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モアナと伝説の海

モアナと伝説の海 キャラクター英語名一覧|日本語吹替名・英語原名・英語版声優の対応表とポリネシア語の意味

モアナと伝説の海(Moana)キャラクター英語名一覧のアイキャッチ画像

『モアナと伝説の海』のキャラクター英語名を調べると、日本語吹替の声優一覧は山ほど出てくるのに、英語の綴りと英語版の声優がまとまっている記事がほとんどないことに気づきます。この記事はそこを埋めるために書きました。

結論から書きます。この作品は原題が Moana で、キャラクターの英語名こそが原名です。日本語版は名前をほぼそのままカタカナにしているので、覚え直す負担はありません。そして、その名前の多くはポリネシア諸語に実際に存在する単語です。Heihei はマオリ語で「ニワトリ」、Tala は「語る」、Tui は「首長」。役どころと名前がきれいに重なっています。

筆者は留学経験なしでTOEIC990・VERSANT76点(80点満点中)を取り、元は海外事業を担当していました。ディズニー作品を英語音声で観るのは今も続けている習慣ですが、この作品だけは最初「知らない単語が多すぎる」と感じました。その正体の大半は英単語ではなく固有名詞だったというのが、当時いちばん腑に落ちた発見です。

この記事では次のことが分かります。

  • 1作目の主要キャラクター8名+公式扱いの「海」「ミニ・マウイ」の英語名と声優
  • 名前の語義を、マオリ語・ハワイ語・ポリネシア諸語の比較辞書で確認した結果
  • Auliʻi CravalhoTe Kā のような、綴りでつまずきやすいポイント
  • 『モアナと伝説の海2』で加わった12名の英語名と日本版声優

なお、英語音声・英語字幕で名前の発音を確かめたいなら、Disney+(ディズニープラス)に加入するのがいちばん早いです。日本のアカウントのまま、再生画面の設定から English 音声・English 字幕に切り替えられます(VPNなどの追加設定は不要)。詳しい手順は記事の後半でまとめます。

『モアナと伝説の海』キャラクター英語名・声優 早見表【1作目】

まず対応表から出します。英語版キャストはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ公式とWalt Disney Music Creditsのクレジット欄、日本語表記と吹替キャストはディズニー公式サイト(disney.co.jp)で確認したものです。

主要キャラクターの対応表

日本語表記英語名英語版声優日本語吹替
モアナMoanaアウリィ・カルバーリョ(Auliʻi Cravalho)屋比久知奈
マウイMauiドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)尾上松也
タラおばあちゃんGramma Talaレイチェル・ハウス(Rachel House)夏木マリ
トゥイChief Tuiテムエラ・モリソン(Temuera Morrison)安崎求
シーナSinaニコール・シャージンガー(Nicole Scherzinger)中村千絵
タマトアTamatoaジェマイン・クレメント(Jemaine Clement)ROLLY
ヘイヘイHeiheiアラン・テュディック(Alan Tudyk)
プアPua

ここで先に押さえておきたいのが、ディズニー公式サイトのキャスト欄には日本語吹替が6名しか記載されていないという点です。ヘイヘイとプアは鳴き声中心のキャラクターなので、日本語版でクレジットが立っていません。「吹替声優が見つからない」のではなく、そもそも役として立っていないというだけです。

英語版キャストの多くがポリネシアにルーツを持つ俳優である点も、この作品の特徴です。モアナ役のアウリィ・カルバーリョとシーナ役のニコール・シャージンガーはハワイ出身、マウイ役のドウェイン・ジョンソンはサモア系、タラおばあちゃん役のレイチェル・ハウスとトゥイ役のテムエラ・モリソンはニュージーランドのマオリ系です。

公式サイトがキャラクター扱いしている「海」と「ミニ・マウイ」

意外と知られていないのですが、ディズニー公式サイトのキャラクターページには、上の8名のほかに2つの「キャラクター」が並んでいます。

  • 海(Ocean:公式ページに独立した項目があります。「普通の人にはただの美しい海にしか見えないが、じつは豊かな感情を持ち、さまざまに形を変えて、意思を伝えてくる」と紹介されています。英語のセリフでも the ocean は単なる背景ではなく、意思を持った相手として扱われます。
  • ミニ・マウイ(Mini Maui:マウイの体に現れたタトゥーのひとつで、人格を持ったマウイの分身。公式サイトは「彼の“本心”」「マウイの“良心”の役割を果たす」と説明しています。声は出さず、身振り手振りだけで意思を伝えます。

セリフのないキャラクターにも公式の英語名があるというのは、キャラクター名を調べるときに見落としやすいポイントです。ミニ・マウイは英語圏でもそのまま Mini Maui と呼ばれるので、グッズ名や海外の記事を読むときにも役立ちます。

幼少期のモアナは英語版だと別の声優

もうひとつ、対応表だけを見ていると気づけない事実があります。Walt Disney Music Creditsのキャスト欄には、次の名前が載っています。

Louise Bush as "Toddler Moana"

つまり、冒頭の幼いモアナは、アウリィ・カルバーリョではなく別の子役が演じているということです。toddler は「よちよち歩きの幼児」を指す名詞で、動詞 toddle(よちよち歩く)から来ています。英語のキャスト表では young ◯◯ と並んでよく使われる表記なので、覚えておくと海外のクレジットが読みやすくなります。

冒頭シーンで海と出会うモアナの声が、その後のモアナと少し違って聞こえるのは気のせいではありません。英語音声で観るときに意識してみると、かなり分かりやすい違いです。

この作品の名前はほとんどがポリネシア諸語の実在する単語

ここからが、この記事のいちばん伝えたい部分です。

『モアナと伝説の海』のキャラクター名は、ディズニーが語感で作った造語ではなく、太平洋の島々で実際に使われている言葉が大半を占めています。辞書を引けば、そのまま見出し語として載っています。

