「インサイド・ヘッドの主題歌を英語で知りたい」と検索した方に、まず結論からお伝えします。この作品に、英語の歌モノの主題歌はありません。『アナと雪の女王』のLet It Goや『リメンバー・ミー』のRemember Meのような曲を探しても、見つからないのが正解です。
では何も学べないのかというと、まったく逆です。この作品の音楽は全編がインストゥルメンタルの劇伴(スコア)で、1作目に24曲、2作目に27曲、合わせて51曲が公式サウンドトラックに収録されています。そしてその曲名のほとんどが、英語のイディオムやことわざ、有名曲のタイトルをもじった言葉遊びになっているのです。
Bundle of Joy、Riled Up、Nomanisone Island、The Life of Riley、Done Track Mind——並べただけで、英語の慣用句が次々に顔を出します。歌詞を1行も読まなくても、曲名を1つずつ辞書に入れるだけで英語表現が51個ぶん手に入る。この記事はそういう記事です。
なお著作権に配慮して、本記事では歌詞を一行も引用しません。扱うのは曲名・作曲者・受賞歴・流れる場面、そして曲名に使われている英語表現の意味だけです。
英語音声のまま音楽を聴くなら、Disney+が最短ルートです。日本で契約したアカウントのまま、再生画面の設定を切り替えるだけで英語音声に変わります(VPNや海外アカウントは不要です)。
Contents
- 1 インサイド・ヘッドの主題歌は「英語の歌」としては存在しない
- 2 1作目の音楽はMichael Giacchino|受賞歴と基本データ
- 3 2作目の音楽はAndrea Datzman|ピクサー長編初の女性作曲家
- 4 1作目の劇伴24曲|曲名に隠れている英語表現
- 5 2作目の劇伴27曲|言葉遊びはさらに濃くなった
- 6 日本盤サントラでは、この言葉遊びが全部消える
- 7 日本版エンドソング|「愛しのライリー」と「プレゼント」
- 8 Disney+で英語音声のまま音楽を聴く方法(VPN不要)
- 9 歌詞を使わずに曲名だけで英語を鍛える4つの方法
- 10 インサイド・ヘッドの主題歌についてよくある質問
- 11 まとめ|曲名を読むだけで、イディオムが51個ぶん手に入る
インサイド・ヘッドの主題歌は「英語の歌」としては存在しない
結論を先に置きます。英語版のインサイド・ヘッドには、歌詞のある主題歌が存在しません。これは情報が足りないのではなく、そもそも作られていないということです。
英語版で流れるのはすべてインストゥルメンタルの劇伴
ディズニー作品というと、劇中でキャラクターが歌い出すミュージカル形式を思い浮かべる方が多いはずです。ところがピクサー作品はその路線を取らないことが多く、インサイド・ヘッドもその典型でした。
1作目の公式サウンドトラック『Inside Out: Original Soundtrack』は、Michael Giacchinoによるスコア24曲だけで構成されています。2作目の『Inside Out 2 (Original Motion Picture Soundtrack)』も同様に、Andrea Datzmanによるスコア27曲です。どちらのアルバムにも、歌詞のあるオリジナル主題歌は1曲も収録されていません。
作品全体の英語の楽しみ方はインサイド・ヘッドを英語で楽しむ完全ガイドでまとめていますが、音楽に関して言えば「歌ではなくオーケストラで語る映画」だと理解しておくのが正確です。
「主題歌」があるのは日本公開版だけ
では、日本で「インサイド・ヘッドの主題歌」といえばDREAMS COME TRUEの「愛しのライリー」が出てくるのはなぜか。答えはシンプルで、日本公開版にだけ独自のエンドソングが用意されているからです。
- 1作目(2015年):DREAMS COME TRUE「愛しのライリー」
- 2作目(2024年):SEKAI NO OWARI「プレゼント」
つまり「主題歌」という言葉が指すものが、日本と英語圏でまったく違います。日本版の主題歌の英語版を探しても存在しませんし、英語版の主題歌の日本語版というものも存在しません。ここを取り違えると、いくら検索しても答えにたどり着けません。
サントラで唯一の「歌」は本編の曲ではない
1作目のサウンドトラックには、25曲目にボーナストラックとしてLavaという歌が入っています。「じゃあこれが主題歌なのでは」と思うところですが、これは違います。
Lavaは、劇場公開時にインサイド・ヘッドと同時上映された短編アニメーション(邦題『南の島のラブソング』)のために作られた曲です。本編ではなく併映短編の曲なので、インサイド・ヘッドの主題歌ではありません。日本盤にはさらに日本語版のLavaと「愛しのライリー」が追加収録されています。
予告編で流れた曲と、本編の音楽は別物
日本語のファンサイトを見ると、AerosmithのSweet EmotionやBostonのMore Than a Feeling、One DirectionのWhat Makes You Beautifulといった既存曲の名前が挙がっていることがあります。
