「ブルーロックに出てくる『ボランチ』『ロスタイム』『エゴ』『武器』って、英語だと何て言うんだろう?」——結論からお伝えすると、ボランチは defensive midfielder、ロスタイムは stoppage time、エゴは ego、武器は "weapons" です。ここで気づいていただきたいのが、日本のサッカー中継で当たり前に使っているカタカナ語には、そのまま英語にしても通じないものが驚くほど多いという事実。しかもブルーロックの英語版で使われている訳語と、実際のプレミアリーグ中継で飛び交う競技英語は、ぴったり一致しない箇所があります。
そこでこの記事では、①日本語 ②ブルーロック英語版(Kodansha USA公式・Crunchyroll・公式ファンWiki)での訳語 ③IFAB競技規則や英語圏で実際に使われる表現、という3列を並べた対照表を作りました。「ポジション」「シュート・パス・ドリブル」「ゴールと実況スラング」「戦術」「ルール・反則・時間」「ピッチと用具」「掛け声」「作品独自用語」「キャラの武器」の9カテゴリ、合計170語以上です。気になるカテゴリから拾い読みしていただいて構いません。
私は留学経験がないまま、アニメ・海外ドラマ、そして海外サッカーの英語中継で英語を身につけ、TOEIC990点・VERSANT76点(80点満点中)を取得しました。英語版アニメで用語の使われ方を耳で確かめたい方に先にお伝えすると、NordVPNでアメリカなど英語圏のサーバーに接続してから、いつも通り配信アプリを開くと、英語音声・英語字幕で視聴できるようになります。 VPN接続は英語音声で観るための前提なので、手順は記事後半で紹介します。作品全体の英語トピックはブルーロックは英語で何という?完全ガイドにまとめています。
Contents
- 1 ブルーロックの用語を英語で読む前に|押さえるべき3つの前提
- 2 【一覧表】ポジションの英語|ボランチ・サイドバックは英語で通じない
- 3 【一覧表】シュート・パス・ドリブルの英語|「ナイスシュート」は英語にならない
- 4 【一覧表】ゴールを決める・実況スラングの英語|screamer・golazo・clean sheet
- 5 【一覧表】戦術用語の英語|プレス・ビルドアップ・カウンター
- 6 【一覧表】ルール・反則・時間の英語|ロスタイムは完全な和製英語
- 7 【一覧表】ピッチ・用具・チーム運営の英語|スパイクは cleats か boots
- 8 【一覧表】ピッチ上の掛け声・コーチングコールの英語
- 9 【一覧表】ブルーロック独自用語の公式英訳|エゴ=ego、武器="weapons"
- 10 【一覧表】キャラクターの「武器」は英語で何という?
- 11 各話サブタイトルの英題から学ぶサッカー英語|「超連動」=Super Link-Up Play
- 12 同じ用語なのに英語が2通り|Neo Egoist League と Neo-Egoist League
- 13 英語版アニメ・漫画で用語の「実際の使われ方」を確かめる方法
- 14 サッカー用語で英語を伸ばす【YOSHI流】
- 15 まとめ
ブルーロックの用語を英語で読む前に|押さえるべき3つの前提
結論として、表を読む前に「用語は3層に分かれる」「サッカー英語は英米で入れ替わる」「出典の格付けを意識する」の3点を頭に入れておくと、一気に見通しが良くなります。
用語は「そのまま通じる語」「意味がズレる語」「日本にしかない語」の3層
サッカーのカタカナ用語は、英語との距離で3層に分かれます。そのまま通じる語(striker、offside、hat-trick)、意味や品詞がズレる語(シュート→shot、トラップ→first touch、センタリング→cross)、そして英語には存在しない日本独自の語(ボランチ、サイドバック、ロスタイム)。「カタカナだから英語だろう」と思って口に出すと通じないのは、真ん中と3層目です。本記事の表では「○(通じる)」「△(使い方に注意)」「✕(英語では通じない)」の判定を付けました。同じことをバレーボールでやったハイキュー バレーボール用語の英語一覧もあります。
サッカー英語は英米で入れ替わる/この記事の出典ルール
サッカーは英米で単語そのものが入れ替わる競技で、競技名からして soccer(米・豪)と football(英)に割れます。
| 日本語 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| サッカー | football | soccer |
| ピッチ | pitch | field |
| タッチライン | touchline | sideline |
| ユニフォーム | kit | uniform |
| スパイク(靴) | boots | cleats |
| 監督 | manager | head coach |
| 無失点 | clean sheet | shutout |
| 試合 | match | game |
| 延長戦 | extra time | overtime |
| 0点 | nil("two-nil") | zero / nothing |
| 得失点差 | goal difference | point differential |