日本のアニメの「英語名」とは調べる方向が逆

日本のアニメで「キャラクターの英語名」を調べる場合、それは日本語の名前が英語圏でどう表記・翻訳されたかを調べる作業になります。技名や役職名が意訳されることも多く、公式訳と非公式訳が割れることもよくあります。

ところがこの作品は違います。原題が Moana という英語作品なので、英語名のほうが原名です。日本語版はそれをカタカナに写しているだけで、意味の翻訳は行われていません。

  • モアナ ← Moana
  • タマトア ← Tamatoa
  • モトゥヌイ ← Motunui

つまり「英語名を覚える」のではなく「もともとの名前の綴りを覚える」という感覚に近いのです。この構造を先に理解しておくと、名前まわりで迷わなくなります。作品タイトル側の対応関係は『モアナと伝説の海』の英語タイトルまとめでも詳しく整理しています。

語義の裏取りに使った3つの辞書

名前の意味については、ネット上に「◯◯語で△△という意味」という説明がたくさん出回っています。ただ、出典が書かれていないものが多く、そのまま鵜呑みにはできません。そこで本記事では、次の3つの辞書で実際に引いた結果だけを載せています。

  • Te Aka Māori Dictionary:マオリ語の代表的なオンライン辞書(ジョン・C・ムーアフィールド編)
  • Wehewehe Wikiwiki:ハワイ大学ヒロ校が公開しているハワイ語辞書群。とくに Pukui-Elbert(1986)は標準的なハワイ語辞典です
  • POLLEX-Online:ポリネシア諸語の比較辞書。1つの語について、サモア語・トンガ語・トケラウ語・マオリ語などの対応形と語義を横並びで見られます

この3つを使うと、「マオリ語では◯◯だが、ハワイ語では△△」といった言語ごとの違いまで確認できるのが強みです。実際、あとで触れる Heihei はマオリ語とハワイ語で意味がまったく違います。

ディズニーが意味を公式に説明した資料は見つからない

ここは正直に書いておきます。「この名前はこういう意味で付けた」とディズニーが公式に説明した一次資料は、本記事の執筆時点(2026年8月)では見つけられませんでした。

ですので、以下で紹介する語義はすべて「辞書にはこう載っている」という事実であって、「ディズニーがその意味を意図した」という話ではありません。ただ、後で見ていくとおり役どころと語義が一致しているケースがあまりに多いので、偶然とは考えにくい、というのが率直な感想です。

Moana|名前は「リーフの外の海」

まずは主人公から。

3つの辞書が同じ語義を載せている

moana は、3つの辞書すべてに「海」として載っています。

辞書語義
Te Aka Māori Dictionarysea, ocean, large lake(海、大洋、大きな湖)
Pukui-Elbert(ハワイ語)Ocean, open sea, lake(大洋、外洋、湖)
POLLEX-Online(ポリネシア祖語)Sea beyond the reef, ocean

注目してほしいのは3つめです。POLLEXの語義は Sea beyond the reef=「リーフ(サンゴ礁)の外側の海」。単に「海」ではなく、外洋を指す語として再構成されています。

ちなみに同じ辞書には KAU-MOANASailor, mariner(船乗り、航海者)という派生語も載っています。moana は航海と地続きの語彙なのです。

物語の禁を破る構図と名前が重なっている

ここで作品を思い出してください。モトゥヌイには「サンゴ礁の外に出てはいけない」という掟があり、英語のセリフでも beyond the reef という表現が繰り返されます。

一方、主人公の名前そのものが「リーフの外の海」を指す語です。

  • tai(マオリ語で「海、海辺、潮」=リーフの内側の穏やかな海)
  • moana(リーフの外の、開けた大海原)

掟が禁じている場所の名前を持った少女が、その掟を破って旅立つという構図になっているわけです。この対比を知ってから観直すと、序盤のセリフの重みがはっきり変わります。物語を動かすセリフそのものは『モアナと伝説の海』の英語の名言・セリフ集でまとめています。

綴りの注意|Auliʻi Cravalho の記号

モアナ役の英語版声優を検索するときに、多くの人がつまずくのがここです。

Auliʻi CravalhoAulii のあいだにある記号は、アポストロフィによく似ていますが別の文字です。ʻokina(オキナ)というハワイ語の文字で、声門閉鎖音を表します。日本語で言えば「あっ」の小さい「っ」に近い、音を一瞬止める働きをします。

実務上は、Auli'i Cravalho と普通のアポストロフィで書いても検索は通ります。綴りを完全に再現できなくても情報にはたどり着けるので、そこは神経質にならなくて大丈夫です。ただ、正式にはアポストロフィではないということだけ知っておくと、表記が揺れている理由が分かります。

カタカナ表記はディズニー公式の中でも割れている

そしてもうひとつ、調べていて驚いたことがあります。

Auliʻi Cravalho のカタカナ表記は、ディズニー公式サイトの中でも1作目と続編で違います。

  • disney.co.jp/movie/moana(1作目のページ)=アウリィ・カルバーリョ
  • disney.co.jp/fc/moana2(続編のページ)=アウリイ・クラヴァーリョ

本記事では1作目のページに合わせて「アウリィ・カルバーリョ」を主表記にしていますが、どちらも権利元の表記なので、片方が誤りというわけではありません。検索するときは両方の書き方を試すのが確実です。

こういう表記ゆれは、ディズニー作品では珍しくありません。「公式が1つに決まっている」と思い込まないほうが、調べ物は速く終わります。

Maui はディズニーの創作キャラクターではない

次はマウイです。ここは、この作品で最も誤解されやすいところだと思います。

ハワイ語辞書に見出し語として載っている半神

Māui は、ディズニーが作ったキャラクターではありません。 ポリネシア各地に古くから伝わる神話上の存在です。

証拠は分かりやすくて、ハワイ語辞書に見出し語として立っています。Pukui-Elbert(1986)の Māui の項には、こう書かれています。

The demigod and trickster who snared the sun(太陽を捕らえた半神にしてトリックスター)