これらは予告編(トレーラー)などで使われたと紹介されているもので、いずれも公式サウンドトラックには収録されていません。「本編の音楽=作曲家が書いた劇伴」「予告編の音楽=既存の洋楽」と切り分けておくと、情報が混ざらずに済みます。
1作目の音楽はMichael Giacchino|受賞歴と基本データ
1作目の劇伴を書いたのは、ピクサー作品でおなじみのMichael Giacchino(マイケル・ジアッキーノ)です。監督のPete Docterとは『カールじいさんの空飛ぶ家』に続く2度目のタッグでした。
サウンドトラックの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アルバム名 | Inside Out: Original Soundtrack |
| 作曲 | Michael Giacchino |
| 発売 | 2015年6月16日(デジタル)/7月7日(CD) |
| 収録 | スコア24曲+ボーナストラックLava |
| 録音 | Warner Bros. Eastwood Scoring Stage・70人編成のオーケストラ |
| 日本盤 | 2015年7月14日発売。「愛しのライリー」を追加収録 |
ピクサーとの仕事はこれが5作目で、Giacchino本人は「『カールじいさんの空飛ぶ家』より感情的で、より個人的な作品になった」と語っています。自分の子育ての経験が反映されている、というのがその理由でした。
アニー賞の音楽賞を受賞している
この劇伴は、第43回アニー賞のOutstanding Achievement for Music in a Feature Production(長編作品の音楽部門)を受賞しています(2016年2月6日、UCLAロイス・ホール)。同じ年、インサイド・ヘッドはアニー賞で作品賞を含む多数の部門を制しました。
Outstanding Achievementは「傑出した業績」。achievementは努力の末に成し遂げたものを指す名詞で、accomplishmentとほぼ同義です。英文の賞の名前は、そのまま英単語の勉強になります。
1曲目のBundle of Joyは英語のイディオムそのもの
サウンドトラックの1曲目がBundle of Joy。ピアノで始まり、ギター、弦、ハープ、そして珍しいことにガラスのボウルまで加わっていく、ライリーのテーマ曲です。
そしてこの曲名が、そのまま英語表現の教材になります。a bundle of joyは「生まれたばかりの赤ちゃん」を指す決まり文句です。bundleは「束・包み」なので、直訳すれば「喜びのかたまり」。おくるみに包まれた赤ん坊を指す、英語圏では手垢が付くほど使われている言い方です。
もちろん、そこに感情キャラクターのJoy(ヨロコビ)が掛かっています。イディオムとキャラクター名が、たった3語で二重になっているわけです。
Aren't you a little bundle of joy?と言うのはパパ
この曲名は、映画冒頭のセリフとぴったり呼応しています。生まれたばかりのライリーをのぞき込んで、Oh, look at you. Aren't you a little bundle of joy?(ああ、見てごらん。まるで小さな喜びのかたまりじゃないか)と声をかける場面です。
ここで気をつけたいのが、このセリフを言うのはヨロコビではなく、パパ(DAD)だという点です。ヨロコビは直後に同じ言葉を繰り返します。ディズニーが公開している脚本の話者名でも、セリフ検索サービスの映像クリップでも、話者はパパで一致しています。有名なセリフほど「誰が言ったか」が入れ替わって記憶されやすいので、ここは押さえておいて損がありません。
文法面ではAren't you 〜?という否定疑問文が使われています。日本語話者がつまずきやすい形ですが、これは疑問というより「〜だよねえ」という感嘆に近い使い方です。他のセリフの読み解きはインサイド・ヘッドの英語の名言集にまとめました。
2作目の音楽はAndrea Datzman|ピクサー長編初の女性作曲家
続編『インサイド・ヘッド2』で作曲を担当したのはAndrea Datzman(アンドレア・ダッツマン)。ピクサーの長編映画を単独で作曲した、史上初の女性作曲家です。
サウンドトラックの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アルバム名 | Inside Out 2 (Original Motion Picture Soundtrack) |
| 作曲 | Andrea Datzman |
| 発売 | 2024年6月14日(全米公開と同日) |
| 収録 | 27曲・67分 |
| 録音 | Warner Bros. Eastwood Scoring Stage(1作目と同じスタジオ) |
| 日本版エンドソング | SEKAI NO OWARI「プレゼント」 |
1作目では「スコア・コーディネーター」だった
面白いのは、Datzmanが1作目にも参加していたことです。当時のクレジットでの役職はScore Coordinator(スコア・コーディネーター)。録音スケジュールや譜面の段取りを回す、いわば裏方のポジションでした。
