「等価交換」のあの冒頭ナレーション、英語では何と言うのか。そう思って検索した人は、たぶん途中で手が止まったはずです。サイトによって、載っている英文がまるで違う。しかもどのサイトも「英語版ではこう訳されています」という顔をして書いている。どれが本当なのか、まったく判断がつきません。
先に結論から言います。鋼の錬金術師には「英語版」が3系統あり、しかも冒頭ナレーションの訳し方が、その3系統で根本的に違います。 特に2003年版TVアニメの英語吹替と、2009年版『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(英題 BROTHERHOOD)の英語吹替は、同じ「等価交換」の説明でありながら、単語も文の数もほとんど共通していません。つまり「ハガレンの等価交換の英語」という問いには、そもそも1つの答えが存在しないのです。
この記事では、その3系統を最初にはっきり切り分けたうえで、エドワード・アルフォンス・ロイ・リザ・ヒューズ・イズミ・ホーエンハイム・スカーなど15キャラ・約45本の名言を、どの媒体の英文なのかを必ず添えて紹介します。逆に言えば、媒体を特定できなかった英文は英文としては出しません。趣旨だけを書きます。
筆者はTOEIC990点・VERSANT76点(80点満点中)を留学経験ゼロで取得し、前職では海外事業を担当していました。実務で翻訳のチェックをしていた経験から言えるのは、翻訳に「唯一の正解」はなく、あるのは「どういう制約の下で、何を優先した訳か」だけということです。ハガレンの英語版はその見本市のような作品で、読み比べると英語そのものの勉強になります。
なお、この記事で紹介する英語のセリフを実際の演技で聴いてみたい方に先にお伝えしておくと、日本のNetflixアカウントのまま作品ページを開いても、音声は日本語しか選べません(本記事執筆時点・2026年7月に実際に確認しました)。NordVPNでアメリカなど英語圏のサーバーに接続してからNetflixを開くと、英語音声・英語字幕付きの海外版カタログにアクセスできるようになります。 具体的な手順は記事の後半でくわしく説明します。
作品全体の英語(タイトルの意味、錬金術用語、キャラクター英語名など)については鋼の錬金術師は英語で何という?タイトルの意味から名言・キャラ名・視聴方法まで完全ガイドにまとめています。この記事はそこから「名言」の部分だけを取り出して、徹底的に深掘りしたものです。
Contents
まず押さえる:鋼の錬金術師の「英語版」は3系統ある
名言の英訳が割れる理由は、誰かが手を抜いたからではありません。訳を作った人が、実際に何組もいるからです。ここを理解しておくと、以降の話が一気に整理されます。
①2003年版TVアニメの英語吹替(Fullmetal Alchemist・全51話)
1つ目は、2003年10月4日から2004年10月2日までTBS系で放送された、最初のTVアニメ版の英語吹替です。全51話。英題はシンプルに Fullmetal Alchemist です。
この2003年版は、原作漫画がまだ連載途中だった時期に制作されたため、物語の後半が原作とは完全に別のオリジナル展開になっています。日本のファンの間で「旧ハガレン」と呼ばれているのがこのシリーズです。英語圏でも早い時期に吹替が作られたので、海外で最初に広まった「ハガレンの英語」はこの2003年版のものでした。ネット上に古くから流通している英語の名言が、たいていこの系統なのはそのためです。
②2009年版 BROTHERHOOD の英語吹替(Fullmetal Alchemist: Brotherhood・全64話)
2つ目は、2009年4月から放送された2作目のTVアニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の英語吹替です。全64話。英題は Fullmetal Alchemist: Brotherhood で、日本語タイトルには「BROTHERHOOD」という語が入っていないのがポイントです。日本語では「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」が正式名称で、英語圏で2003年版と区別するために Brotherhood が足されました。
こちらは原作漫画の結末までを描き切っており、英語圏で「ハガレンといえばこれ」と言われることが多いのはBROTHERHOODのほうです。声優も日本語版で入れ替わっており(ロイ・マスタングは2003年版が大川透さん、2009年版が三木眞一郎さん)、英語吹替もキャストと訳文が新しく作り直されています。
③VIZ Media の英語版コミック(全27巻/Fullmetal Edition 全18巻)
3つ目は、原作漫画の英語版です。出版元は北米の VIZ Media。VIZの公式サイトで確認したところ、本記事執筆時点(2026年7月)で以下の2系統が並んでいます。
- 標準版:
Fullmetal AlchemistVol.1〜27(日本語版の全27巻に対応) - Fullmetal Edition:Vol.1〜18(日本の「完全版」に相当するハードカバー版)
原作は荒川弘先生が「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載した作品で、VIZの公式作品ページにもその旨が明記されています。アニメの字幕・吹替とコミックは翻訳のプロセスがまったく別なので、同じセリフでも英文が違って当然です。
この記事のルール:媒体名を必ず添える。話数は書かない
以上を踏まえて、この記事は次のルールで書きます。
- 英文を出すときは、必ず「どの媒体の訳か」を添える。 添えられないものは英文を出さず、趣旨だけを書きます。
- セリフの登場話数は書きません。 日本語のまとめ記事には「第○話の名言」と書いてあるものが多いのですが、一次確認できないものを書くと誤りが固定化します。巻数については、日本語側の資料で巻が明記されているものだけを添えます。
- 英語の書き起こしは、有志が運営する英語圏の引用データベース(Wikiquote等)に記録されている文面を、複数のソースで突き合わせて採用しています。公式の字幕ファイルそのものを開いて照合したわけではないため、句読点や大文字小文字レベルの完全一致までは保証しません。 その代わり、どの媒体の系統に属する訳なのかは明示します。
「調べたけれど、ここまでしか分からなかった」と正直に書けることが、この手の記事のいちばんの価値だと思っています。
【本記事の目玉】「等価交換」の英訳は2003年版とBROTHERHOODでまったく違う
ここがこの記事のメインディッシュです。ハガレン最大の名文句である冒頭ナレーションを、3媒体すべてで並べます。
まず日本語側を確定させる(アニメ公式サイトのイントロダクション)
英語を比べる前に、日本語側の言い方を確定させておきます。2009年版アニメの公式サイト(hagaren.jp)のイントロダクションには、こう書かれています。
錬金術、それは「等価交換」の原則のもと、物質を理解、分解、そして再構築する、この世界で最先端の科学である。この錬金術において、最大の“禁忌”とされるもの「人体錬成」。
出典:鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 公式ホームページ「INTRODUCTION」
一方、2003年版のアニメで各話冒頭に流れていたナレーションは、これとは別の文面です。日本語のファンサイトや引用集でくり返し記録されている形は、概ね次の通りです。
人は何かの犠牲なしに、何も得ることはできない。何かを得るためには、同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則だ。その頃僕らは、それが世界の真実だと信じていた。
この時点ですでに、日本語のレベルで2つの別テキストが存在しているわけです。英語版もこれに対応して分岐します。
2003年版アニメ英語吹替のナレーション
まず2003年版の英語吹替。アルフォンスの声で、シリーズ序盤から中盤まで各話の冒頭に反復して流れる形で記録されています。
- 日本語(趣旨):人は何かの犠牲なしに、何も得ることはできない。何かを得るためには、同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則だ。その頃僕らは、それが世界の真実だと信じていた。
- 英語(2003年版アニメ英語吹替):"Humankind cannot gain anything without first giving something in return. To obtain, something of equal value must be lost. That is alchemy's first law of Equivalent Exchange. In those days, we really believed that to be the world's one, and only truth."