映画のマウイは巨大な釣り針で自然を操り、太陽を止めた英雄として語られますが、これは映画のオリジナル設定ではなく、辞書に載るほど定着した伝承なのです。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの公式サイトも、あらすじで the mighty demigod Maui(強大な半神マウイ)と書いています。

ニュージーランドでは島を釣り上げた存在として語られる

マウイの伝承はハワイだけのものではありません。ニュージーランド政府が運営するオンライン百科事典 Te Ara にも、マオリの伝承におけるマウイが立項されています。

そこで語られる代表的な逸話が、マウイが北島を釣り上げたという話です。そのためニュージーランドの北島には Te Ika-a-Māui(マウイの魚)、南島には Te Waka-a-Māui(マウイのカヌー)という名前が伝わっています。

ここで先ほどの語彙が効いてきます。Te は「the」にあたる冠詞、ika は「魚」、waka は「カヌー」。作品に出てくる Te FitiTe Kā とまったく同じ構造で地名が作られているわけです。

トリックスター的な英雄という性格づけも、映画のマウイ(自信満々で調子がよく、でも憎めない)とよく重なります。作品を観る前にこの背景を知っているかどうかで、キャラクターの厚みがかなり変わります。

demigod という英単語の作り

学習面でも1つ収穫があります。demigod は英語の語彙として素直に分解できます。

  • demi-:「半分の」を意味する接頭辞(フランス語経由)
  • god:神

同じ接頭辞は demitasse(デミタス=小さいコーヒーカップ)や、料理の demi-glace(デミグラス)でもおなじみです。日本語で「半神半人」と訳されている語が、英語では接頭辞ひとつで表現されていると気づけると、語彙の増やし方が変わってきます。

Gramma Tala|tala は「語る・物語」

続いて、モアナの祖母タラおばあちゃんです。ここは個人的にいちばん「うまい」と思った名前でした。

5つの言語で「語る/話」を意味する

POLLEX-Onlineで tala を引くと、ポリネシア各地の対応形が並びます。抜き出すとこうなります。

言語語義
サモア語Tell(語る)
トンガ語Tell, relate(語る、物語る)
トケラウ語Story, news, report(物語、知らせ、報告)
ニウエ語To tell, narrate; story(語る、物語る、物語)
ツバル語Narrate, narration(語ること)

そしてタラおばあちゃんの役どころは、ディズニー公式サイトの説明によれば「島の歴史や伝説に詳しく、それを子供たちに語り伝えている」人物です。

「語る人」という名前を持った、島の語り部役どころと名前がここまできれいに一致している例は、なかなかありません。

物語の冒頭、子どもたちを集めてテ・フィティの伝説を語り聞かせる場面から作品が始まることを思うと、この名前は作品全体の設計に関わっていると言ってもよさそうです。

Gramma は辞書に載っている綴りではない

英語表記は Gramma Tala です。ここで Grandma ではなく Gramma になっている点に気づけると、英語のニュアンスが1つ手に入ります。

Gramma は、grandma を実際の発音どおりにくだけて綴ったものです。英語には、話し言葉の音をそのまま文字に落とす書き方が広くあります。

  • going togonna
  • want towanna
  • kind ofkinda
  • grandmagramma

いずれも辞書の見出し語というより、話し言葉の響きを再現するための綴りです。役名の綴りひとつで「かしこまった呼び方ではない」ことを表現しているわけで、これは英語ならではの工夫だと思います。

Walt Disney Music Creditsのキャスト欄も Rachel House as "Gramma Tala" と表記されており、Gramma が正式な役名であることが確認できます。

日本語吹替の「タラおばあちゃん」も同じ工夫

日本語版の役名は「タラおばあちゃん」です。「祖母タラ」でも「タラ婆」でもなく、子どもが呼びかけるときの言い方が選ばれています。

Gramma が持っていた「くだけた親しみ」を、日本語では「おばあちゃん」という呼称で受け止めているわけです。原語の意図と訳語の選択がきちんと揃っている好例だと思います。

吹替を担当したのは夏木マリさん。日本語版でも独特の存在感があるキャラクターですが、英語版のレイチェル・ハウスの声も一度は聴いてみてほしいところです。

Chief Tui|tui はポリネシアで「首長」を指す語

モアナの父、モトゥヌイの村長トゥイです。

フィジー語・サモア語・ニウエ語での意味

POLLEX-Onlineで tui を引くと、系統の異なる2つの語が出てきます。ひとつは「縫う・糸を通す」という意味の語(マオリ語 tui、サモア語 tui など)。もうひとつが、こちらです。

言語語義
フィジー語King or sovereign(王、君主)
サモア語Title of paramount chief of a district(地域の最高首長の称号)
ニウエ語Chief(首長。高位の人への呼びかけにも使う)

つまり英語名の Chief Tui は、辞書ベースで読むと「首長」+「首長」という重ね方になっているわけです。日本語版で「村長のトゥイ」と紹介されるのは、まさにこの通りの人物像です。

続編『モアナと伝説の海2』のディズニー公式サイトでは、日本語表記が「トゥイ」から「トゥイ村長」に変わっています。役職まで名前に含める形に寄せたとも読めて、細かいところですが面白い変化です。

セリフの声と歌の声が別人

トゥイについては、英語版でもう1つ知っておくと得をする事実があります。

トゥイのセリフを演じているのはテムエラ・モリソンですが、1作目の歌唱パートは別人が担当しています。

根拠はWalt Disney Musicの公式クレジットです。1作目のキャスト欄にテムエラ・モリソンの名前がある一方、劇中歌のアーティスト表記には Christopher Jackson(クリストファー・ジャクソン)の名前が並んでいます。クリストファー・ジャクソンはブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』でジョージ・ワシントン役を演じた俳優・歌手です。

英語圏のミュージカル映画では、セリフの俳優と歌の歌手を分けるのは珍しくありません。日本語吹替でも同じ手法が使われることがあります。

英語音声で観ていて「歌になると声質が変わった気がする」と感じたら、それは正しいというのが、この作品の面白いところです。楽曲そのものの話は『モアナと伝説の海』の主題歌・劇中歌まとめで扱っています。