ブルーロックの英語版はアメリカ市場向けなので soccer が基本、プレミアリーグ中継では football しか出てきません。そしてもう一つ、本記事でいちばん大事にしているのが「その英語はどの媒体のものか」を必ず書くというルール。優先順位は①Kodansha USA公式(英語版コミックの版元。各巻の公式あらすじ=事実上の公式訳語)、②Crunchyroll公式、③作品公式ファンWiki(ファン運営なので非公式訳が混ざる)、④英語版Wikipediaの順です。同じ語でも媒体で訳が違うため、公式訳とファンの訳を混ぜて書くのは誠実ではありません。表の出典列に媒体を明記します。競技英語の側はIFAB競技規則公式、英語版Wikipediaの用語集、Britannicaを根拠にしています。
【一覧表】ポジションの英語|ボランチ・サイドバックは英語で通じない
結論として、striker・midfielder・defender・goalkeeper はそのまま通じますが、「ボランチ」「サイドバック」「トップ下」「サイドハーフ」は英語圏の競技用語とズレます。
| 日本語 | ブルーロック英語版での関連表記 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|---|
| ストライカー | striker(Kodansha USA全巻) | striker | ○ 作品の中心語 |
| 絶対的エースストライカー | an absolute Ace Striker(同第1巻) | ─ | 作品独自の言い回し |
| フォワード | ─ | forward / attacker | ○ striker の別名 |
| ミッドフィルダー | ─ | midfielder | ○ |
| ディフェンダー | ─ | defender | ○ |
| ゴールキーパー | goalkeeping AI(同第6巻) | goalkeeper / keeper | ○ keeper は口語 |
| ボランチ | ─ | defensive midfielder / holding midfielder / anchor | ✕ ポルトガル語由来 |
| サイドバック | ─ | full-back / right-back / left-back | ✕ "side back" は無い |
| センターバック | ─ | centre-back(英)/ center back(米) | ○ |
| ストッパー | ─ | stopper | △ マンマーク型のCB |
| リベロ | ─ | sweeper / libero | ○ 英語でも通じる |
| ウイングバック | ─ | wing-back | ○ |
| サイドハーフ | ─ | wide midfielder / winger | △ side half は使わない |
| ウイング | ─ | winger | ○ |
| トップ下 | ─ | attacking midfielder | △ 日本語独自の言い方 |
| 守備的MF | ─ | defensive midfielder | ○ |
| ボックス・トゥ・ボックス | ─ | box-to-box midfielder | ○ |
| 司令塔・ゲームメーカー | ─ | playmaker | △ game maker とは言わない |
| 偽9番 | ─ | false nine | ○ |
| ターゲットマン | ─ | target man | ○ |
| ポーチャー(点取り屋) | ─ | poacher / goalscorer | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| キャプテン | captain | captain / skipper | ○ |
| 監督 | ─ | manager(英)/ head coach(米) | ○ |
| マスター(ノア・スナッフィー) | masters(同第26・32巻) | ─ | 作品独自の役割名 |
【最重要】ボランチは英語では通じない。defensive midfielder / holding midfielder
決定的な根拠が英語版Wikipediaの Midfielder 記事にあります。守備的MFの説明として「In South American football, this role is known as a volante de marca, while in Mexico it is known as volante de contención.」(南米サッカーではこの役割は volante de marca、メキシコでは volante de contención と呼ばれる)と明記されているのです。つまりvolante(ボランチ)は、ポルトガル語圏・スペイン語圏の呼び方として英語資料に紹介されている語であって、英語側の呼称ではない。英語では defensive midfielder(最も中立的)、holding midfielder、anchor、実況では背番号にちなむ the No.6 と言います。英語圏の中継で volante と言っても、まず伝わりません。
サイドバックは full-back。リベロ・トップ下・司令塔の言い換え