日本語の語順・区切りをほぼそのまま英語に移した、きわめて忠実な訳です。「人は」=Humankind、「犠牲なしに」=without first giving something in return、「同等の代価」=something of equal value、「等価交換の原則」=alchemy's first law of Equivalent Exchange。1対1で対応しているのが分かります。
BROTHERHOOD(2009年版)のナレーション
次にBROTHERHOOD。こちらは各話冒頭に流れる作品ナレーションとして、次の文面が記録されています。
- 日本語(趣旨):錬金術、それは物質を理解し、分解し、再構築する科学である。しかし万能ではなく、何もないところから何かを作り出すことはできない。何かを得るためには、それと同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則である。この法則に従い、錬金術師には禁忌が存在する——人体錬成。人の魂に等しい価値を持つものなど、あるはずがないからだ。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Alchemy: the science of understanding, deconstructing, and reconstructing matter. However, it is not an all-powerful art. It is impossible to create something out of nothing. If one wishes to obtain something, something of equal value must be given. This is the law of equivalent exchange, the basis of all alchemy. In accordance with this law, there is a taboo among alchemists: human transmutation is strictly forbidden. For what could equal the value of a human soul?"
見ての通り、2003年版と共通しているのは "something of equal value" という表現だけで、あとはほぼ別文です。冒頭の Alchemy: the science of understanding, deconstructing, and reconstructing matter. は、先ほど引用した公式サイトの日本語イントロダクション(物質を理解、分解、そして再構築する)と語順まで一致しています。つまりBROTHERHOOD版の英語は、2003年版の英語をベースにしたのではなく、2009年版の日本語ナレーションから新しく訳し直されたものだと考えるのが自然です。
VIZ英語版コミック 第1巻の書き出し
3つ目、原作漫画の英語版です。VIZ版『Fullmetal Alchemist』第1巻の書き出しとして、英語圏の読者引用でくり返し記録されているのは次の文面です。
- 英語(VIZ英語版コミック 第1巻):"Humankind cannot gain anything without first giving something in return. To obtain, something of equal value must be lost. That is alchemy's first law of Equivalent Exchange. In those days, we really believed that to be the world's one, and only, truth."
つまりVIZの英語版コミックと2003年版アニメ英語吹替は、ほぼ同文です。 これは重要な発見で、「ハガレンの等価交換の英語」としてネットに広く流通している英文は、BROTHERHOODの訳ではなく、コミック/2003年版アニメ系統の訳だということになります。BROTHERHOODしか観ていない人が同じ英文を探しても見つからないのは、当然だったわけです。
なお、この書き出しについては gain anything ではなく gain something と表記した引用も英語圏に流通しています。どちらも同じ引用集サイト内に併存している状態なので、本記事では anything / something のどちらが刷り本の表記かを断定しません。覚えるなら意味の変わらない without first giving something in return の部分を丸ごと押さえるのが実用的です。
3本を並べて分かる「訳の設計思想」の違い
3つを表にまとめます。
| 媒体 | 出だし | 文の数 | 人体錬成への言及 |
|---|---|---|---|
| VIZ英語版コミック 第1巻 | Humankind cannot gain anything... | 4文 | なし |
| 2003年版アニメ 英語吹替 | Humankind cannot gain anything... | 4文 | なし |
| BROTHERHOOD 英語吹替 | Alchemy: the science of understanding... | 7文 | あり(human transmutation is strictly forbidden) |
読み比べると、コミック/2003年版は「僕らの物語の回想」として語られていて、BROTHERHOODは「世界のルール説明」として語られていることが分かります。前者には we really believed(僕らは信じていた)という一人称の回想があり、後者には主語すらありません。代わりにBROTHERHOODは there is a taboo among alchemists(錬金術師には禁忌がある)と踏み込み、For what could equal the value of a human soul?(人の魂に釣り合うものなどあるだろうか)という反語で締めます。
筆者は前職で英文の翻訳チェックを担当していましたが、同じ原文でも「読者に何を先に理解させたいか」で訳文の構造は変わります。 ここでの違いはまさにそれで、回想として響かせたいのか、世界観のルールとして提示したいのかという狙いの差が、英文の骨格に出ています。 どちらが優れているという話ではありません。
"equivalent exchange" という英語そのものを解説する
せっかくなので、equivalent exchange という表現自体も見ておきましょう。
- equivalent(形容詞)=「同等の、等価の」。
be equivalent to 〜(〜に相当する)の形で日常的にもよく使います。例:One mile is roughly equivalent to 1.6 kilometers. - exchange(名詞)=「交換」。動詞なら
exchange A for B(AをBと交換する)。空港の両替所がCurrency Exchangeなのはこの語です。
つまり equivalent exchange は造語ではなく、普通の英単語2つをそのまま並べただけの表現です。ここが訳としてうまいところで、「等価交換」という漢字4文字の硬い響きを、英語でも硬さを保ったまま再現できています。
そして最重要フレーズが in return(見返りに、その代わりに)。without first giving something in return を直訳すると「先に見返りとして何かを差し出すことなしには」となります。ビジネス英語でも I helped him without asking for anything in return.(見返りを求めずに彼を助けた)のように頻出します。ハガレンの世界観を1つの前置詞句が支えている、と言ってもいいくらい重要な2語です。
【第2の目玉】「立って歩け 前へ進め」も3媒体で訳が違う
もう1つ、3媒体を比べる価値のある名言があります。エドワードがロゼに投げかける、あの一言です。
3媒体の英文を並べる
日本語原文は次の通りです。アニメイトタイムズの名言特集で第1巻のセリフとして紹介されています。
立って歩け 前へ進め あんたには立派な足がついているじゃないか
この英訳が、3媒体でこうなります。
| 媒体 | 英文 |
|---|---|
| VIZ英語版コミック | You need to figure that out on your own. Stand up and walk. Keep going forward. At least you have strong legs to take you there. |
| 2003年版アニメ 英語吹替 | You'll have to decide for yourself. Walk on your own. Move forward. You've got a good strong pair of legs, Rose. You should get up and use them. |
| BROTHERHOOD 英語吹替 | I can't tell you that... You have to figure it out. Stand up and walk. Keep moving forward. You've got two good legs. So get up and use them. You're strong enough to make your own path. |
3媒体で3通り。 しかもよく見ると、単に言い回しが違うだけではありません。
命令文の重ね方が3者3様
注目すべきは「立って歩け 前へ進め」という2つの命令文をどう処理したかです。
- VIZコミック:
Stand up and walk. Keep going forward.——日本語と同じく短い命令文2つ。 - 2003年版:
Walk on your own. Move forward.——「立って」を落とし、代わりにon your own(自分の力で)を足している。 - BROTHERHOOD:
Stand up and walk. Keep moving forward.——コミック版とほぼ同型だが、続く説明文が長い。
そして「立派な足がついているじゃないか」の処理も三者三様です。VIZは At least you have strong legs to take you there.(少なくとも、そこまで運んでくれる丈夫な足があるだろう)と to take you there という不定詞句で目的地を補い、2003年版とBROTHERHOODは You should get up and use them./So get up and use them.(立ち上がって使え)と行動の指示を1文追加しています。
さらにBROTHERHOODだけが You're strong enough to make your own path.(自分の道を切り開けるだけの強さが、君にはある)という日本語原文にはない一文を足しています。吹替は「口が動いている時間」に音を埋める必要があるため、余った尺を意味の補足で埋めることがよくあります。 これはその典型例と考えられます。
なぜ媒体で訳が変わるのか
理由は大きく3つです。
- 翻訳の主体が違う。 コミックの翻訳者、吹替の脚本家、字幕の翻訳者は別人です。同じ原文を渡されても、当然違う英文になります。
- 制約が違う。 字幕には「1秒あたり何文字まで」という文字数制限があり、吹替は口の動き(リップシンク)に合わせる必要があります。コミックは吹き出しの形に収めなければいけません。
- 狙いが違う。 原文の語順を尊重するのか、英語として自然に読ませるのか、キャラクターの口調を優先するのか。優先順位が違えば、最適解も違います。
「正解はどれか」ではなく「どの媒体の訳か」が正しい問いです。 これは筆者が実務で何度も痛感したことでもあります。
キャラ別 英語名言集①:エルリック兄弟とウィンリィ
ここからはキャラクター別に見ていきます。各キャラクターの英語表記も併記しますので、鋼の錬金術師のキャラクター英語名一覧とあわせて読むと理解が深まります。
エドワード・エルリック(Edward Elric)
主人公・エドワード。英語表記は Edward Elric、愛称は Ed です。
①「俺たちはちっぽけな人間だ」——2003年版とBROTHERHOODで訳が違う名言
ニーナの一件のあと、エドワードが自分たちの無力さを吐き出す場面です。ここも2つのアニメで訳が分かれます。
- 英語(2003年版アニメ英語吹替):"So I'll do anything in my power to get our bodies back, even if it means being the military's lapdog. ... 'Cause we're not gods. We're humans. Tiny, insignificant humans...who couldn't even save a little girl."