続編では歌も本人が担当している

なお、続編ではテムエラ・モリソン本人が歌っている、と英語圏では伝えられています。ただ、これはディズニー公式サイトのクレジットで直接確認できたわけではないため、本記事執筆時点では「そう伝えられている」というレベルの情報として扱ってください。

こういう「歌唱担当」の情報は、公式サイトのキャスト欄よりもサウンドトラックのアーティスト表記のほうに出やすいという傾向があります。調べるときのコツとして覚えておくと便利です。

Sina|「伝説のヒロイン」の名前

モアナの母、シーナです。

「白髪の」と「伝説の女性」の2系統がある

POLLEX-Onlineで sina を引くと、複数の語義が並びます。作品と関わりが深そうなのは次の2つです。

  • SINA.1:Grey or white-haired(白髪の)。マレー・ポリネシア祖語レベルまでさかのぼる古い語です
  • SINA.2:Legendary heroine or goddess(伝説のヒロイン、あるいは女神)

とくに2つめが目を引きます。シナ(あるいはヒナ)はポリネシア各地の伝承に登場する女性で、東フツナ語の辞書では「Heroine of many stories(多くの物語のヒロイン)」と説明されています。

マウイが実在の神話上の存在だったのと同じように、シーナという名前も、太平洋の物語世界にすでにあった名前ということになります。娘のモアナが「海」、父が「首長」、祖母が「語り」、母が「伝説のヒロイン」。一家の名前が、そのまま物語の道具立てになっているとも読めます。

英語版声優ニコール・シャージンガーはハワイ出身

シーナ役はニコール・シャージンガー。プッシーキャット・ドールズのリードボーカルとして知られる歌手ですが、ハワイ・ホノルル生まれでもあります。

前述のとおり、モアナ役のアウリィ・カルバーリョもハワイ出身、マウイ役のドウェイン・ジョンソンはサモア系、タラ役のレイチェル・ハウスとトゥイ役のテムエラ・モリソンはニュージーランドのマオリ系です。

主要キャストがほぼ全員、太平洋地域にルーツを持つ俳優で固められているというのは、キャスティングの方針としてかなり徹底しています。名前だけでなく声の面でも、この作品が現地の文化に寄せて作られていることが分かります。

ヘイヘイとプア|動物キャラクターの名前

ここからは、人気の高い2匹(正確には1羽と1匹)です。

Heihei はマオリ語で「ニワトリ」そのもの

モアナが連れているニワトリ、ヘイヘイ。英語名は Heihei です。

Te Aka Māori Dictionaryで heihei を引くと、こう出ます。

hen, chook, fowl, chicken(めんどり、ニワトリ)

そのままです。キャラクターの名前ではなく、動物の名前をそのまま付けているわけです。日本語で言えば「ニワトリ」という名前のニワトリ、ということになります。

chook はオーストラリア・ニュージーランドの口語でニワトリを指す語で、この辞書がニュージーランドで編まれていることがよく分かる語義でもあります。英語圏でも地域によって使う単語が違うという、ちょっとした発見つきです。

同じ綴りでもハワイ語では「競走」

ここが面白いところです。

まったく同じ綴りの heihei を、ハワイ語辞書で引くと意味がぜんぜん違います。

Pukui-Elbert(1986)の heihei は、Race, as foot race, canoe race, horse race(競走。徒競走、カヌーレース、競馬など)。ニワトリではありません。

同じポリネシア諸語でも、言語が違えば同じ形の語が別の意味を持つという典型例です。「ヘイヘイの名前の意味は◯◯」と一言で言い切れないのは、このためです。

学習的にも示唆があります。「◯◯語で△△という意味」という説明を見たら、「どの言語の辞書か」まで確かめる。この癖をつけておくと、固有名詞の解説で誤情報をつかまされにくくなります。

Pua は「豚」ではなく「花」

モアナのペットのこぶた、プア。英語名は Pua です。

こぶたなので「豚」という意味かと思いきや、辞書はそう言っていません。

辞書pua の語義
Te Aka Māori Dictionaryto bloom, produce flowers/foam, flower, blossom, seed
Pukui-Elbert(ハワイ語)Flower, blossom, tassel…; to bloom, blossom

pua は「花」「咲く」です。 では「豚」はどうかというと、POLLEX-Onlineには別の語形が載っています。

PUAKAPig(豚)

つまり puapuaka は別の語で、こぶたの名前は「豚」ではなく「花」のほうということになります。公式サイトの紹介文にある「元気いっぱいで天真爛漫」という性格を思えば、こちらのほうがしっくりきます。

ただし繰り返しになりますが、これは辞書を引いた結果であって、ディズニーが「花という意味で名付けた」と説明しているわけではありません。似た綴りの語がある場合は、どちらの語形かまで見るというのが、この手の調べ物の基本です。

ヘイヘイの英語版声優は村人役も兼ねている

ヘイヘイの声を担当しているのはアラン・テュディック。ディズニー作品の常連で、『ズートピア』『ラーヤと龍の王国』などにも参加しています。

この作品ではヘイヘイの鳴き声だけでなく、村人役も兼任しているとされています。声の仕事では1人が複数役を担当するのはごく普通で、英語のクレジットでは同じ名前が何度も出てくることがよくあります。

キャスト表で同じ俳優名を2回見かけても誤植ではない、というのは海外クレジットを読むときの豆知識です。

魔物・敵役の英語名|Te Fiti・Te Kā・Tamatoa・Kakamora

物語の芯にあたる名前をまとめて見ていきます。

Te は英語の the にあたる冠詞

まず前提の文法から。Te FitiTe Kā に共通する Te は、名前の一部ではなく冠詞です。

Te Aka Māori Dictionaryの te は「the (singular)」。英語の the に相当する単数の定冠詞です。マオリ語やタヒチ語で広く使われます。