そこから9年かけて、同じシリーズの続編で作曲家として単独クレジットに名前が載る。キャリアの積み上げ方として、これ以上わかりやすい話はありません。彼女はピクサーの短編『カールじいさんのデート(Carl's Date)』や配信シリーズ『ダグの日常(Dug Days)』でも音楽を手がけています。
ガムのCMソングを書いたのも彼女
もうひとつ、1作目のファンには嬉しい事実があります。作中で何度もライリーの頭の中に流れ込んでくる、あのガムのCMソングTripleDent Gum Jingle。この曲を作曲したのがAndrea Datzmanです(作詞はPete DocterとBob Peterson、歌唱はNick Piteraと彼女自身)。
1作目のサウンドトラックでは、24曲目The Joy of Creditsの末尾に隠しトラックとして収録されています。ちなみにjingleはCMや番組で流れる短い音楽を指す英単語で、日本語の「ジングル」と同じ意味です。頭から離れない曲を英語ではearworm(耳の虫)と呼びますが、この曲はまさにそれを狙って作られています。
Giacchinoのテーマを引き継いでいる
2作目の27曲のうち9曲は、作曲者クレジットがDatzman / Giacchinoの連名になっています。1作目のテーマをそのまま引用している曲です。
Datzman本人はインタビューで、Rileyがホッケーをするときの身体感覚を表現するためにロックの要素を取り入れたこと、Sense of Self(ジブンラシサ)のテーマがいちばんのお気に入りであることなどを語っています。前作の音楽を否定せずに引き継ぎつつ、新しい感情には新しい音を割り当てるという設計です。
1作目の劇伴24曲|曲名に隠れている英語表現
ここからが本題です。Giacchinoはキューのタイトルにダジャレを付けることで知られる作曲家で、『レミーのおいしいレストラン』のGranny Get Your Gun、『カールじいさんの空飛ぶ家』のThree Dog Dashなどが有名です。もともとは音楽エディターのStephen Davisが付け始めた習慣だと本人が語っており、そのDavisはインサイド・ヘッドでも音楽エディターを務めています。
Riled Up|キャラクター名を曲名に仕込む
7曲目のRiled Upは、この作品を象徴する一曲名です。riled upは「イライラした」「カッカした」という意味の口語表現で、get all riled up over nothing(何でもないことでカリカリする)のように使います。
そしてriledの音が、主人公の名前Rileyとほぼ同じです。怒りの感情を表す語と、主人公の名前が重なっている。曲名を見た瞬間に、イカリが操縦桿を握っている場面が浮かぶ仕掛けになっています。
同じ発想の曲名は他にもあります。Tears of Joy(うれし涙/ヨロコビの涙)、Chasing Down Sadness(chase downは「追いつめる」)、Overcoming Sadness、Joy Turns to Sadness。キャラクター名がそのまま感情を表す普通名詞なので、日常表現がそのままキャラクターの動きになるわけです。感情キャラの英語名はキャラクターの英語名と英語版声優一覧で一覧にしています。
Nomanisone Island|英語のことわざを島の名前にする
3曲目のNomanisone Island / National Movers。前半のNomanisoneは辞書を引いても出てきません。これはNo man is an island.(人は誰も孤島ではない=人はひとりでは生きられない)という17世紀の詩人John Donneの一節を、ひと続きに書いて島の名前らしく見せた造語です。
作中の「性格の島」が次々に崩れていく展開と重ねられた、かなり凝ったタイトルです。辞書に載っていない語が出てきたら、区切り方を変えて読んでみるのがコツです。後半のNational Moversは引っ越し業者の社名風で、一家がサンフランシスコへ引っ越す場面に対応しています。
Memory LanesとDown in the Dumps|イディオムを風景に変える
この2曲は、英語の慣用句をそのまま映像化するというこの映画の基本方針を、曲名の側から見せてくれます。
Memory Lanes:memory laneは「思い出の小道」。take a walk down memory lane(昔を懐かしむ)という決まり文句があります。それを複数形にして、記憶の棚が並ぶ本物の通路にしてしまったのがこの曲名です。Down in the Dumps:be down in the dumpsは「落ち込んでいる」「気がめいっている」というイディオム。作中にはMemory Dump(記憶のゴミ捨て場)という文字通りの「ダンプ」があり、比喩と実物が同時に成立するという仕掛けになっています。
Chasing the Pink ElephantとDream a Little Nightmare
11曲目のChasing the Pink Elephant。pink elephantは英語で「ありもしない幻」「幻覚」を指す言い回しです。そして作中でヨロコビたちが追いかけるビンボンは、体の一部が象という設定。イディオムの意味と、画面に映っているものが両方成立しています。