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"We may be called dogs of the military. We may even be cursed as devils. That doesn't matter. Al and I are still going to get our bodies back. ... I know we're not gods. We're human... WE'RE ONLY HUMAN! ...who can't even do anything to save one innocent little girl."
同じ「人間だ、ちっぽけな人間だ」という嘆きでも、2003年版は Tiny, insignificant humans(ちっぽけで取るに足らない人間) と形容詞2つで畳みかけ、BROTHERHOODは WE'RE ONLY HUMAN!(俺たちは人間でしかないんだ) と only 1語に集約しています。only human は英語の定型表現で「人間なんだから完璧じゃない」という含みを持ちます。BROTHERHOODの訳は英語として自然な言い回しに寄せ、2003年版は原文のニュアンスを形容詞で再現した、という違いです。
なお lapdog(膝に乗る小型犬=言いなりの手先)と dogs of the military(軍の犬)はどちらも「軍の狗」の訳で、後者のほうが日本語の直訳に近い形です。
②「等価交換だ。俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ」
物語の最後、エドワードがウィンリィに告げるプロポーズです。日本語のやり取りは第27巻のものとして紹介されています。
- 英語(VIZ英語版コミック):"It's Equivalent Exchange! I'll give you half of my life, so give me half of yours!"
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Equivalent exchange! I'll give half of my life to you, if you give half of yours to me!"
ここは訳のズレが微妙で面白いところです。コミック版は so(だから) でつないでいて「差し出すからくれ」という順接。BROTHERHOOD版は if(もし〜なら) でつないでいて「くれるなら差し出す」という条件文になっています。日本語の「〜やるから〜くれ」は順接にも条件にも読めるので、どちらの訳も間違いではありません。英作文の練習として、この2文を見比べる価値は高いと思います。
③「神を信じない俺たち錬金術師が、一番神に近い」
ロゼとの宗教問答での一節です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Alchemists are scientists... We don't believe in unprovable concepts like creators or gods... It's ironic, really. That through the application of science, we have in many ways been given the power to play gods ourselves..."
play God(神を気取る、神の真似事をする)は英語の慣用句で、遺伝子操作やAIの倫理を語る文脈でも頻出します。unprovable(証明できない)は prove に否定の接頭辞 un- と形容詞化の -able が付いた形で、単語の組み立てが分かりやすい例です。
④「ちびって言うな!」
シリアスな作品ですが、エドワードの身長ネタは英語版でも健在です。BROTHERHOOD英語吹替では "DON'T CALL ME LITTLE!"、2003年版では "WHO ARE YOU CALLING A RUNT SO TINY HE COULD ONLY BE SEEN WITH A MAGNIFYING GLASS, YOU JERK!"(虫眼鏡でしか見えないほど小さいチビって誰のことだ、この野郎!)という長い叫びが記録されています。
runt は「群れの中でいちばん小さい子」を指す語で、からかいの言葉としてかなり強い部類です。このネタは英語版でもキャラクターの識別記号として機能していて、runt pipsqueak shorty など複数の語が使い分けられています。 ちなみにエドワードの口癖「ふざけんな!」は、英語吹替では概ね "Stop jerking me around!"(俺を振り回すな)と訳されていると記録されています。
アルフォンス・エルリック(Alphonse Elric)
弟のアルフォンス。英語表記は Alphonse Elric、愛称は Al です。
①「不自由である事と不幸である事はイコールじゃない」
スカーに「錬金術のせいで不幸な体になったのに、まだ錬金術を信じるのか」と問われた場面の返答です。アニメイトタイムズでは第12巻のセリフとして紹介されています。
だけど不自由である事と不幸である事はイコールじゃない 哀れに思われるいわれは無いよ!
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"True, there are plenty of things about this body that are inconvenient... but it's nothing I can't live with... I don't need anyone's pity... least of all from you. My brother used alchemy to save my life... To regret the form I have now would mean not only rejecting alchemy but also turning my back on him... I believe in my brother, and I believe in alchemy. I will not lose faith... I want to believe!"
- 英語(英語版コミック系の引用として記録されている形):"This body comes with many inconveniences. But inconveniences don't make me miserable! There is no reason for you to pity me!"
比べると狙いの差がはっきりします。コミック系は inconveniences don't make me miserable(不便であることは、私を惨めにはしない) と、日本語の「不自由=不幸ではない」という等式の否定をそのまま構文で再現しています。一方BROTHERHOOD版は it's nothing I can't live with(付き合っていけないものじゃない) という口語表現に置き換え、さらに least of all from you(とりわけあんたにはね)という皮肉を足しています。
least of all は「とりわけ〜ではない」という否定の強調表現で、I don't want advice from anyone, least of all from him. のように使います。短い一言ですが、アルフォンスの怒りの向き先をはっきりさせる効果があり、吹替ならではの追加だと思います。
②「生きろ。生きて錬金術を学べ」
死を選ぼうとした兄を諌める場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Survival is the only way, Ed! Live on, learn more about alchemy! You can find a way to get our bodies back and help people like Nina. You can't do that by dying!"