先ほど触れた Te Ika-a-Māui(マウイの魚)も同じ形です。Te ◯◯ という形を見たら「the ◯◯」と読み替えると、ポリネシアの地名・人名がぐっと読みやすくなります。

Te Fiti は「花」とも「フィジー」とも読める

命の女神テ・フィティ。英語名は Te Fiti です。

fiti をPOLLEX-Onlineで引くと、複数の系統が出てきます。作品と結びつきそうなのは次の2つです。

  • FITI.3:Flower(花)。西ポリネシア(東フツナ語・ニウエ語など)に見られる語義です
  • FITI.2:Traditional place name。フィジー(Fiji)を指す伝統的な地名です

テ・フィティは、緑と花に覆われた島そのものとして描かれる女神です。「花」という語義はイメージにぴったり合います。一方で「フィジー」という地名との関連を指摘する説も、英語圏では以前からあります。

どちらの読み方も辞書上は成り立ちます。 そしてディズニーはどちらとも説明していません。ここは断定せず、「そう読める根拠が2つある」と理解しておくのが正確です。

Te Kā の kā は「燃える・炎を上げる」

テ・フィティが心を失って変じた溶岩の魔物、テ・カァ。英語名は Te Kā です。

をTe Aka Māori Dictionaryで引くと、こうなります。

  • 動詞:to burn, glow(燃える、赤く輝く)
  • 状態:be alight, burning, ablaze(火がついている、燃えている、燃え盛っている)

Te Kā は「the burning one」に近い、と読めるわけです。溶岩でできた炎の魔物という造形と、これ以上ないほど噛み合っています。

先ほどの Te Fiti(the ◯◯)と並べると、命と炎、同じ存在の2つの姿が、同じ Te ◯◯ の形で対になっているという設計が見えてきます。

公式の曲名にはマクロンがない

綴りで1点だけ注意があります。

Te Kāa にはマクロン(長音記号)が付きますが、ディズニー公式のサウンドトラックの曲名は Te Ka Attacks でマクロンなしです。

Walt Disney Music Creditsのトラックリストを実際に見ると、Te Ka AttacksSails to Te FitiTe Fiti RestoredTamatoa's LairKakamora といった曲名が並んでいます。マクロンは付いていません。

つまり Te KāTe Kaどちらも公式の表記です。どちらかが誤りということはありません。検索するときはマクロンなしのほうが打ちやすいので、実用上は Te Ka で問題ありません。

なお日本語公式の表記は「テ・カァ」です。カタカナ・マクロンあり・マクロンなしの3通りが公式に存在すると考えておけば、表記の食い違いに戸惑わずに済みます。

Tamatoa は tama と toa に分けられる

ラロタイに棲む巨大なヤシガニ、タマトア。英語名は Tamatoa です。

この名前は、辞書に載っている2つの語に分けて読むことができます。

要素Te Aka Māori Dictionaryの語義
tamason, boy(息子、少年)/child
toabrave, bold(勇敢な、大胆な)/courage, champion(勇気、勝者)/warrior, brave man(戦士、勇者)

tamatoa で「勇者の子」「戦士の若者」のように読めるわけです。自分を最高にカッコイイと思い込んでいる自信過剰なカニ、という造形を思うと、名前のほうが本人の自己評価に忠実という皮肉が効いています。

ただし、これは2語に分けた読み方であって、tamatoa という1語が辞書に立っているわけではありません。あくまで分解して読める、という水準の話として受け取ってください。

Kakamora だけはポリネシアではなくソロモン諸島の伝承

最後に、この作品で個人的にいちばん驚いた事実です。

ココナッツの鎧をまとった小さな海賊、カカモラ。英語名は Kakamora ですが、この名前だけはポリネシアではなく、ソロモン諸島に伝わる存在の名前です。

ソロモン諸島の歴史百科事典(Solomon Islands Historical Encyclopaedia)には、こう書かれています。

  • カカモラはマキラ島・ガダルカナル島・マライタ島に伝わる「小人」の伝承である
  • 身長は0.5〜1メートルほど、長い黒髪と長い爪を持つとされる
  • 南マライタでは mumu、北マライタでは dodore、ガダルカナルでは kalibohibohi と呼ばれる
  • 山中の洞窟に住み、火を使わず野生の食物を食べて暮らすとされる
  • 宣教師チャールズ・フォックスが1924年の著書『The Threshold of the Pacific』で取り上げている

ソロモン諸島はメラネシアに属し、モアナの舞台であるポリネシアとは別の文化圏です。つまり作品は、ポリネシアだけでなく太平洋の広い範囲から題材を集めていることになります。

映画のカカモラはコミカルに描かれていますが、伝承のカカモラは「追い詰められると攻撃的になる」と恐れられる存在でした。名前ひとつ調べるだけで、作品の背景がここまで広がるというのが、この作品の面白さだと思います。

地名も名前として覚える|Motunui と Lalotai

キャラクター名を覚えるなら、地名もセットにしておくと英語音声がぐっと聞き取りやすくなります。

Motunui は「大きな島」

モアナが暮らす島、モトゥヌイ。英語名は Motunui です。

2語に分けると、両方とも辞書に載っています。

  • motu:Te Aka では「island, country, land, nation — anything separated or isolated(島、国、土地。切り離され孤立したもの全般)」。POLLEXでも MOTU.BIsland
  • nui:Te Aka では「to be large, big, many, great(大きい、多い、偉大な)」。POLLEXでも NUI.1Big

つまり Motunui は「大きな島」 と読めます。日本語版の紹介文でも「豊かな自然に恵まれた南の楽園モトゥヌイ」と説明されており、イメージはそのままです。

motu は「切り離されたもの」という原義から「島」になった語で、島という概念を「海に切り離された土地」として捉えているのが分かります。海を軸に世界を見ている文化だからこその語源です。

Lalotai は「海の下」

魔物の国ラロタイ。英語名は Lalotai です。これも2語に分かれます。

  • lalo:POLLEXの LALO.ABelow, under(下に、下方に)。オーストロネシア祖語レベルまでさかのぼる非常に古い語です
  • tai:Te Aka では「the sea, coast(海、海辺)」「tide, sea(潮、海)」