英語版Wikipediaの Defender 記事は、ディフェンダーを「centre-backs, full-backs, sweepers, and wing-backs」の4種類に分類しています。この4分類のどこにも "side back" は出てきません。 同記事は続けて The full-backs (the left-back and the right-back) と書いており、右なら right-back、左なら left-back と左右を明示するのが英語流。英語は左右を分けて呼び、日本語はまとめて呼ぶ。この発想の差そのものが和製英語を生みます。
一方で安心していいのが「リベロ」。用語集は Sweeper を「GKとディフェンス陣の間のスペースを守る選手。libero とも呼ばれる」と定義しており、マンツーマンでマークするCBは stopper。残る4語も押さえておきましょう。「トップ下」は attacking midfielder、「サイドハーフ」は wide midfielder(用語集の Winger 項が併記)、「司令塔」は playmaker(「チームのプレーの流れをコントロールする攻撃的な選手」)、「偽9番」は false nine(「相手のマークを崩すために頻繁に中盤へ下りるセンターフォワード」)。潔世一が中盤に下りて全体を見る動きは、英語で語るなら false nine の発想に近いと考えると、海外のファン考察が読みやすくなります。
【一覧表】シュート・パス・ドリブルの英語|「ナイスシュート」は英語にならない
結論として、このカテゴリが日本人が最も引っかかる場所です。とくに「シュート」の品詞の問題は、知らないと一生直りません。
| 日本語 | ブルーロック英語版での関連表記 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|---|
| シュート(名詞) | direct shots(Kodansha USA第22巻) | shot | ✕ shoot は動詞 |
| シュートを打つ | ─ | take a shot / shoot | ○ |
| ナイスシュート! | ─ | Good shot! / What a strike! | ✕ Nice shoot! は品詞誤り |
| シュート!(掛け声) | ─ | Shoot! | ○ 命令形なら一致 |
| 枠内/枠外シュート | ─ | shot on target / off target | ○ |
| ミドルシュート | ─ | a shot from outside the box | △ 固定訳なし |
| ロングシュート | screamer(同第15巻) | a long-range shot / effort | △ 固定訳なし |
| ループシュート | ─ | chip / lob | △ loop shot は使わない |
| ボレーシュート | direct volley(同第30巻) | volley | ○ shot は不要 |
| ハーフボレー | ─ | half-volley | ○ |
| ヘディングシュート | ─ | header | △ heading shot は使わない |
| ダイビングヘッド | ─ | diving header | ○ |
| オーバーヘッドキック | ─ | bicycle kick / overhead kick | ○ |
| ヒールキック | ─ | backheel | △ heel kick は使わない |
| ラボーナ | ─ | rabona | ○ |
| トラップ | Trapping(ファンWiki) | first touch / control | △ 名詞の trap は日本語的 |
| センタリング | Crossing(ファンWiki) | cross | △ 標準は cross |
| スルーパス | ─ | through ball | △ 標準は through ball |
| くさびのパス | ─ | pass into feet | △ 説明的に言う |
| ワンツー | ─ | one-two / give-and-go | ○ |
| ラストパス | a pinpoint pass(同第28巻) | the final pass / killer ball | △ last pass は使わない |
| ロングボール | ─ | long ball | ○ |
| サイドチェンジ | ─ | switch (of play) | △ side change は使わない |
| ドリブル | Creative Dribbling(ファンWiki) | dribbling / to dribble | ○ |
| フェイント | Chop Feints(ファンWiki) | feint | ○ IFAB用語集に定義あり |
| またぎフェイント | ─ | stepover | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| 股抜き | double nutmeg(同第27巻) | nutmeg | ○ 英語でも nutmeg |
| スルー(見逃し) | ─ | dummy | △ 日本語のスルーとは別語感 |
| ボールキープ | Ball-Keeping Sense(ファンWiki) | shielding / hold up the ball | △ ball keep は使わない |
| リフティング | ─ | keepie-uppie / juggling | ✕ lifting では通じない |