16曲目のDream a Little Nightmareは、スタンダードナンバーDream a Little Dream of Meのもじり。dreamをnightmare(悪夢)に差し替えただけで、夢の撮影所が悪夢に変わる場面をひと言で説明しています。
1作目 全24曲リストと元ネタ
| # | 曲名 | 元になっている英語 |
|---|---|---|
| 1 | Bundle of Joy | a bundle of joy=生まれたての赤ちゃん |
| 2 | Team Building | 企業研修の「チームビルディング」 |
| 3 | Nomanisone Island / National Movers | No man is an island.=人はひとりでは生きられない |
| 4 | Overcoming Sadness | overcome=乗り越える |
| 5 | Free Skating | フィギュアスケートの「フリー」 |
| 6 | First Day of School | 転校初日 |
| 7 | Riled Up | riled up=カリカリしている+Riley |
| 8 | Goofball No Longer | goofball=おふざけ屋 |
| 9 | Memory Lanes | memory lane=思い出の小道 |
| 10 | The Forgetters | forget+-erの造語 |
| 11 | Chasing the Pink Elephant | pink elephant=ありもしない幻 |
| 12 | Abstract Thought | abstract=抽象的な |
| 13 | Imagination Land | imagination=想像力 |
| 14 | Down in the Dumps | down in the dumps=落ち込んで |
| 15 | Dream Productions | 映画制作会社のProductions |
| 16 | Dream a Little Nightmare | 名曲Dream a Little Dream of Me |
| 17 | The Subconscious Basement | subconscious=潜在意識 |
| 18 | Escaping the Subconscious | escape=抜け出す |
| 19 | We Can Still Stop Her | still=まだ |
| 20 | Tears of Joy | tears of joy=うれし涙 |
| 21 | Rainbow Flyer | ビンボンのワゴンの名前 |
| 22 | Chasing Down Sadness | chase down=追いつめる |
| 23 | Joy Turns to Sadness / A Growing Personality | turn to=〜に変わる |
| 24 | The Joy of Credits | the joy of 〜+end credits |
2作目の劇伴27曲|言葉遊びはさらに濃くなった
続編では、この遊びがさらにエスカレートします。27曲中、明らかに元ネタのある曲名が15曲以上。正直に言って、1作目より難易度が高いです。
Outside IntroとInside Outro|タイトルを分解して両端に置く
まず気づいてほしいのが1曲目と26曲目です。
- 1曲目:
Outside Intro - 26曲目:
Inside Outro
原題Inside Outの2語を入れ替えて、intro(イントロ)とoutro(アウトロ=曲の終わり)を足しています。アルバムの最初と最後に、タイトルを裏返した造語を1つずつ置くという構成です。Inside Outという英題そのものの意味は英語タイトル『Inside Out』の意味で詳しく扱っています。
The Life of Riley|これは実在するイディオム
3曲目のThe Life of Rileyは、この作品で最も出来がいい曲名かもしれません。というのも、the life of Rileyは「何不自由ない気楽な暮らし」を意味する実在の英語表現だからです。
He's living the life of Riley.と言えば「あいつは左うちわの生活をしている」という意味。20世紀初頭のアメリカで広まった言い回しで、アイルランド系の古い民謡に由来するという説があります。主人公の名前がRileyであることを利用して、既存のイディオムをそのまま曲名に転用しているわけです。
Flight for Fighting|fight or flightをひっくり返す
13曲目のFlight for Fighting。元ネタはfight or flight(闘争・逃走反応)という心理学の用語です。危険に直面したとき、生き物は「戦う」か「逃げる」かの反応を起こす、というあれです。
その2語の位置を入れ替えて、Flight for Fightingにしている。感情をテーマにした映画で、心理学の専門用語をもじるというのが、いかにもこの作品らしいところです。