Lalotai は「海の下」。ディズニー公式サイトの説明は「海底にある魔物の国《ラロタイ》」です。名前が場所の説明そのものになっているわけで、ここまで来ると偶然とは思えません。

そして tai は、先ほどモアナの名前のところで出てきた「リーフの内側の海」を指す語でもあります。moanatai という2つの「海」が、主人公の名前と魔物の国の名前に分かれて使われていると考えると、なかなか凝った作りです。

『モアナと伝説の海2』のキャラクター英語名・声優一覧

2024年公開の続編では、モアナが航海のクルーを集めるため登場人物が一気に増えます。

続編の対応表

ディズニー公式サイト(disney.co.jp/fc/moana2)のキャスト欄をもとに整理しました。

日本語表記英語名英語版声優日本版声優
モアナMoanaアウリイ・クラヴァーリョ屋比久知奈
マウイMauiドウェイン・ジョンソン尾上松也
モニMoniフアラライ・チャン(Hualālai Chung)小関裕太
ロトLotoローズ・マタフェオ(Rose Matafeo)鈴木梨央
ケレKeleデヴィッド・フェイン(David Fane)山路和弘
マタンギMatangiアフィマイ・フレーザー(Awhimai Fraser)ソニン
シメアSimeaカリーシ・ランバート=ツダ増留優梨愛
ヘイヘイHeiheiアラン・テュディックAlistair Abell
トゥイ村長Chief Tuiテムエラ・モリソン安崎求
シーナSinaニコール・シャージンガー中村千絵
タラおばあちゃんGramma Talaレイチェル・ハウス夏木マリ
タウタイ・ヴァサTautai Vasaジェラルド・ラムジー(Gerald Ramsey)山野井仁

注目したいのは、続編にも登場する1作目のキャラクターは、英語版・日本語版ともに声優が全員そのままだという点です(タマトアは公式のキャスト欄に記載がありません)。声を変えずにシリーズを続けるのはディズニー作品の一貫した方針で、この作品でも徹底されています。

Moni・Loto・Kele|航海クルーの名前

新しく加わったクルー3人の名前も、辞書を引くと役どころと重なります。

  • Kele(ケレ):POLLEXの KELE.AEarth, dirt, soil(土、大地)。トンガ語では「Mud, dirt or clay(泥、土、粘土)」。公式サイトの紹介は「植物を愛する料理担当の老人」「農作物や植物のことなら何でも知っていて頼りになる人物」です。土の名前を持った農業の専門家ということになります
  • Loto(ロト):POLLEXの LOTO.AInside(内側)、LOTO.CHeart, mind, feelings(心、気持ち)。サモア語でも「Inside」。公式サイトの紹介は「天才肌の頼れる船大工の少女」で、カヌーの設計を担当します
  • Moni(モニ):こちらは役どころに合う語義を辞書で確認できませんでした。POLLEXに MONI という項目はありますが、語義が「Consume food」で、伝説オタクの青年という人物像とは結びつきません。語義は不明としておくのが正直です

「全部に意味がある」と書きたくなるところですが、確認できないものは確認できないと書くのが、この手の記事では大事だと思っています。

Matangi は「風」

コウモリのように舞う存在マタンギ。英語名は Matangi です。

これははっきりしています。

辞書・言語語義
Te Aka Māori Dictionarywind, breeze(風、そよ風)
POLLEX(サモア語)Wind
POLLEX(トケラウ語)Wind, storm; eagerness(風、嵐。熱意)

Matangi は「風」。嵐の神に仕える存在という設定と、まっすぐつながります。トケラウ語の「storm(嵐)」という語義まで含んでいるのが、なかなか出来すぎです。

なお matangi は言語によって matagi という綴りになります(ngg の対応)。検索で見つからないときは matagi でも試すと、辞書のヒット率が上がります。

Nalo は「消えた・失われた」

続編で世界を引き裂いた嵐の神、ナロ。英語名は Nalo です。

ハワイ語辞書 Pukui-Elbert(1986)の nalo は、こう書かれています。

Lost, vanished, concealed, hidden, forgotten, missing; to lose, pass away, disappear(失われた、消えた、隠された、忘れられた、行方不明の)

POLLEXでも同系の語 GALO.1Out of sight, disappeared, forgotten, lost として登録されています。

続編でナロがしたことは、島を沈め、海と海のつながりを断ち、人々を互いに見えなくすることでした。「消えた・見えなくなった」という名前を持った神が、世界を見えなくするという構図になっています。

なお、ナロの英語版声優については注意が必要です。ディズニー公式サイトのキャスト欄にナロの記載はありません。英語圏の映画データベースでは Tofiga Fepulea'i とされていますが、権利元のクレジットで確認できたわけではないので、本記事では確定情報として扱いません。

Tautai Vasa は称号+名前

モアナの祖先として登場するタウタイ・ヴァサ。英語名は Tautai Vasa です。この名前は、称号と名前に分けて読めます。

tautai をPOLLEXで引くと、こう並びます。

言語語義
サモア語Master fisherman, captain(熟練の漁師、船長)
トケラウ語Master fisherman, skipper, or captain of a boat; to steer, direct(船を操り、導く)
アヌタ語・ティコピア語Sea expert(海の専門家)

vasa はサモア語で「Open sea, the ocean, especially of the space between two distant points(外洋。とくに離れた2地点のあいだの海域)」。

つまり Tautai Vasa は、「外洋の航海長」のように読める名前です。続編でモアナが受け取る tautai という称号(マスター・ウェイファインダー)と同じ語なので、祖先の名前と主人公が受け継ぐ称号が同じ語でつながっていることになります。

日本版のヘイヘイだけ英語名でクレジットされている

対応表を作っていて気づいた細かい点をひとつ。

ディズニー公式サイトの続編の「日本版声優」欄では、ヘイヘイだけ Alistair Abell という英語表記でクレジットされています。ほかは全員が日本語名です。

理由は公式に説明されていないため、ここでは公式の記載どおりに書くにとどめます。鳴き声中心のキャラクターなので、日本語版でも音声がそのまま使われている可能性はありますが、断定はできません。