| タックル | ─ | tackle | ○ |
| クリア | ─ | clearance / to clear | ○ |
【最重要】シュートは名詞では shot。「ナイスシュート!」は成立しない
英語の shoot は動詞であって、名詞は shot。「強烈なシュートだった」は a powerful shot(× a powerful shoot)、「彼はシュートを打った」は He took a shot.。つまり「ナイスシュート!」は英語として成立しません。正しくは Good shot! / Nice shot!、強烈な一撃には What a strike! / What a hit!、決めきった技術を褒めるなら What a finish!、惜しく外れたら Great effort! や Unlucky!。ちなみに命令形の「Shoot!」(撃て!)は英語でも普通に叫びます。「打つ瞬間は shoot、打った結果は shot」と覚えると整理できます。
センタリング=cross、スルーパス=through ball、トラップ=first touch
用語集は Cross を「攻撃側がペナルティエリアへボールを送り込むこと」、First touch を「受けた瞬間にボールを完全にコントロール下に置く能力」と定義しています。スルーパスは through ball(Britannicaにも立項)。凪誠士郎の「異次元のトラップ」も英語では first touch / ball control の領域で、trap the ball という動詞はあるものの名詞単独で「トラップ」と言うのは日本語的です。
「センタリングは英語で100%通じない」という説明をよく見かけますが、これを裏づける英語圏の一次資料は本記事の調査では確認できませんでした。断定は避け、「標準表現は cross である」という形でお伝えします。
また意外なことに、「ミドルシュート」「ロングシュート」に一対一で対応する英語の見出し語は用語集に存在しません。英語では a shot from outside the box、a long-range shot / effort と距離を説明的に言い、決まれば a screamer。Kodansha USA第15巻のあらすじは糸師凛のゴールをまさに screamer と書いており、公式文が辞書英語ではなく実況の生きた口語を選んでいるのが分かります。
ボレー・オーバーヘッド・ヒール・股抜き|技術名は日英でほぼ一致
用語集の定義を並べると、volley=「地面に触れる前に蹴るパスまたはシュート」、half-volley=「地面に触れた直後を叩く」、bicycle kick=「体を宙に投げ出し、脚をはさみのように動かして頭上を越えて後方へ蹴る技」、backheel=「かかとで後方へ送るパスまたはシュート」、chip=「足をボールの下に差し込んで蹴る高い軌道のシュート」、header=「頭でプレーまたはコントロールすること」。「ボレーシュート」「ヘディングシュート」のように shot を足したくなるのは日本語の癖で、英語は動作名だけで完結します。
そして「股抜き」は nutmeg、「相手の両脚の間を意図的に通してボールを出し、相手を追い越して自分でそのパスを回収すること」。Kodansha USA第27巻は馬狼照英のプレーを a crazy double nutmeg(とんでもない股抜き2連発)と書いています。
【一覧表】ゴールを決める・実況スラングの英語|screamer・golazo・clean sheet
結論として、ここがサッカー英語のいちばん楽しいところ。しかもKodansha USA公式のあらすじにも、この手の実況スラングが普通に使われています。
| 日本語 | ブルーロック英語版での関連表記 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|---|
| ゴールを決める | scoring more goals(Kodansha USA第1巻) | score (a goal) | ○ 最も基本 |
| ネットを揺らす | ─ | net / find the back of the net | ○ 実況の定番 |
| 豪快に決める | ─ | bury it / smash it home | ○ 口語 |
| 冷静に流し込む | ─ | slot it home | ○ 口語 |
| 決めきる(PK等) | ─ | convert | ○ |
| 押し込みゴール | ─ | tap-in | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| 決勝点 | the winning goal(同第28巻) | the winner / the winning goal | ○ |
| 同点弾/先制点 | ─ | equaliser(英)/the opener | ○ |
| 強烈なロングシュート | screamer(同第15巻) | screamer | ○ 用語集に定義あり |
| スーパーゴール | ─ | golazo | ○ スペイン語由来 |
| ワールドクラスの一撃 | ─ | worldie | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| 直接コーナーからのゴール | ─ | Olympic goal | ○ |