Ride and Prejudice Red Hairing The Puck Drops Here|元ネタ当てクイズ
この3曲は、元ネタを当てるゲームとして楽しめます。
Ride and Prejudice:ジェーン・オースティンのPride and Prejudice(高慢と偏見)。PをRに変えただけです。Red Hairing:red herring=(推理小説などで)読者を惑わせる偽の手がかり。herring(ニシン)をhairing(髪)に変えて、赤毛の要素を掛けています。The Puck Drops Here:The buck stops here.=「責任は私が取る」(トルーマン大統領の言葉として有名)。buckをアイスホッケーのpuckに置き換えています。
どれも、元の表現を知らないとダジャレだと気づけないタイプです。逆に言えば、曲名を1つ解くたびに英語のイディオムが1つ増えるということでもあります。
Anxious to Meet You Seeking Val-idation Done Track Mind
キャラクター名を仕込むタイプも健在です。
Anxious to Meet You:be anxious to meet youは「お会いするのが待ち遠しい」。anxiousは「不安な」と「切望している」の両方の意味を持つ単語で、そこにAnxiety(シンパイ)が掛かっています。Seeking Val-idation:validation(承認・お墨付き)の中に、登場人物Val(ヴァル)の名前がそのまま入っています。ハイフンで区切って見せているのが親切です。Done Track Mind:one-track mind=「一つのことしか頭にない状態」。oneをdoneに変えて、27曲目=エンドクレジット曲であることを示しています。
ほかにもTo Project and Disserveは米国の警察標語to protect and serve(守り、奉仕する)のもじり、Growing Up Is Hard to DoはNeil SedakaのBreaking Up Is Hard to Do、Glide and Joyはpride and joy(自慢の種)にglide(滑る)を掛けたもの、Fawn of a New Dayはdawn of a new day(新しい一日の夜明け)のダジャレです。
2作目 全27曲リストと元ネタ
| # | 曲名 | 元になっている英語 |
|---|---|---|
| 1 | Outside Intro | Inside Out を裏返した造語+intro |
| 2 | Go Team! | 応援の掛け声 |
| 3 | The Life of Riley | the life of Riley=気楽な暮らし |
| 4 | Thread the Needle | thread the needle=難所を切り抜ける |
| 5 | Riley Protection System | protection system=防護システム |
| 6 | Creating a Sense of Self | sense of self=自己意識 |
| 7 | Demo Day | demo=demolition(解体) |
| 8 | Ride and Prejudice | Pride and Prejudice(高慢と偏見) |
| 9 | Anxious to Meet You | be anxious to 〜=〜するのが待ち遠しい |
| 10 | Seeking Val-idation | validation=承認+Val |
| 11 | Sending Out an S.o.S. | S.O.S.=遭難信号 |
| 12 | Bloofy & Co. | 社名につける& Co. |
| 13 | Flight for Fighting | fight or flight=闘争・逃走反応 |
| 14 | Fawn of a New Day | dawn of a new day=新しい一日の夜明け |
| 15 | Return to Imagination Land | return to=〜へ戻る |
| 16 | To Project and Disserve | to protect and serve=米警察の標語 |
| 17 | What's the Big Idea? | 一体どういうつもりだ |
| 18 | Red Hairing | red herring=偽の手がかり |
| 19 | Recovering a Sense of Self | recover=取り戻す |
| 20 | Joyless | joyless=喜びのない+Joyがいない |
| 21 | The Puck Drops Here | The buck stops here.=責任は私が取る |
| 22 | A Mind at Freeze | a mind at ease=心穏やか/brain freeze |
| 23 | Growing Up Is Hard to Do | Breaking Up Is Hard to Do |
| 24 | Glide and Joy | pride and joy=自慢の種 |