Live on は句動詞で「生き続ける」。live 単体より「これからも続けて」という含みが強く出ます。Survival is the only way(生き延びることだけが道だ)という抽象名詞を主語にした一文が、命令文の前にクッションとして置かれているのも英語らしい構成です。
③「雨が顔に当たる感触が分からない」
鎧の体であることの喪失感を語る一節です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"I don't even get that much... without a body, I can't feel the rain hitting my face. That's something I miss...all the time. I wanna get my body back soon, Brother. I just wanna be human again."
feel the rain hitting my face は 知覚動詞 feel + 目的語 + 現在分詞 の形で、「雨が顔に当たっているのを感じる」という進行中の感覚を表します。feel the rain hit my face(原形)だと一瞬の出来事になるので、ここで現在分詞が選ばれているのは「ずっと感じ続けていたあの感触」を表すためです。 文法の教科書に出てくる知覚動詞の例文より、はるかに記憶に残る使用例だと思います。
ウィンリィ・ロックベル(Winry Rockbell)
機械鎧(オートメイル)技師のウィンリィ。英語表記は Winry Rockbell です。
①「等価交換の法則とかってバッカじゃないの? 半分どころか全部あげるわよ」
エドワードのプロポーズへの返事です。第27巻のセリフとして紹介されています。
- 英語(VIZ英語版コミック):"Why are all alchemists like this? You want half? I'll give you all of it!"
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Aw, c'mon. Do you have to treat everything like alchemy? The whole equivalent exchange thing is just nonsense! ... How about I just give you my whole life? Uh... maybe not all of it! 90.. maybe 80%? 75..."
ここでもコミック版と吹替版の性格差が出ます。コミック版は You want half? I'll give you all of it! と2文で決め切る、いわば名台詞型。BROTHERHOOD版は照れて数字を下げていく芝居(90%…80%…75%…)まで含めて訳しており、演技としての可愛らしさを優先しています。
The whole 〜 thing(〜っていうやつ全体、〜とかいうもの)は、対象をやや突き放して呼ぶときの口語表現です。The whole diet thing is stressing me out.(ダイエットとかいうやつ、もううんざり)のように使います。「等価交換の法則とかって」という日本語の「とかって」の投げやりさを、これ以上ないくらい正確に写し取った訳だと思います。
キャラ別 英語名言集②:東方司令部の面々
ロイ・マスタング(Roy Mustang)
焔の錬金術師、ロイ・マスタング。英語表記は Roy Mustang、二つ名は the Flame Alchemist です。
①「いかん、雨が降ってきたな」——ハガレン屈指の名場面
親友ヒューズの葬儀の帰り道、涙を隠すためのやり取りです。日本語のやり取りは概ね次の形で記録されています。
マスタング「——いかん 雨が降ってきたな」
ホークアイ「雨なんて降って…」
マスタング「いや、雨だよ」
- 英語(VIZ英語版コミック):Roy "I'm fine. ... Oh, no. It's raining." / Riza "It isn't raini--" / Roy "No. It's raining." / Riza "... Yes. It is. Let's go back. It's... getting cold."
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):Mustang "Yeah, I'm fine... except... it's a terrible day for rain." / Hawkeye "But... what do you mean? It's not raining..." / Mustang "Yes it is." / Hawkeye "Oh... so it is."
この場面は、3媒体の中でもっとも訳の差が大きい箇所のひとつです。コミック版は Oh, no. It's raining. と原文の「いかん、雨が降ってきたな」をほぼ直訳。対してBROTHERHOOD版の it's a terrible day for rain(雨には最悪な日だ) は、直訳から離れて英語の言い回しに寄せています。
It's a terrible day for 〜 は「〜するにはひどい日和だ」という天気の言い回しで、It's a beautiful day for a walk.(散歩日和だ)の裏返しです。日常表現の型を借りることで、「雨が降っているという嘘」を天気の世間話として自然に響かせている。 個人的には、これはかなり見事な訳だと思っています。
そして返しの Oh... so it is.(ああ…本当だ)。so it is は「本当にそうだ」と相手の言葉を受け入れる古風な言い回しで、ホークアイが上官の嘘に静かに乗る間合いを完璧に表現しています。
②「私は非力な人間だ。だから守れる者を守る」
部下たちへ向けた、マスタングの覚悟のスピーチです。第15巻のセリフとして紹介されています。近い趣旨の言葉は、ヒューズとの会話の中でも語られています。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"The power of one man doesn't amount to much. But however little strength I'm capable of... I'll do everything humanly possible to protect the people I love, and in turn they'll protect the ones they love. It seems like the least we tiny humans can do for each other."
ここでも in return の親戚である in turn(今度は、代わりに) が出てきます。in turn は「順番に、その結果として今度は」という意味で、因果や連鎖を示すときの必須表現です。amount to much(大したものになる)は否定形で使うのが定番で、It doesn't amount to much. は「大したことない」という決まり文句です。
なお、この直後にヒューズが返す一言も名場面です。"Sounds like a pyramid scheme. There's just one thing. If you hope to eventually protect everyone... then you'll have to figure out a way to stand at the top of the pyramid."(ねずみ講かよ。ただ1つ言うなら、全員を守りたいなら、そのピラミッドのてっぺんに立つ方法を考えないとな)。pyramid scheme は「ねずみ講」の英語です。
③「泥水をすすってでも前に進め」
エルリック兄弟に道を示す場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"If you believe the possibility exists for getting your bodies back, you should seek it out. Keep moving, whatever it takes. Even if the way ahead lies through a river of mud."
whatever it takes(何を犠牲にしてでも)は、決意を語るときの超頻出フレーズです。a river of mud(泥の川)は日本語の「泥水をすする」を映像的に置き換えた訳で、原文にない river という語を足すことで、越えるべき距離のイメージを出しています。
リザ・ホークアイ(Riza Hawkeye)
マスタングの副官、リザ・ホークアイ。英語表記は Riza Hawkeye です。
①「ならば地獄までお供します」
マスタングの問いへの答えとして記録されている一節です。
- 英語(VIZ英語版コミック):Roy "Will you follow me?" / Riza "Understood. If that is your wish, then even into hell."
even into hell(地獄の中へさえ)という前置詞句だけで応じる、極端に短い返答です。主語も動詞も省略されていることで、「言うまでもない」という含意が生まれています。英語は主語を省略しない言語だと習いますが、こういう応答の場面では平気で省略します。
②「私が貴方の背中を守る。道を踏み外したら撃ちます」
マスタングとホークアイの関係を決定づける一節です。
- 英語(VIZ英語版コミック):Roy "I want you to protect my back. Do you understand? To entrust my back to you means that you can shoot me from the back anytime. If I step off the path, shoot and kill me with those hands. You are qualified to do that."
entrust A to B(AをBに託す)、step off the path(道を踏み外す)、be qualified to 〜(〜する資格がある)。どれも比喩ではなく文字通りの意味で使われているのに、場面のおかげで一生忘れない語彙になります。 これがアニメで英語を学ぶ最大の利点だと筆者は思っています。
③「雨の日の貴方は使えません」
スカーとの初戦、雨の中でマスタングを制止する場面です。
- 英語(VIZ英語版コミック):"You're worthless when it's raining. Please stay back, Colonel!"
worthless(価値がない、役立たず)という強い語を上官に向けて言い切るのがホークアイらしいところです。この直後にハボックが "Oh, yeah. When it's as wet as this, you can't make a spark."(そうだ、これだけ濡れてたら火花が飛ばない)と補足する構成も、英語版でそのまま再現されています。
マース・ヒューズ(Maes Hughes)
准将・マース・ヒューズ。英語表記は Maes Hughes です。娘のエリシアは Elicia Hughes(英語版の引用では Elysia 表記も見られます)。
①「男ってのは、痛みを言葉にしないもんだ」
ウィンリィにエルリック兄弟のことを語る場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"In general, men prefer to let their actions speak instead of words. When they're in pain, they don't want to burden anyone with it, not if they can help it. They don't want anyone to worry about them. That's how they are. Even so, there may come a time when they'll ask for your help. And when they do, I know that you'll be there for them. Isn't that enough?"
let their actions speak(行動に語らせる)は Actions speak louder than words.(行動は言葉よりも雄弁)ということわざを踏まえた表現です。not if they can help it(できることなら、そうしたくない)は文法的にやや難しい定型句で、help が「避ける」の意味で使われています。I don't like it, but I can't help it.(好きじゃないけど、どうしようもない)の help と同じ用法です。
be there for someone(誰かのそばにいてあげる、支える)も日常会話の必須表現。ヒューズという人物の温度が、この短い句動詞ひとつによく出ています。
②「なぜ戦うのか? 死にたくないからだ」
イシュヴァール殲滅戦の回想で、マスタングに問われて答える場面です。
- 英語(VIZ英語版コミック):Roy "Why are you fighting?" / Hughes "It's simple. 'I don't want to die'. That's all."