| 1試合2得点 | ─ | brace | ○ 日本語に定訳なし |
| ハットトリック | ─ | hat-trick | ○ 語源はクリケット |
| 無失点 | ─ | clean sheet(米: shutout) | ○ |
| 決定機を外す | ─ | sitter | ○ 用語集に定義あり |
| GK・DFの大ポカ | ─ | howler | ○ 用語集に定義あり |
| オウンゴール | ─ | own goal | ○ |
| アシスト | assist(同第20巻) | assist | ○ |
| GKと1対1 | ─ | one-on-one / through on goal | ○ |
| 抜け出す | ─ | clean through / to be through | ○ |
| GKの守備職人 | ─ | shot-stopper | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| 当たり損ね | ─ | scuffed shot | △ 口語 |
| PKの真ん中チップ | ─ | Panenka | ○ 選手名由来 |
| マン・オブ・ザ・マッチ | ─ | man of the match | ○ |
| ゴールに飢える | hungers for goals(同第1巻) | to hunger for goals | ○ 作品全体のトーン |
screamer・golazo・brace・sitter|用語集で定義が確認できる語
基本の「点を取る」は score (a goal)。ほかに net(Oxford Learner's Dictionariesは「especially British English」とラベル)、find the back of the net(実況の定番)、bury it / slot it home、convert、tap-in。用語集で定義が確認できるスラングは、screamer=「ロングレンジからの強烈なシュート」、golazo=「見事な、あるいは印象的なゴール」、brace=「1試合で2得点」、clean sheet=「1点も失点しないこと」、Olympic goal=「コーナーキックから直接決まったゴール」。
失敗を表す語も豊富で、sitter=「明確な得点機会がありながらシュートを外すこと。オープンゴールを外すケースが典型」、howler=「目立つ、場合によっては笑えるミス」。ブルーロックは「決めきれない苦しさ」を延々と描く作品なので、実は sitter がいちばん似合うアニメかもしれません。なお worldie は実況やSNSで頻出しますが、本記事の調査では用語集の見出し語としては確認できなかったので、定義の断定は避けておきます。
GOOOOAL! はスペイン語圏の放送文化
GOOOOAL! という長い雄叫びは、実はスペイン語圏・ラテンアメリカの放送文化です。イギリスの英語実況にもともとこのスタイルはなく、短く鋭い叫びのあとに沈黙、というのが典型です。私が初めてプレミアリーグの英語中継を聴いたときに驚いたのも、この静けさでした。歓声に実況をかぶせず、あえて黙って現場の音を聴かせる「間」こそがイギリス中継の味わいです。ちなみにKodansha USA第1巻は理想のストライカーを a striker who hungers for goals and thirsts for victory(ゴールに飢え、勝利に渇いた)と書いており、この比喩が作品全体のトーンになっています。
【一覧表】戦術用語の英語|プレス・ビルドアップ・カウンター
結論として、戦術用語は英語がそのまま輸入されているものが多く、意外と困りません。盲点は「ポストプレー」「サイドチェンジ」といった日本で作られた言い方のほうです。
| 日本語 | ブルーロック英語版での関連表記 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|---|
| プレス・プレッシング | ─ | pressing | ○ 用語集に定義あり |
| ハイプレス | ─ | high press | ○ |
| ゲーゲンプレス | ─ | counter-pressing / gegenpressing | ○ ドイツ語由来 |
| 引いて守る | ─ | low block | ○ 用語集に定義あり |
| 極端な守備固め | ─ | park the bus | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| カウンター | counterattack(Kodansha USA第21巻ほか) | counter-attack | ○ |
| ビルドアップ | ─ | build-up | ○ 用語集に定義あり |
| 縦に速いサッカー | ─ | route one | ○ |
| ロングボール戦術 | ─ | long ball | ○ |
| ポゼッション | ─ | possession | ○ |
| ティキタカ | ─ | tiki-taka | ○ |
| ワンタッチプレー | ─ | one touch | ○ |
| 連動 | Super Link-Up Play(各話英題) | link-up play | ○ 実在の英語 |
| マンマーク | Manmarking(ファンWiki) | man-to-man marking | ○ |