| 25 | Every Messy, Beautiful Part of Her | messy=ぐちゃぐちゃな |
| 26 | Inside Outro | Inside Out+outro |
| 27 | Done Track Mind | one-track mind=一つのことしか頭にない |
なお、この読み解きは「英語として曲名を読むとこう読める」という説明であり、制作側が一曲ずつ由来を公表しているわけではありません。元ネタを推理する楽しみが残されている、と考えてください。
日本盤サントラでは、この言葉遊びが全部消える
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。日本盤のサウンドトラックでは、いま見てきた言葉遊びがひとつ残らず消えています。しかも1作目と2作目で、消え方の種類が違います。
1作目の日本盤は、英語をカタカナに写しただけ
1作目の日本盤は、曲名を訳さずカタカナに置き換える方式でした。
- BUNDLE OF JOY →「バンドル・オブ・ジョイ」
- RILED UP →「ライルド・アップ」
- DOWN IN THE DUMPS →「ダウン・イン・ザ・ダンプス」
音は残りますが、「赤ちゃん」も「カリカリしている」も「落ち込んでいる」も、日本語だけを見ている人には一切伝わりません。
2作目の日本盤は、意味だけを訳している
2作目は逆に、意味を汲んだ日本語の曲名が付けられました。ところが、こちらはこちらで言葉遊びが跡形もなく消えます。
| 英語題 | 日本盤の曲名 |
|---|---|
| Outside Intro | オープニング |
| Go Team! | 突き進め! |
| The Life of Riley | ライリーの毎日 |
| Thread the Needle | 針穴作戦 |
| Riley Protection System | ライリー保護システム |
| Creating a Sense of Self | ジブンラシサの花 |
| Demo Day | 解体だ! |
| Ride and Prejudice | 隠しごと |
| Anxious to Meet You | ついに会えた |
| Seeking Val-idation | あこがれのヴァル |
| Done Track Mind | エンドクレジット |
The Life of Rileyのイディオムは「ライリーの毎日」に、Ride and Prejudiceのオースティンは「隠しごと」に、Done Track Mindのone-track mindは「エンドクレジット」になりました。訳が悪いのではなく、この種の言葉遊びは原理的に訳せません。
ちなみにDemo Dayが「解体だ!」と訳されていることで、demoがdemolition(解体)の略だという読みが裏付けられます。日本語題が英語の読み解きのヒントになる、珍しいケースです。
だから「英語の曲名のまま」聴く価値がある
つまり、この作品の音楽の面白さの半分は、英語の曲名を英語のまま見た人にしか届かないということです。歌詞のない劇伴なのに、聴き方によって得られるものがここまで変わる作品は、そう多くありません。
日本版エンドソング|「愛しのライリー」と「プレゼント」
日本公開版だけに付けられた2曲についても、性格の違いを押さえておきましょう。
1作目はピクサー史上初の完全書き下ろし
1作目の日本版主題歌「愛しのライリー」は、DREAMS COME TRUEが本作のために書き下ろした新曲です。ディズニー/ピクサー作品の日本版主題歌として、本国の曲に日本語詞を付けるのではなく完全なオリジナル曲が用意されたのは史上初、と当時報じられました。
日本の劇場公開版では、併映短編と本編のあいだにこの曲のミュージックビデオが挟まれる形で上映されています。
公式の英語表記はITOSHINO RILEY (MY DARLIN' RILEY)
英語学習の観点から面白いのが、この曲に公式の英語表記が用意されていることです。日本盤サウンドトラックの曲目欄には、ITOSHINO RILEY (MY DARLIN' RILEY)と記載されています。
darlin'はdarlingの語尾を落とした形で、歌詞やカジュアルな会話でよく使われる崩し方です。My darling RileyではなくMy darlin' Rileyにすることで、少し砕けた温かい響きになります。「愛しの〜」という日本語の古風な言い回しを、darlin'一語で受けているのが上手いところです。
2作目は既存曲「プレゼント」が選ばれた
2作目のエンドソング、SEKAI NO OWARIの「プレゼント」は、1作目とは経緯が異なります。この曲は2015年にNHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲として制作された既存曲で、映画のために書き下ろされたものではありません。
メンバーのSaoriさんが、葛藤の多かった中学生時代の自分に贈りたい曲として詞を書き、レコーディングも中学校で行われたという楽曲です。高校入学を控えたライリーの物語とテーマが重なることから起用されました。