装飾を一切していない3文です。It's simple. → 引用 → That's all. という組み立てが、答えの身も蓋もなさをそのまま形にしています。英語では、短く切ることそのものが強調になります。
キャラ別 英語名言集③:師匠・父・そして敵側
イズミ・カーティス(Izumi Curtis)
エルリック兄弟の師匠、イズミ・カーティス。英語表記は Izumi Curtis です。
①「私は主婦だ!」
正体を問われて名乗る、作品屈指のギャグにしてかっこいい一言です。
- 英語(VIZ英語版コミック):"I'M A HOUSEWIFE!!!"
3語だけ。housewife は「主婦」で、そのままです。英語圏でもこのセリフはミーム化していて、I'm a housewife だけで通じるレベルの知名度があります。
そして終盤、彼女はこの名乗りを裏返します。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"When people ask I say I'm a housewife... It does make sense... But today I've shed that particular disguise. I AM AN ALCHEMIST!"
shed(脱ぎ捨てる、落とす)は蛇が脱皮するときの動詞でもあり、disguise(変装、仮の姿)と組み合わせて「かぶっていた仮面を脱いだ」というニュアンスを作っています。I'm a housewife → I AM AN ALCHEMIST という対比構造が、英語だとより鮮明に見えます。
②「真理は残酷だが正しい」
自らの過去を語る場面のセリフとして、第11巻のものが紹介されています。日本語は次の通りです。
真理は残酷だが正しい
この一文について、筆者が媒体を特定できる英文を確認できなかったため、本記事では英文を掲載しません。 概ね「真理(Truth)は残酷だが、それでも正しい」という趣旨で訳されています。参考までに、作中に登場する「真理」は英語版では固有名詞として Truth と表記され、I am the world, I am the universe, I am god, I am truth, I am all, I am one, and I am you. という自己紹介の一文が記録されています。
③「一は全、全は一」
修行の課題としてエルリック兄弟に与えられる言葉です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"During this first stage, the use of alchemy is totally forbidden. 'One is all... and all is one...'"
英語でも One is all, and all is one. と、極限までシンプルな形になっています。日本語の「一は全、全は一」と語数まで対応しており、翻訳がいちばん楽なタイプの名言 と言えます。逆に言うと、こういう抽象命題は言語をまたいでも強度が落ちません。
ヴァン・ホーエンハイム(Van Hohenheim)
エルリック兄弟の父、ヴァン・ホーエンハイム。英語表記は Van Hohenheim です。
①「父親だからだよ」
最終決戦、自らの命を差し出そうとする場面です。日本語は第27巻のセリフとして紹介されています。
父親だからだよ 必要とか理屈とかじゃないんだ おまえ達が何より大事なんだ。幸せになってほしいんだ
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Because I'm his father. And that's the only thing that matters. You don't know how much you boys mean to me. I just want you to be happy. ... I'm sorry, Ed. I've lived long enough. Just give me this chance, to act like a father for once in my life."
that's the only thing that matters(大事なのはそれだけだ)が「必要とか理屈とかじゃないんだ」に対応しています。mean to someone(〜にとって意味がある、大切である)は You mean a lot to me.(君は僕にとってとても大事だ)の形で覚えると使いやすい表現です。for once in my life(人生で一度くらいは)も、この場面の切実さを支えています。
ちなみにエドワードの返しは "Shut up, you rotten father!"(うるさい、クソ親父!)。rotten(腐った)が「クソ〜」の訳語として当てられており、rotten father という組み合わせは英語としては一般的ではありません。訳者があえて日本語の悪態の型を残した箇所だと思われます。
②「人間は絆の中に幸せを見つける」
人間であることの意味を語る場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Don't call it breeding... That's where humans find happiness. We live for the bonds we form with friends and family members. That's who we humans are."
the bonds we form with 〜(〜と結ぶ絆)という関係詞節と、That's who we are.(それが私たちという存在だ)という締め方。That's who I am. は自己紹介やスピーチでも使える便利な一文です。
スカー/傷の男(Scar)
イシュヴァール人の復讐者、スカー。英語表記は Scar で、日本語の「傷の男」がそのまま英語の Scar(傷跡)になっています。
①「神の道に背きし錬金術師、滅ぶべし」
ショウ・タッカーを裁く場面のセリフとして、第2巻のものが紹介されています。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Foolish alchemists who turn their back on the ways of God... shall be punished."
turn one's back on 〜(〜に背を向ける、〜を見捨てる)は、日本語の「背く」とほぼ同じ発想の慣用句です。そして注目は shall。現代英語で shall は日常会話ではほとんど使われませんが、法律文書・契約書・聖書の翻訳などで「〜するものとする」という規定・宣告を表すときに残っています。 スカーの言葉が「裁き」として響くのは、この1語の選択によるところが大きいです。
②「憎しみの連鎖は終わらない」
エドワードとの対峙で放つ言葉です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"You'll kill me?? That would be fine with me, boy. Until one of us dies, this chain of hatred will continue. BUT REMEMBER THIS! IT WAS THE AMESTRIANS WHO FIRST PULLED THE TRIGGER IN THE WAR!"
this chain of hatred(憎しみの連鎖)は日本語の直訳ですが、英語としても自然に成立しています。It was 〜 who ... は強調構文で、「最初に引き金を引いたのは(ほかでもない)アメストリス人だ」と主語を強調する形です。文法書の例文よりずっと切実な使用例だと思います。
③「復讐に囚われた男が支配する世界は」
マスタングの復讐心について語る場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"What right do I have to stop someone from taking vengeance? But still, I shudder to think what kind of world a man held captive by his own hate would create once he becomes its ruler."
I shudder to think 〜(〜を考えるとぞっとする)は、そのまま覚えて使える定型表現です。held captive by his own hate(自らの憎しみに囚われた)という過去分詞句も、比喩として英語圏で通じる形になっています。
リン・ヤオ(Ling Yao)とランファン(Lan Fan)
シン国の第十二皇子リン・ヤオ。英語表記は Ling Yao、護衛のランファンは Lan Fan です。
①「王は民のために在る」
キング・ブラッドレイに突きつける、リンの信念です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"So you're the ruler of this land. The king exists for his people. Without his people, there is no king! King Bradley, you're not a true king! Not now or ever!"
exist for 〜(〜のために存在する)というシンプルな構文で、リンの王道観が端的に表現されています。Not now or ever!(今もこの先も違う)は、not ... ever を分解して畳みかける口語的な強調です。
なお、片腕を落としたランファンを想って叫ぶ第14巻のセリフ(「手ぶらで帰ったら…臣下に合わせる顔が無いだろうがッッ!!!!!!」)については、媒体を特定できる英文を確認できなかったため、本記事では英文を掲載しません。 概ね「腕まで失って尽くしてくれた家臣に、手ぶらで合わせる顔がない」という趣旨で訳されています。
②ランファン「王のいない民は道に迷う」
自らを置いていくよう頼む場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"A king is no king without his people, but a people without their king would be lost as well. You can't do that to them... My lord, think of our clan... You must live for their sake."