| ゾーンディフェンス | ─ | zonal marking | △ zone defense は他競技寄り |
| オフサイドトラップ | ─ | offside trap | ○ |
| ディフェンスライン | ─ | back line / defensive line | ○ |
| オーバーラップ | ─ | overlap | ○ |
| インナーラップ | ─ | underlap | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| ポストプレー | ─ | hold up the ball | ✕ post play は別競技の語 |
| ボールを守る | Ball-Keeping Sense(ファンWiki) | shielding | ○ |
| フォーメーション | ─ | formation | ○ |
| セットプレー | ─ | set piece | △ set play とは言わない |
pressing・low block・counter-attack・tiki-taka
用語集は pressing を「守備側の選手が自陣ゴール付近に留まらず、ボールに向かって前進していく戦術」、low block を「自陣の深い位置で守り、相手の攻撃スペースを制限すること」と定義。日本語では言い方が定まっていない概念に、英語には名詞が一つあるわけです。なお park the bus は英語圏でおなじみの言い回しですが、用語集の見出し語としては確認できませんでした。実況やコラムで頻出する口語という位置づけで覚えてください。
攻め方では、Kodansha USA公式のあらすじが counterattack を第17・21・23・25・38巻と繰り返し使っており、試合描写を英語で読むうえで必須の語。あわせて build-up=「相手が組織的に守っている状態でボールを保持して得点を狙う局面」、route one=「もっとも直接的にゴールへ向かう直線的なスタイル」、tiki-taka=「短いパスと動きでポゼッションを維持するスタイル」。ネオ・エゴイストリーグはクラブごとに「思想」が違うのが読みどころなので、この4語で理解が変わります。
ポストプレーは英語で hold up the ball
このカテゴリ最大の落とし穴。日本語の「ポストプレー」に対応する英語は post play ではありません(英語の post play はバスケットボールのそれを指します)。用語集が立項しているのは Hold up the ball、定義は「主にフォワードが味方からのロングボールを受け、体を張って守りながらコントロールし、味方が攻め上がる時間を作るためにプレーを遅らせること」。前述の target man の説明にも「often used to hold up the ball」とあり、英語ではターゲットマンとホールドアップがセットで語られます。
守備の組み方では、用語集は Marking の下位に man-to-man marking と zonal marking(「各選手が相手選手ではなくピッチ上のエリアに責任を持つ方式」)を置いています。日本語の「ゾーンディフェンス」はバスケットボール由来の言い方が混ざっているので、サッカー英語では zonal marking が自然。offside trap はそのまま通じ、破られたときは beating the offside trap。内側を追い越す「インナーラップ」の underlap は用語集の見出し語では確認できなかったので断定は避けます。
【一覧表】ルール・反則・時間の英語|ロスタイムは完全な和製英語
結論として、このカテゴリはIFAB(国際サッカー評議会)の競技規則という最強の一次ソースがあるぶん、はっきり白黒がつきます。
| 日本語 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|
| ロスタイム | stoppage time / added time / injury time | ✕ 完全な和製英語 |
| アディショナルタイム | additional time | ○ IFAB用語集の見出し語 |
| 延長戦 | extra time(米: overtime) | ○ |
| ゴールデンゴール | golden goal | ○ 先に得点した側が即勝利 |
| ハーフタイム | half-time(英)/ halftime(米) | ○ |
| キックオフ | kick-off | ○ |
| 時間稼ぎ | time-wasting | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| オフサイド | offside | ○ 競技規則 第11条 |
| オフサイド(米口語) | offsides | ✕ 規則上は誤り |
| ハンド | handball / handling | △ 日本語は略語 |
| ファウル | foul | ○ |
| 警告 | booking / caution / yellow card | ○ |
| 退場 | red card / to be sent off | ○ |
| アドバンテージ | advantage | ○ |
| シミュレーション | simulation / diving | ○ |
