=ME:I
- 2026年実写版:劇中=TSUZUMI(ME:I)/エンドソング=屋比久知奈+TSUZUMI+尾上松也
「モアナの主題歌を歌っているのは誰か」という問いの答えが、公開年によって変わるということです。検索で情報が食い違って見えるのは、多くの場合これが原因です。
Disney+で劇中歌を英語音声のまま聴く方法(VPN不要)
結論として、劇中歌を英語の歌声で聴くならDisney+がいちばん手軽です。本記事執筆時点(2026年8月)で、『モアナと伝説の海』と『モアナと伝説の海2』はどちらもDisney+日本の作品ページに掲載され、配信されています。
日本のアカウントのまま English に切り替えられる
Disney+は1つの作品に複数の音声・字幕トラックを持っており、再生画面の設定からEnglishを選ぶだけで英語音声・英語字幕に切り替えられます。海外リージョンへ接続するVPNや、海外アカウントの新規作成は必要ありません。
- Disney+で『モアナと伝説の海』を再生する
- 一時停止して設定(歯車)アイコンを開く
- 「音声」で
English、「字幕」でEnglishを選ぶ
英語音声+英語字幕にすると、歌の場面でも字幕が出るので「いま何語で歌っているのか」を目で確認できます。ポリネシア諸語の曲でどう表示されるかを見るのも、この作品ならではの楽しみ方です。作品・配信時期によって選べるトラックが変わることはあるので、視聴前に設定メニューで確認してみてください。切り替えの詳しい手順はDisney+で英語音声・英語字幕に切り替える方法にまとめています。
1作目と続編を続けて聴き比べられる
Disney+の強みは、1作目と続編がどちらも見放題で並んでいることです。
How Far I'll Go(ミランダ作)とBeyond(バーロウ&ベア作)を続けて聴くYou're WelcomeとCan I Get a Chee Hoo?という「マウイの曲」2本を並べるWe Know the WayとWe Know The Way (Te Fenua te Malie)を比べる
作り手が交代した前後で、同じキャラクターの曲がどう変わったかを直接確かめられるのは、配信ならではです。なお、実写版のDisney+配信については本記事執筆時点で発表を確認できていません。
曲の場面だけを繰り返す使い方
Disney+のアプリにはダウンロード機能があるので、歌の場面だけを何度も再生するという使い方ができます。本編を通しで観る時間が取れない日でも、You're Welcomeの2分半だけ聴き直す、といった続け方なら無理がありません。
私自身、英語学習で続いたのは「毎日1本観る」ではなく「好きな2分を100回聴く」というやり方でした。好きな作品を英語で聴ける環境をひとつ用意しておくと、学習が習慣として残ります。まずはDisney+で、手元のアカウントの音声設定をEnglishに切り替えるところから試してみてください。
歌詞を使わずに主題歌から英語を学ぶ5つの方法
「歌で英語を学ぶ」というと歌詞の和訳を思い浮かべますが、歌詞を一行も読まなくても、この作品からは相当な量の英語が拾えます。筆者(留学経験なし・TOEIC990・VERSANT76点/80点満点中)が実際にやっている方法を5つ挙げます。
まず曲名を全部辞書で引く
いちばん効率がいいのはこれです。この記事で挙げただけでも、shinyancestorlairescapewayfindingblessingなど、曲名だけで数十語あります。
曲名は数語しかないので、辞書を引く心理的なコストがほぼゼロです。しかも作品の場面と結びついているので、単語帳より記憶に残ります。劇伴26曲まで含めれば、それだけで小さな単語帳が1冊できます。
同じ場面を英語版と日本語版で聴き比べる
Disney+なら音声を切り替えるだけで、同じ場面を英語と日本語で聴けます。
You're Welcomeと「俺のおかげさ」、Know Who You Areと「自分をみつめて」。英語のどのニュアンスを捨てて、どこを拾ったのかを考えるのは、翻訳の勉強であると同時に、英語の意味を深く掘る作業でもあります。「なぜこの訳になったのか」を自分で説明できたら、その表現は自分のものです。
「英語じゃない曲」を耳で見分ける
これは本作でしかできない練習です。
先に曲名リストを見て「この曲はトケラウ語」と分かった状態で聴くのと、何も知らずに聴くのとでは、耳の使い方がまったく変わります。英語と非英語の切り替わりが自分で聞き取れるようになると、英語の音の輪郭がはっきりしてきます。We Know the Wayのように1曲の中で言語が切り替わる曲は、この練習にうってつけです。
スクリプト×AIで曲名の由来を掘る
筆者が長くやっているのが、「Moana script」のように検索して英語のセリフ一覧を探し、気になった箇所をAIに投げて解説してもらう方法です。
曲名についても同じことができます。Why is the song called "You're Welcome"?のように英語で聞けば、英語話者にとってその表現がどう面白いのかを説明してくれます。日本語の解説記事には出てこない「ネイティブの感じ方」に触れられるのが、この方法の強みです。歌詞そのものをコピーして投げるのは避け、曲名や場面の説明にとどめるのが安全です。歌ではなくセリフのほうを掘りたい方は英語の名言・セリフまとめからどうぞ。
好きな作品だから、何度でも繰り返せる
英語学習でいちばん難しいのは、続けることです。
その点、すでに何度も観た作品は「話の内容を知っている」ので、英語だけに集中できます。次に何が起こるか分かっているから、聞き取れない単語があっても不安になりません。「勉強するために観る」のではなく「好きだから観ていたら英語が入っていた」という順番のほうが、圧倒的に続きます。
ディズニー作品を英語学習に使う具体的な進め方はモアナと伝説の海を英語で楽しむ完全ガイドにまとめました。作品を横断した学習法は英語×アニメの総合ガイドもあわせてどうぞ。
モアナの主題歌についてよくある質問
モアナと伝説の海の主題歌は英語で何といいますか?