つまり、1作目=書き下ろし/2作目=既存曲からの選定という違いがあります。「どちらも日本版オリジナルの主題歌」と一括りにされがちですが、成り立ちはまったく別です。
英語音声で観ると、エンディングの聴こえ方が変わる
ここまで整理すると、こうなります。
- 日本語版のエンディング:日本のアーティストが歌う日本語のエンドソング
- 英語版のエンディング:作曲家によるオーケストラのエンドクレジット曲
2作目でいえば、27曲目のDone Track Mindは8分15秒もある大曲です。エンドクレジットを最後まで聴くつもりで席を立たないと、この曲の全体像は味わえません。
Disney+で英語音声のまま音楽を聴く方法(VPN不要)
結論として、この作品の音楽を英語のまま楽しむならDisney+がいちばん手軽です。本記事執筆時点(2026年8月)で、1作目・2作目ともDisney+日本で配信されていることを確認しました。
日本のアカウントのままEnglishに切り替えるだけ
Disney+は1つの作品に複数の音声・字幕トラックを持っており、再生画面の設定メニューからEnglishを選ぶだけで英語音声に切り替えられます。海外リージョンへ接続するVPNも、海外アカウントの新規作成も必要ありません。
- Disney+で「インサイド・ヘッド」または「インサイド・ヘッド2」を再生する
- 一時停止して設定(音声・字幕)のアイコンを開く
- 「音声」で
Englishを選ぶ
なお、公開されている作品ページには音声・字幕の言語一覧までは表示されません。選べるトラックは時期や視聴環境によって変わることがあるので、視聴前に再生画面の設定メニューで実際の表示を確認してください。端末別の詳しい手順はDisney+で英語音声・英語字幕に切り替える方法にまとめています。
エンドクレジットまで席を立たずに聴く
英語音声で観ると、エンディングで流れる曲そのものが変わります。日本語吹替では日本のアーティストの歌、英語音声ではオーケストラのエンドクレジット曲。同じ映画なのに、終わり方の余韻がまるで違うので、一度は両方を聴き比べてみてください。
ダウンロードして、曲の場面だけ繰り返す
Disney+のアプリにはダウンロード機能があります。Wi-Fi環境で落としておけば、通勤中でも英語音声のまま再生できます。本編を通しで観る時間がない日でも、Bundle of Joyが流れる冒頭の3分だけ聴き直すという使い方なら無理がありません。
好きな作品を英語で聴ける環境をひとつ用意しておくと、学習が習慣として続きます。まずはDisney+で、手元のアカウントの音声設定をEnglishに切り替えるところから試してみてください。
歌詞を使わずに曲名だけで英語を鍛える4つの方法
留学経験のない私がTOEIC990点・VERSANT76点(80点満点中)まで伸ばせたのは、机に向かう勉強よりも好きな作品を英語で何度も観るという習慣の比重が大きかったからです。この作品の音楽については、次の4つを実践してきました。
曲名を1つずつ辞書に入れる
いちばん地味で、いちばん効きます。riled up、memory lane、down in the dumps、red herring、one-track mind——曲名をそのまま英英辞典に入れるだけで、1曲につき1つはイディオムが増えます。
歌詞と違って曲名は短いので、心理的な負担がありません。51曲あるということは、51回チャンスがあるということです。
「元ネタは何か」をAIに投げる
私がいちばん効果を感じているのが、気になった英語をAIに投げて解説してもらう方法です。セリフなら「Inside Out script」で検索してスクリプトを探し、気になった一文をコピーしてAIに聞く。曲名なら、そのままAIに「これは何のもじりか」と尋ねます。
Nomanisone IslandやFawn of a New Dayのような辞書だけでは絶対に解けない曲名が、その場でほどけます。ただしAIの解説も間違うことがあるので、重要な語法は必ず辞書で裏を取る習慣を付けてください。
場面と曲名をセットで覚える
劇伴の強みは、曲名と映像が1対1で結びついていることです。Down in the Dumpsが流れるのは記憶のゴミ捨て場の場面、The Puck Drops Hereが流れるのはホッケーの場面。
単語帳でdown in the dumpsを覚えるより、「あの落ちていく場面の曲名だ」と思い出せるほうが圧倒的に強いというのが実感です。私自身、海外事業を担当していたころに口をついて出た表現は、たいてい映像とセットで覚えたものでした。
英語題と日本語題を突き合わせる
最後は、この記事で作った対応表をそのまま使う方法です。The Life of Rileyと「ライリーの毎日」を並べて、なぜイディオムが消えたのかを自分で説明してみる。
これは翻訳の練習であると同時に、「英語の表現がどこまで日本語に持ち込めるか」の感覚を養う訓練になります。作品を使った学習法の全体像はアニメで英語を学ぶ完全ガイドに、日常会話に持ち込める表現はインサイド・ヘッドの使える英語フレーズ集にまとめています。
インサイド・ヘッドの主題歌についてよくある質問
インサイド・ヘッドの主題歌は英語で何といいますか?