| オブストラクション | obstruction | ○ |
| PK | penalty (kick) / spot kick | △ 略語PKは北米中心 |
| PK戦 | penalty shootout | ○ |
| サドンデス | sudden death | ○ |
| フリーキック | free kick | ○ |
| 直接FK/間接FK | direct / indirect free kick | ○ |
| 壁 | wall | ○ |
| コーナーキック/ゴールキック | corner kick / goal kick | ○ |
| スローイン | throw-in | ○ |
| 主審/副審 | referee / assistant referee | ○ |
| VAR | VAR(Video Assistant Referee) | ○ |
| 勝ち点 | points | ○ |
| 得失点差 | goal difference(米: point differential) | ○ |
| 引き分け | draw(米: tie) | ○ |
【最重要】ロスタイムは英語で stoppage time / added time / injury time
「ロスタイム」は英語ではまったく通じません。 英語版Wikipediaの用語集は Stoppage-time を「試合中に失われた時間を補うために各ハーフの終わりに追加される分数。非公式には injury time や added time など、さまざまな名前で知られている」と定義。さらにIFAB競技規則では、第7条3項の見出しが Allowance for time lost、用語集の見出し語が Additional time です。
そして日本側。日本語版Wikipediaは「ロスタイム」の語源を loss time(和製英語)として扱っています。決定的なのが、日本サッカー協会が2010年7月16日の審判委員会で名称を「アディショナルタイム」とする方針を決めた(審1007-M0103号)という事実。つまり日本国内でも、もう公式には「ロスタイム」と言いません。日本語としても英語としても、この語は役目を終えています。英語中継では We're into stoppage time. が必ず出てきます。
ハンド・警告・PK・セットプレー・オフサイド
日本語の「ハンド」は handball の略で、Hand! とだけ叫んでも通じにくい。競技規則の文脈では handball または handling です。カード関連は、booking=「警告に値する反則で違反者を記録する行為」、yellow card=「警告。caution とも呼ばれる」、red card=「1回の重大な反則、または2枚目のイエロー」。advantage は「反則があっても、被害を受けたチームが有利な状況にあるためプレーを続行させる主審の判断」、「シミュレーション」は simulation で用語集では diving への参照項目です。
セットプレー系はほぼそのまま通じますが、「PK」という略し方は北米中心で、イギリスの中継ではまず penalty。free kick には direct と indirect があり、「セットプレー」は set play ではなく set piece が標準。そしてオフサイドは offside(s は付かない)で競技規則の第11条ですが、アメリカの口語では offsides と複数形で言う人が多い。規則上は誤りですが、実際に耳にします。 ブルーロックの英語吹き替えはアメリカ制作なので、こうしたアメリカ英語の癖が出る可能性があると思って聴くと発見があるかもしれません。
【一覧表】ピッチ・用具・チーム運営の英語|スパイクは cleats か boots
結論として、「スパイク」と「ユニフォーム」はどちらも英語圏では別の語が標準です。ここも和製英語の是正が効く場所です。
| 日本語 | 英語圏の標準表現 | 判定・メモ |
|---|---|---|
| スパイク(靴) | boots(英)/ cleats(米) | ✕ spike では通じにくい |
| ユニフォーム | kit(英)/ uniform(米) | △ 英では kit が標準 |
| すね当て | shin pads(英)/ shin guards(米) | ○ |
| キャプテンマーク | armband | ✕ captain mark は使わない |
| ピッチ | pitch(英)/ field(米) | ○ 規則上は field of play |
| タッチライン | touchline(英)/ sideline(米) | ○ |
| ゴールライン | goal line / byline | ○ byline は口語 |
| センターサークル | centre circle | ○ 英式綴りに注意 |
| ペナルティエリア | penalty area / the box | ○ |
| ゴールエリア | goal area / the six-yard box | ○ |
| ペナルティスポット | penalty spot | ○ |
| ゴールポスト・バー | posts and crossbar / the woodwork | ○ |
| コーナーフラッグ | corner flag | ○ |
| ロッカールーム | locker room(米)/ dressing room(英) | ○ |