A is no A without B(BなくしてAはAではない)という対句と、for one's sake(〜のために)という前置詞句。リンの The king exists for his people. と対になる構造で、英語でも対句として響くように訳されています。
グリード(Greed)
「強欲」のホムンクルス、グリード。英語表記は Greed で、そのまま「強欲」の意味の英単語です。
①「この世の全てが欲しい」
第7巻のセリフとして紹介されている、グリードの自己紹介です。
金も欲しい! 女も欲しい! 地位も! 名誉も!! この世の全てが欲しい!!!
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"See, I'm Greed, I want everything you can think of. Money, women, power and sex. Status, glory..."
everything you can think of(思いつく限りのもの全部)という言い方が秀逸です。日本語の「この世の全て」を everything in the world と直訳せず、聞き手の想像力に投げ返す形にしています。名詞を並べる列挙も、日本語の「金も、女も、地位も、名誉も」というリズムをそのまま英語に持ち込んでいます。
②「不死の体ってのはどんな気分だ」
アルフォンスを誘拐した際の問いかけです。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"An individual soul transmuted- and bound to an object? Sounds like that's the perfect recipe for immortality to me."
the perfect recipe for 〜(〜にうってつけの処方箋、〜を作る完璧なレシピ)は比喩表現で、a recipe for disaster(災難のもと)という定型句のバリエーションです。
オリヴィエ・ミラ・アームストロング(Olivier Mira Armstrong)
ブリッグズ要塞の少将。英語表記は Olivier Mira Armstrong です。※英語版の引用の中には Olivia Mira Armstrong と綴られたものも見られるため、両方の綴りで検索するのが確実です。
①「ここでは強い者だけが生き残る」
ブリッグズを訪れたエドワードへの第一声です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"I don't care about letters. The ideas and opinions of others don't affect me. I decide with my own eyes. Enter, Fullmetal Alchemist. I'll warn you, I don't play around. This is the mountain fortress of Briggs. Only the strong survive here."
Only the strong survive.(強い者だけが生き残る)は the + 形容詞 で「〜な人々」を表す用法の代表例です。the rich(富裕層)、the young(若者たち)と同じ形。短い一文ですが、文法的にはしっかり教材になります。
②「戦場で性別や血統を気にするな」
マイルズを叱責する場面です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"Race, lineage, gender, rank... Worrying about that shit in battle does nothing but increase casualties. We absolutely cannot lose Briggs. No matter what happens, we must stay united! Never let your resolve waver! We stand together as ONE ARMY!"
do nothing but 〜(〜する以外に何もしない=〜するだけだ)という構文と、let your resolve waver(決意を揺らがせる)という言い回し。waver(揺れる、ぐらつく)は感情や決意に対して使う動詞で、wave(波)と語源を共有しています。
キング・ブラッドレイ(King Bradley)
アメストリス軍の最高指導者にして「憤怒」のホムンクルス。英語表記は King Bradley です。
①「だが妻だけは自分で選んだ」
第20巻のセリフとして紹介されている、ブラッドレイの人間性が垣間見える言葉です。
「家族ごっこ」 確かにそうだ あれは上に与えられた「息子」だ 息子だけではない「大統領の座」も「部下」も「力」も全て与えられた いわば権力者ごっこだ だが妻だけは自分で選んだ
この一節について、筆者が媒体を特定できる完全な英文を確認できなかったため、本記事では英文を掲載しません。 概ね「息子も、地位も、部下も、力もすべて与えられたものだ。だが妻だけは自分で選んだ」という趣旨で訳されています。
②「人ひとりの命の重さは、一人ぶんでしかない」
イシュヴァールの長との対話です。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"How arrogant of you. Do you sincerely believe that your single life is equivalent to the remaining multitude of your followers? The life of any individual human is only worth one life. That's all. Nothing more, and nothing less."
ここで再び equivalent が登場します。等価交換の equivalent と同じ単語が、命の重さを値踏みする文脈で使われているわけです。Nothing more, and nothing less.(それ以上でもそれ以下でもない)は、断定を締めるときの決まり文句です。
③「戦場に出る覚悟」
ヒューズの死をめぐるマスタングとのやり取りです。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"The moment a soldier dons his uniform, he accepts the reality that he might be buried in it."
don(身に着ける)は doff(脱ぐ)と対になる古風な動詞で、日常会話ではまず使いません。あえて硬い語を選ぶことで、軍の最高指導者の口調を作っているわけです。be buried in it(それを着たまま埋葬される)という言い換えも冷たくて効いています。
お父様(Father)とエンヴィー(Envy)
黒幕である「お父様」は、英語版でもそのまま Father です。「フラスコの中の小人」は Homunculus in the Flask と訳されます。
①お父様「知識は何よりも宝になる」
第19巻のセリフとして紹介されている、ホーエンハイムへの言葉です。
知識は何よりも宝になる そして重荷にならない 生きていくための力だ
この一節についても、媒体を特定できる英文を確認できなかったため英文は掲載しません。 概ね「知識は最高の財産であり、重荷にはならない。生きるための力だ」という趣旨で訳されています。
②エンヴィー「お前たち人間が羨ましい」
エンヴィーの本質を突く場面のセリフです。英語表記の Envy は「嫉妬・羨望」の意味で、名前そのものがこの感情を表しています。 英語圏の読者は名前を見ただけで結末の意味を先取りできる構造になっているわけです。
エドワードとの口論で放つ言葉も記録されています。
- 英語(2003年版アニメ英語吹替):"But I can never forgive you... and there'll never be a time when I'm able to forgive you, for carrying that bastard's blood in your veins!"
in your veins(お前の血管の中に=お前の血に)という言い回しで、It runs in my veins.(それは私の血に流れている)のように使います。there'll never be a time when 〜(〜する時など決して来ない)という関係副詞節も、憎悪の永続性を表すのにぴったりの構文です。
最終話・最終巻の一文:「鋼のような心」は英語でどう訳されたか
物語を締めくくるエドワードの独白は、ハガレンという作品のテーマそのものです。日本語は概ね次の形で記録されています。
痛みを伴わない教訓には意義がない。人は何かの犠牲なしには何も得ることはできないのだから。しかし、その痛みに耐え、乗り越えた時、人はいかなる苦難にも打ち勝つ、強靭な心を手に入れる。そう、鋼のような心を。
これがBROTHERHOODの英語吹替では、シリーズ最後のセリフとしてこう記録されています。
- 英語(BROTHERHOOD 英語吹替):"There's no such thing as a painless lesson. They just don't exist. Sacrifices are necessary. You can't gain anything without losing something first, although if you can endure that pain and walk away from it, you'll find that you now have a heart strong enough to overcome any obstacle. Yeah, a heart made fullmetal."