こういう「公式に書いてあるが理由は書かれていない」項目は、推測で埋めずにそのまま載せておくのがいちばん安全です。

英語名を書くときに間違えやすいポイント

ここまでの内容を、実務的なチェックリストにまとめます。

よくある綴りの誤り一覧表

正しい綴りよくある誤り注意点
MoanaMoannan は1つ
MauiMauai / Mauiiハワイの島名と同じ綴り
Gramma TalaGrandma Talad は入らない
Chief TuiChief Tui Waialiki姓は公式サイトに記載なし
Te FitiTefiti / Te-Fiti2語。ハイフンは入れない
Te KāTe Ka'a / Tekaマクロンなしの Te Ka も公式
MotunuiMotului / Motunui島ネット上のスクリプトに誤植あり
LalotaiLaloteitai=海
TamatoaTomatoaTama
HeiheiHei Hei1語で書くのが公式
Auliʻi CravalhoAulii CarvalhoCravalhor の位置に注意
MatangiMatagi作品の表記は Matangi

とくに Cravalho は、Carvalho(カルヴァーリョ)と並び替えて書いてしまう誤りが多いです。ポルトガル系の姓 Carvalho と混同しやすいので、Cra の順番だけ意識しておくと間違えません。

ネット上のスクリプトは固有名詞を誤植する

英語学習で「作品名 + script」と検索してセリフ一覧を探す方法は非常に有効なのですが、この作品では1点だけ強い注意があります。

ネット上に転がっているスクリプトは、固有名詞の綴りをかなりの頻度で間違えます。実際に確認したところ、MotunuiMotului と書かれているものがありました。

理由は単純で、多くのスクリプトは耳で聞き取って書き起こされているからです。一般的な英単語なら文脈で補正できますが、聞き慣れないポリネシアの固有名詞は補正が効きません。

対策も単純です。

  • セリフの流れを把握する用途にはスクリプトを使ってよい
  • 綴りの根拠にはスクリプトを使わない。公式サイト・公式クレジット・辞書に当たる

この2つを分けておけば、スクリプトは今でも十分に強力な教材です。

「ワイアリキ」という姓は公式サイトに載っていない

日本語のまとめサイトでは、モアナ・トゥイ・シーナに「ワイアリキ」という姓を付けて書いているものがあります。

ただ、ディズニー公式サイト(disney.co.jp)のキャラクター紹介にも、キャスト欄にも、この姓の記載はありません。 公式の表記はあくまで「モアナ」「トゥイ」「シーナ」です。

「よく見かける表記」と「権利元が使っている表記」は別物なので、この記事では公式サイトの表記に統一しています。姓を使いたい場合は「一部の資料でそう表記されている」という但し書きを添えるのが安全です。

実写版でもキャラクターの英語名は変わらない

2026年7月31日に日本公開された実写版についても触れておきます。

ディズニー公式のコラムによれば、実写版の監督は映画『ハミルトン』のトーマス・ケイル、モアナ役は新人のキャサリン・ランガイア、そしてマウイ役はドウェイン・ジョンソンが続投しています。アニメーション版でマウイの声を担当した俳優が、実写でもそのまま同じ役を演じる形です。

そして重要なのは、キャラクターの英語名そのものは変わっていないという点です。MoanaMauiMotunui といった名前は共通なので、この記事の対応表は実写版を観るときにもそのまま使えます。

なお、実写版のDisney+での配信は、本記事執筆時点(2026年8月)では発表が確認できていません。Disney+では実写版の7分間の特別映像が配信されていますが、これは本編とは別のコンテンツです。混同しないよう注意してください。

Disney+で英語音声に切り替えて名前を耳で確かめる方法

綴りを覚えたら、次は実際の音を確かめる番です。固有名詞は、目で見た綴りと耳で聞いた音を結びつけて初めて自分のものになります。

日本のアカウントのまま切り替えられる(VPN不要)

『モアナと伝説の海』と『モアナと伝説の海2』は、どちらもDisney+(ディズニープラス)で配信されています。そして、日本のアカウントのまま英語音声・英語字幕に切り替えられます。

海外の配信サービスに登録し直したり、VPNで接続先の国を変えたりする必要は一切ありません。手順はこれだけです。

  1. Disney+で『モアナと伝説の海』を再生する
  2. 再生画面の設定(音声・字幕)メニューを開く
  3. 音声を English、字幕を English に切り替える

ディズニー作品は1つの作品に複数の音声・字幕トラックを持っているので、同じ作品を日本語でも英語でも観られるというわけです。ディズニーは発音が明瞭で、歌によって同じ表現が何度も出てくるため、英語学習の教材としてもかなり優秀です。

続編も日本のDisney+で配信されているので、1作目で覚えた固有名詞をそのまま2作目で確認できます。視聴環境まわりの詳しい比較は『モアナと伝説の海』を英語音声・英語字幕で観る方法にまとめました。なお配信状況や対応言語は時期によって変わることがあるので、視聴前にご確認ください。

英語字幕を併用すると固有名詞が確定する

英語音声だけで観ていると、「今なんて言った?」が固有名詞なのか英単語なのか判別できません。 ここで英語字幕を同時に出すと、この問題が一気に解決します。

  • 綴りが大文字で始まっていれば → 固有名詞。意味を英語で考えなくてよい
  • 小文字の一般的な単語なら → 語彙として拾う。辞書を引く価値がある

たとえば the heart of Te Fiti というフレーズなら、Te Fiti は固有名詞、heart は普通の名詞です。この切り分けができるようになると、「聞き取れなかった」の中身が具体的に見えてきます。

漠然と「自分は英語ができない」と落ち込む時間が減るので、精神的にもかなり楽になります。作品に出てくる一般的な表現のほうは『モアナと伝説の海』で使える英語フレーズ集で扱っています。