歌詞のある英語の主題歌は存在しません。本作の音楽はすべてインストゥルメンタルの劇伴で、1作目のサウンドトラックはBundle of Joyから始まる24曲、2作目はOutside Introから始まる27曲で構成されています。
日本版の主題歌は誰が歌っていますか?
1作目がDREAMS COME TRUE「愛しのライリー」、2作目がSEKAI NO OWARI「プレゼント」です。どちらも日本公開版だけに付けられたエンドソングで、英語版には収録されていません。
Bundle of Joyはどういう意味ですか?
a bundle of joyは「生まれたばかりの赤ちゃん」を指す英語の決まり文句です。bundleは「束・包み」で、直訳すれば「喜びのかたまり」。感情キャラクターのJoy(ヨロコビ)とも掛けられています。
2作目の音楽は誰が担当していますか?
Andrea Datzmanです。ピクサーの長編映画を単独で作曲した初の女性作曲家で、1作目ではスコア・コーディネーターとして参加し、作中のガムのCMソングTripleDent Gum Jingleを作曲していました。
英語版のエンドクレジットでは何が流れますか?
1作目は24曲目のThe Joy of Credits、2作目は27曲目のDone Track Mind(8分15秒)です。日本語版のように歌が流れるわけではありません。Done Track Mindはone-track mind(一つのことしか頭にない)をもじった曲名です。
この記事で歌詞は読めますか?
歌詞は掲載していません。楽曲の歌詞は著作権で保護されているため、本記事では曲名・作曲者・受賞歴・流れる場面・曲名に使われた英語表現に絞って解説しています。楽曲そのものはDisney+の本編や公式のサウンドトラックでお楽しみください。
まとめ|曲名を読むだけで、イディオムが51個ぶん手に入る
インサイド・ヘッドの主題歌について、要点を振り返ります。
- 英語版に歌モノの主題歌はありません。音楽はすべてインストゥルメンタルの劇伴で、1作目はMichael Giacchino(アニー賞の音楽賞受賞)、2作目はAndrea Datzman(ピクサー長編初の女性作曲家)が担当しました。
- 「主題歌」があるのは日本公開版だけ。1作目はDREAMS COME TRUE「愛しのライリー」(書き下ろし)、2作目はSEKAI NO OWARI「プレゼント」(既存曲からの選定)です。
- 全51曲の曲名は、
a bundle of joy(赤ちゃん)riled up(カリカリしている)memory lane(思い出の小道)red herring(偽の手がかり)one-track mind(一つのことしか頭にない)といった英語のイディオムや有名曲のもじりで埋め尽くされています。 - 日本盤サウンドトラックでは、この言葉遊びが1作目はカタカナ転写で、2作目は意訳で、どちらの方式でも完全に消えます。
歌詞を一行も読まなくても、曲名を並べるだけでこれだけの英語に触れられる。そういう映画は、そう多くありません。まずはDisney+で音声をEnglishに切り替えて、冒頭に流れるBundle of Joyの意味を思い出しながら観直してみてください。知っている作品の、知らなかった側面が、一度に開くはずです。