最後の a heart made fullmetal が、この作品のタイトル回収です。fullmetal は本来「全金属製の」という意味で、Fullmetal Alchemist(鋼の錬金術師)というエドワードの二つ名から取られています。a heart made of metal(金属でできた心)ではなく a heart made fullmetal(鋼にされた心)と言い切っているのがポイントで、素材の説明ではなく「鍛えられて鋼になった」という変化を表しています。
そして You can't gain anything without losing something first.(先に何かを失うことなしには、何も得られない)。第1話の冒頭ナレーションで語られた Humankind cannot gain anything without first giving something in return. と、gain anything without 〜 の骨格が一致しています。 64話かけて、同じ構文に戻ってきているわけです。英語でもこの円環がきれいに成立しているのは、翻訳の手柄だと思います。
なお、原作漫画版の最終ページの英訳は、英語圏の引用集では第1巻冒頭とセットで語られることが多く、BROTHERHOODと完全に同じ英文ではありません。 「痛みを伴わない教訓には意義がない」の部分は、コミック系の引用では A painless lesson is one without any meaning. や Teachings that do not speak of pain have no meaning. といった形が記録されています。ここも媒体で揺れる箇所です。
名言から学ぶ英語表現・文法ポイント6選
ここまで紹介した名言の中から、実際の会話や仕事でも使える表現を6つ取り上げます。
"in return"(見返りに)— 等価交換を支える2語
冒頭ナレーションの without first giving something in return に登場した in return(見返りに、その代わりに)は、ハガレンという作品を1つの前置詞句で言い表しているような表現です。
He helped me without asking for anything in return.(彼は見返りを求めずに助けてくれた)In return for your support, we'll offer a discount.(ご支援のお返しに、割引をご提供します)
ビジネスメールでも In return, we would like to ask for 〜 の形でよく使います。「等価交換」という作品テーマを覚えるついでに、実務で使える定型句が手に入る のがハガレンで英語を学ぶお得なところです。
命令文を重ねて勢いを出す
Stand up and walk. Keep moving forward. のように、短い命令文を並べると英語は一気に力強くなります。 日本語の「立って歩け 前へ進め」も同じ構造なので、この名言は日英で構造がぴったり重なる珍しい例です。
応用として、Keep 〜ing(〜し続けろ)は覚えておくと便利です。Keep going.(続けて)、Keep trying.(諦めるな)、Keep moving.(動き続けろ)。スポーツの応援からプレゼンの励ましまで、使える場面が非常に広い形です。
"It's a terrible day for rain." — 直訳では消えるニュアンス
マスタングの it's a terrible day for rain(雨には最悪な日だ)は、直訳では絶対に出てこない訳です。原文の「いかん、雨が降ってきたな」を Oh no, it's starting to rain. と訳しても意味は伝わりますが、天気の世間話としての自然さが出ません。
It's a 〜 day for ... は日常表現の型です。
It's a beautiful day for a walk.(散歩日和ですね)It's a bad day for driving.(運転には向かない日だ)
「英語らしい型に流し込む」という翻訳の技術が、いちばん分かりやすく現れている名訳だと思います。
"I don't need anyone's pity." — pity の使い方
アルフォンスの I don't need anyone's pity(誰の同情もいらない)に出てくる pity は、日本人が使い方を間違えやすい単語です。
pity は「かわいそうに思う」という上から目線の同情を含みます。相手を励ますつもりで I pity you. と言うと、「気の毒な人だね」と見下したニュアンスになりかねません。共感を伝えたいときは I'm sorry to hear that. や That must be hard. を使うのが無難です。
一方 What a pity.(それは残念だ)は物事に対する感想なので問題ありません。人に向けるか、状況に向けるかで印象がまったく変わる単語です。
"I'll give half of my life to you" — 交換を言葉にする型
エドワードのプロポーズ、I'll give half of my life to you, if you give half of yours to me. は、交換条件を英語で述べるときの基本形そのものです。
give A to B(AをBに与える)if 〜(もし〜なら)yours(= your life。所有代名詞で繰り返しを避ける)
特に3つ目の half of yours がポイントで、half of your life と繰り返さずに yours で受けています。英語は同じ語の繰り返しを嫌う言語なので、この所有代名詞の使い方は英作文で必ず身につけたいところです。
短縮形とキャラの口調(gonna / 'cause / ain't)
英語吹替では、キャラクターの口調が短縮形の量でコントロールされています。
- エドワード:
'Cause we're not gods.I wanna get my body back.——because→'cause、want to→wannaと崩す - キング・ブラッドレイ:
The moment a soldier dons his uniform—— 短縮形を使わず、donのような古風な動詞を選ぶ - スカー:
shall be punished—— 宣告調のshall
同じ英語でも、崩し方でキャラクターの階層や年齢が表現されているわけです。リスニング教材としてハガレンが優秀なのは、この差が大きいからでもあります。日常会話を学びたいならエドワード、フォーマルな英語に慣れたいならブラッドレイやオリヴィエのセリフを聴くとよいでしょう。
鋼の錬金術師を英語音声・英語字幕で観る方法
ここまで紹介してきたのは、あくまでテキストとしての英訳です。実際の演技で聴くと、テキストだけでは分からない発見が山ほどあります。
日本のNetflixの音声欄を実際に確認した結果
まず現状の確認からです。本記事執筆時点(2026年7月)で、Netflixの日本版の作品ページ(鋼の錬金術師 Fullmetal Alchemist=2009年放送のシリーズ)を実際に開いて音声欄を確認したところ、表示は次のようになっていました。
- 音声:日本語[オリジナル] のみ
- 字幕:日本語 のみ
つまり、日本のNetflixアカウントのままでは、鋼の錬金術師を英語音声・英語字幕で観ることはできません。作品によっては日本リージョンにも英語音声が入っていることがあるので、テンプレートではなく実際にこの作品のページを確認しました。結果は上記の通りでした。
同じく本記事執筆時点で、配信状況の集計サイトで日本の配信サービスを調べると、Netflix・Hulu・U-NEXT・Prime Video・ABEMAなど9サービスで視聴できますが、言語表記はいずれも日本語のみでした。アニメ公式サイトの配信情報欄に並んでいるサービス(DMM TV、dアニメストア、U-NEXT、Netflix、アニメタイムズなど)も同様です。
なお、この確認は作品ページの詳細表示にもとづくもので、プレーヤーの音声メニューそのものを開いたわけではありません。またNetflixの公式ヘルプは「シーズンごとに音声・字幕の提供元が異なる場合がある」と案内しているため、タイトル単位の表示から全話の可否を断定することはできません。 その前提でお読みください。
英語圏リージョンなら英語音声で観られる
一方、アメリカのリージョンで同じ作品を調べると状況はまったく変わります。本記事執筆時点(2026年7月28日)で配信状況の集計サイトが表示していた米国の視聴可能サービスは、次の通りでした。
- Netflix(広告つきプランを含む)
- Hulu