キャラクター英語名を英語学習に活かす3つの方法

最後に、筆者が実際にやってきた使い方を3つ紹介します。

観る前に固有名詞リストを作る

いちばん効果があるのがこれです。観る前に、この記事の対応表をスマホにメモしておく。 それだけです。

やることは単純ですが、効果は大きいです。固有名詞は音の情報量が多いわりに意味を考える必要がないので、先に「これは名前だ」と分かっているだけで、リスニングの負荷が目に見えて下がります。

最低限おさえておきたいのは次の9語です。

  • MoanaMauiGramma TalaChief TuiSina
  • Te FitiTe KāMotunuiLalotai

これに HeiheiPuaTamatoaKakamora を足せば、1作目はほぼカバーできます。

Moana script で検索してAIに解説させる

筆者が長く続けている方法です。Moana script」で検索してセリフ一覧を探し、気になった台詞をコピーしてAIに「このセリフのニュアンスと文法を解説して」と投げる。 これだけで、市販の教材にはない自分専用の解説ができます。

ただし、この記事で書いたとおりスクリプトの固有名詞の綴りは信用しないでください。使い方を分けるのがコツです。

  • 一般的なセリフの構文・語法を調べる:スクリプトを使ってよい
  • 固有名詞の綴りを確認する:公式サイト・公式クレジットに当たる

この線引きさえ守れば、スクリプト×AIは今でも最強クラスの学習法だと思っています。

名前の語義を先に知ってから観る

最後は、学習というより楽しみ方の話です。

英語学習と聞くと身構えてしまう人は多いのですが、この作品は「名前の意味を知る」という入口から入れます。 Tala が「語る」、Kele が「土」、Nalo が「消えた」。役どころと名前が重なっていることに気づくたびに、作品そのものが面白くなります。

好きな作品なら話の流れをすでに知っているので、英語そのものに集中できます。「勉強のために観る」のではなく「もっと深く観るために英語を使う」という順番にすると、続けるハードルがぐっと下がります。

作品を英語で楽しむ全体像は『モアナと伝説の海』を英語で楽しむ完全ガイドにまとめてあります。アニメ作品全般の英語学習法は英語×アニメの総合ガイドもあわせてどうぞ。

『モアナと伝説の海』のキャラクター英語名についてよくある質問

モアナの英語名の綴りは?

Moana です。日本語のカタカナ表記そのままで、翻訳や改名は行われていません。英語版声優はアウリィ・カルバーリョ(Auliʻi Cravalho)、日本語吹替は屋比久知奈さんです。

タラおばあちゃんの英語名は Grandma ではないのですか?

はい、公式の役名は Gramma Talad が入りません。grandma をくだけて綴った形で、gonnawanna と同じ発想です。Walt Disney Musicの公式クレジットでも Gramma Tala と表記されています。

モアナという名前にはどんな意味がありますか?

マオリ語辞書では「sea, ocean, large lake」、ハワイ語辞書では「Ocean, open sea, lake」。ポリネシア諸語の比較辞書では「Sea beyond the reef, ocean(リーフの外の海)」と記載されています。ただし、ディズニーが公式に意味を説明した資料は確認できていません。

マウイはディズニーのオリジナルキャラクターですか?

いいえ。ポリネシア各地に伝わる神話上の半神です。ハワイ語辞書には「太陽を捕らえた半神にしてトリックスター」として見出し語が立っており、ニュージーランドでは北島を釣り上げた存在として語られています。

テ・カァの正しい英語表記はどれですか?

Te Kā(マクロンあり)と Te Ka(マクロンなし)のどちらも公式です。ディズニーのサウンドトラックの曲名は Te Ka Attacks でマクロンが付いていません。日本語公式の表記は「テ・カァ」です。

『モアナと伝説の海2』の新キャラクターの英語名は?

モニ(Moni)、ロト(Loto)、ケレ(Kele)、マタンギ(Matangi)、シメア(Simea)です。このほかモアナの祖先タウタイ・ヴァサ(Tautai Vasa)と、嵐の神ナロ(Nalo)が登場します。

まとめ|名前を1つ調べるだけで作品が立体的になる

『モアナと伝説の海』のキャラクター英語名を整理してきました。要点をまとめます。

  • 英語名が原名。日本語版はカタカナに写しただけなので、覚え直す負担はほぼない
  • 主要8名は MoanaMauiGramma TalaChief TuiSinaTamatoaHeiheiPua
  • 公式サイトは「海」と「ミニ・マウイ」もキャラクターとして扱っている
  • 名前の多くはポリネシア諸語に実在する語tala=語る、tui=首長、heihei=ニワトリ、pua=花、=燃える、motunui=大きな島、lalotai=海の下
  • Maui は実在の神話上の半神で、ディズニーの創作ではない
  • Kakamora だけはソロモン諸島(メラネシア)の伝承に由来する
  • 綴りの注意は Grammad なし)、Te KāTe Ka(どちらも公式)、CravalhoCarvalho ではない)
  • 続編では MoniLotoKeleMatangiSimea が加わり、続投キャラの声優は英語版・日本語版とも変わっていない
  • ネット上のスクリプトは固有名詞を誤植するので、綴りの根拠には使わない

名前を1つ調べるだけで、太平洋の言語や伝承にまで話が広がる作品はそう多くありません。「聞き取れない」と感じていた音の正体が固有名詞だったと分かるだけで、英語音声への抵抗感は驚くほど下がります。

まずは対応表をスマホに控えて、Disney+で英語音声・英語字幕に切り替えてみてください。1周目で名前が聞き取れるようになるだけでも、この作品の見え方は確実に変わります。

  • この記事を書いた人

YOSHI

アニメ・海外ドラマ・サッカーなどエンタメで楽しく英語学習中。留学経験はなし。大学時代に英語を始めて就職後は海外事業を担当。現在は独立してフリーランス。2児の父。TOEIC990。VERSANT76。

-モアナと伝説の海

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