How Far I'll Goです。日本語題は「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」で、日本語訳と英語の原題が1つのタイトルに並んでいます。
「How Far I'll Go」は誰が作った曲ですか?
リン=マニュエル・ミランダが作詞・作曲した曲です。ブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』の作者としても知られています。リプライズ(短い再登場版)の作曲にはマーク・マンシーナも加わっています。
主題歌はアカデミー賞を受賞していますか?
受賞していません。第89回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされましたが、受賞は『ラ・ラ・ランド』のCity of Starsでした。ただし第60回グラミー賞のBest Song Written for Visual Mediaでは受賞しています。
日本語版で歌っているのは誰ですか?
劇中で歌っているのは屋比久知奈さん(モアナの日本語版声優)、エンドクレジットの日本版エンドソングは加藤ミリヤさんです。歌手が2人いるので、質問の答えも2つあります。
モアナの歌は何語ですか?
英語の曲と、そうでない曲があります。How Far I'll GoYou're WelcomeShinyなどは英語ですが、Tulou Tagaloaはサモア語、Logo Te Pateはトケラウ語、An Innocent Warriorはツバル語・トケラウ語・サモア語の混成です。We Know the Wayはサモア語・トケラウ語・英語が1曲の中に混在しています。ハワイ語やマオリ語ではありません。
モアナ2の主題歌は誰が作った曲ですか?
続編『モアナと伝説の海2』の楽曲は、アビゲイル・バーロウとエミリー・ベアのデュオが手がけました。マーク・マンシーナとオペタイア・フォアイは続投しましたが、リン=マニュエル・ミランダは参加していません。主題歌にあたるBeyondは、英語版ではアウリイ・クラヴァーリョが歌っています。
この記事で歌詞は読めますか?
歌詞は掲載していません。楽曲の歌詞は著作権で保護されているため、本記事では曲名・作り手・受賞歴・歌われる場面・曲名に使われた語の意味に絞って解説しています。歌そのものはDisney+の本編や公式のサウンドトラックでお楽しみください。
まとめ|曲名と言語が分かると、モアナの音楽は別物に聞こえる
『モアナと伝説の海』の主題歌は英語でHow Far I'll Go。リン=マニュエル・ミランダが作詞作曲し、アカデミー賞歌曲賞は「ノミネート」まで、グラミー賞は「受賞」という、意外と間違えやすい戦績を持っています。
この作品の音楽が特別なのは、3人の作り手で言語まで分担している点です。ミランダが英語の曲を、オペタイア・フォアイがサモア語・トケラウ語・ツバル語の曲を、マーク・マンシーナが劇伴を書く。だからTulou TagaloaもLogo Te Pateも、日本語版サウンドトラックでさえ原語のまま残っています。聞き取れなかったのは、あなたの英語力の問題ではありません。
続編『モアナと伝説の海2』では作り手がバーロウ&ベアに交代し、2026年の実写版ではミランダが復帰して新曲Along The Wayが加わりました。日本版エンドソングも加藤ミリヤ→ME:I→屋比久知奈+TSUZUMI+尾上松也と移り変わっています。
まずはDisney+で音声をEnglishに切り替えて、曲名リストを片手に聴き直してみてください。どの曲が英語で、どの曲が英語ではないか。それが分かるだけで、この映画の音楽はまったく違って聞こえるはずです。