- Crunchyroll(Amazonチャンネル経由を含む)
- 広告つき無料サービス(Amasian TV)
しかも一部サービスの言語欄には English, Japanese や English, Spanish, Japanese, Portuguese という表記が出ており、英語音声・英語字幕が用意されていることが確認できます。Crunchyrollについては、2016年10月に同社が自社ニュースで英語吹替版の配信開始を告知しています。
つまり「英語版が存在しない」のではなく、「日本のリージョンからは選べない」というだけの話です。
NordVPNを使う3ステップ
ここでVPNの出番になります。仕組みは単純です。
- NordVPNでアメリカなど英語圏のサーバーに接続する。 アプリで国を選ぶだけです。
- その状態で、普段お使いのNetflixアプリ/ブラウザをそのまま開く。 新しくアカウントを作る必要はありません。
- 海外版のカタログが表示され、音声メニューに English が現れる。 あとは英語音声+英語字幕を選ぶだけです。
ポイントは、VPN接続がこの視聴方法の前提条件だということです。VPNなしで日本からアクセスすると、先ほど確認した通り日本語音声しか選べません。ここを曖昧にしている解説記事が多いので、はっきり書いておきます。
NordVPNはVPNサービスの中でも利用者が多く、日本語のアプリと日本語サポートがあるため、VPNを初めて使う人でも迷いにくいのが利点です。筆者もアニメの英語版を確認する用途で日常的に使っています。
より詳しい比較や、Crunchyroll・英語版Blu-rayといった他の選択肢については鋼の錬金術師を英語で見る方法にまとめていますので、あわせてご覧ください。
英語版コミックという選択肢
音声にこだわらないなら、VIZ Media の英語版コミックを読むという手もあります。本記事執筆時点でVIZの公式サイトに並んでいるのは、標準版 Vol.1〜27(日本語版の全27巻に対応)と、Fullmetal Edition Vol.1〜18(日本の完全版に相当)です。
コミックの利点は、自分のペースで止められることと、吹替では尺の都合で削られる情報が残っていることです。この記事で見てきた通り、コミック版の訳は原文に忠実な傾向があるので、「日本語のあのセリフが英語でどうなったか」を確かめる用途にはコミックのほうが向いています。逆に、生きた英会話のリズムを身につけたいなら吹替です。目的に応じて使い分けるのが賢いやり方です。
名言を英語学習に活かす3つの方法
最後に、筆者が実際にやっていた方法を3つ紹介します。留学経験ゼロでTOEIC990点・VERSANT76点(80点満点中)まで到達した過程で、いちばん効いたのがこの3つです。
同じエピソードを繰り返し「聴く」
まず基本にして最強なのが、同じエピソードを何度も繰り返し聴くことです。
多くの配信アプリにはダウンロード機能とバックグラウンド再生機能があります。これを使って、通勤や散歩の時間に同じ回を音声だけで流すのがおすすめです。1回目は話の流れを追うだけで精一杯でも、3回目には聞き取れる単語が増え、5回目にはセリフの切れ目が分かるようになります。
ハガレンが教材として優秀なのは、セリフの密度が高く、かつ同じキーワードが何度も出てくるからです。equivalent exchange Philosopher's Stone human transmutation State Alchemist といった語は作品を通じて何百回と登場するので、聴いているうちに勝手に定着します。「覚えよう」と思わなくても、繰り返し出てくる語は勝手に入ってくる のがアニメ学習の強みです。
スクリプト×AIで自分専用の解説を作る
次に、筆者がいちばん重宝していたのがスクリプト(英語セリフの書き起こし)とAIの組み合わせです。
手順はこうです。
- 英語で
Fullmetal Alchemist Brotherhood scriptのように検索し、英語セリフの書き起こしを探す - 気になったセリフをコピーする
- ChatGPTなどのAIに「このセリフのニュアンス・文法を解説して」と投げる
これをやると、自分がつまずいた箇所だけの、自分専用の解説が手に入ります。市販の教材と違って、すでに知っている表現の解説を読まされる無駄がありません。
例えば、この記事で取り上げた not if they can help it のような表現は、辞書を引いても意味がつかみにくいものです。AIに「この help はどういう意味ですか」と聞けば、can't help it(どうしようもない)と同じ用法だと即座に教えてくれます。自分が引っかかったポイントをその場で解消できるので、学習の摩擦がほとんどゼロになります。
なお、この記事の名言部分の書き起こしについても英語圏のデータベースを突き合わせて確認しましたが、ネット上のスクリプトはファンによる書き起こしが多く、公式の字幕と完全一致するとは限りません。学習素材として使うぶんには十分ですが、引用として人に見せるときは出典に注意してください。
「勉強」にしないのがいちばん続く
3つ目は精神論のようですが、実はいちばん大事です。アニメで英語を学ぶ最大の利点は、「勉強している感」がないことです。
英語のリスニング教材が続かない理由の大半は、内容に興味が持てないことにあります。その点、ハガレンのようにすでに何度も観た作品なら、話の展開を知っているぶん、英語そのものに集中できます。 「次に何が起きるか」を推測する労力がゼロになるので、脳のリソースを丸ごと音の聞き取りに回せるのです。
しかも名言というのは、短くて、感情が乗っていて、記憶に残りやすいという教材としての理想形をしています。Stand up and walk. Keep moving forward. のような一文は、意味も文法も一度で頭に入りますし、何より口に出したくなります。
英語×アニメ学習が実際にどのくらい効果があるのかについては、英語×アニメ学習は効果ある?TOEIC990・元海外事業担当が解説で筆者の実体験ベースに書いています。
まとめ|鋼の錬金術師×英語をもっと深掘りしたい人へ
この記事では、鋼の錬金術師の名言・セリフを15キャラ・約45本、どの英語版の訳なのかを必ず明記したうえで紹介してきました。改めて要点を整理します。
- ハガレンの英語版は3系統ある:2003年版アニメ英語吹替/BROTHERHOOD(2009年版)英語吹替/VIZ Media の英語版コミック
- 「等価交換」の冒頭ナレーションは、2003年版とBROTHERHOODでまったく別の英文。共通するのは
something of equal valueという表現だけ - VIZ英語版コミックと2003年版アニメの訳はほぼ同文。ネットに広く流通している英文は、この系統のもの
- 「立って歩け 前へ進め」も3媒体で3通り。BROTHERHOODだけが原文にない一文を足している
in returnonly humanplay Godshallpityなど、名言を通じて実務でも使える表現が身につく
そして、この記事で守ったルールがもう1つあります。媒体を特定できなかった英文は、英文としては出さないということです。イズミの「真理は残酷だが正しい」、リンの第14巻のセリフ、ブラッドレイの「だが妻だけは自分で選んだ」、お父様の「知識は何よりも宝になる」——これらは日本語では確実に存在する名言ですが、どの英語版の訳なのかを特定できなかったため、趣旨だけを書きました。 分からないことを分からないと書けるかどうかが、名言まとめ記事の信頼性を決めると考えています。
鋼の錬金術師×英語というテーマの全体像(タイトルの意味、錬金術用語、キャラクター英語名、視聴方法など)をまとめて知りたい方は、鋼の錬金術師は英語で何という?完全ガイドをご覧ください。
また、以下のテーマについても記事をご用意しています。
- 鋼の錬金術師を英語音声・英語字幕で観る具体的な手順とサービス比較:鋼の錬金術師を英語で見る方法
- エドワードからホムンクルスまでの英語表記を一覧で確認したい方:鋼の錬金術師 キャラクター英語名一覧
他作品の名言の英訳に興味がある方は、進撃の巨人の英語名言・セリフ集や呪術廻戦の名言・セリフ英語版まとめもあわせてどうぞ。どちらも同じく、出典媒体を明記する方針で書いています。
最後にもう一度。この記事で紹介した英文は、あくまで文字としての訳です。マスタングの it's a terrible day for rain が、実際にどんな声の震え方で発音されているのか。イズミの I AM AN ALCHEMIST! がどれだけの音量で叫ばれているのか。それはテキストでは絶対に分かりません。 ぜひ一度、ご自身の耳で確かめてみてください。まずは推しキャラの名言からで構いません。