| ベンチ | bench / substitutes' bench / dugout | ○ |
| 交代選手 | substitute / sub | ○ |
| 途中出場で活躍する選手 | super sub | △ 用語集の見出し語では未確認 |
| 監督 | manager(英)/ head coach(米) | ○ |
| 代表キャップ | cap | ○ 代表での出場 |
| ダービー | derby | ○ ローカルライバル対決 |
| 日程・試合 | fixture | ○ |
| 代表チーム | national team | ○ |
| 予選 | qualifier | ○ |
| 昇格・降格 | promotion / relegation | ○ |
スパイクは cleats(米)/boots(英)、ユニフォームは kit
用語集の Boots の定義は「選手の履物。通常はスタッドが付いている」で、スタッドの付いた靴=boots / cleats という関係です。英語の spike は陸上や野球のスパイクを連想させる語なので、サッカーの文脈で "soccer spikes" と言うとネイティブには少し座りが悪い。アメリカ市場向けの英語版に合わせるなら cleats が自然でしょう。
「ユニフォーム」は kit が標準で、用語集は「選手が着用するサッカー専用の衣類。uniform や strip とも呼ばれる」と定義。uniform も間違いではありませんが、イギリス系のサッカー英語では圧倒的に kit です。そして「キャプテンマーク」は armband で、日本語の「マーク」は完全に和製の言い方です。
ピッチ・ボックス・ウッドワーク・キャップ・ダービー
Pitch の定義は「サッカーの試合を行う競技面。競技規則では field of play と呼ばれる」。つまり規則の正式名は field of play で、pitch は日常語です。the box は penalty area への参照項目(ゴールエリアは the six-yard box)、the woodwork は「ポストとクロスバー。"the ball came back off the woodwork" のように使う」で、「木製部分」という古い呼び名がそのまま残っています。チーム運営では cap=「代表チームでの出場。イングランド代表選手に伝統的に帽子が贈られたことに由来する」、derby=「ローカルなライバル同士の対戦」、fixture=「日程が決まった試合」。ブルーロックはU-20ワールドカップという国際大会の文脈が濃いので、national team・qualifier・cap は英語版で自然に出てきます。
【一覧表】ピッチ上の掛け声・コーチングコールの英語
結論として、試合中に飛び交う短い掛け声こそ、英語版アニメで最初に聞き取れるようになる部分です。ブルーロックは試合シーンの比率が高いので、この16フレーズを知っているだけで聞こえ方が変わります。
| 場面 | 英語のコール | 意味 |
|---|---|---|
| 守備 | Man on! | 「背後に相手がいるぞ!」 |
| 守備 | Mark up! | 「マークにつけ!」 |
| 守備 | Hold the line! | 「ラインの高さを保て!」 |
| 守備 | Push up! | 「ラインを上げろ!」 |
| 守備 | Get goal side! | 「ゴール側に体を入れろ!」 |
| 守備 | Close him down! | 「寄せろ!」 |
| 攻撃 | Time!/You've got time! | 「寄せられてない、時間あるぞ!」 |
| 攻撃 | Switch it!/Switch play! | 「逆サイドに展開しろ!」 |
| 攻撃 | Square! | 「横パスをくれ!」 |
| 攻撃 | Through! | 「縦に(スルーパスを)出せ!」 |
| 攻撃 | Call for it! | 「ボールを呼べ!」 |
| 攻撃 | Shoot! | 「打て!」 |
| 称賛 | Well done!/Good job! | 「ナイスプレー!」 |
| 称賛 | What a strike! | 「ナイスシュート!」 |
| 励まし | Unlucky! | 「惜しい!/ドンマイ!」 |
| 励まし | Keep going!/Heads up! | 「続けろ!/顔を上げろ!」 |
Man on! と Unlucky!|1語コールと「ドンマイ」の正体
いちばん有名なのが Man on!。ボールを受けようとしている味方に「後ろに相手が来てるぞ」と警告する叫びで、直訳すると意味不明ですが There is a man on you. の省略形だと思えば腑に落ちます。 攻撃側のコールは「今どういう選択肢があるか」を1語で伝えるのが特徴で、Time!(まだ寄せられていない、落ち着け)、Switch it!(逆サイドへ。日本語の「サイドチェンジ」は英語では動詞 switch で言います)、Square!(横パスをくれ)、Through!(縦に通せ)。
そして注意したいのが、外したときに Don't mind! とは言わないこと(これが和製英語「ドンマイ」の元です)。英語圏では Unlucky!(運がなかったな=惜しい!)が最頻出。この16フレーズは英語版を観ながらそのまま真似できます。 私は英語中継とアニメの英語吹き替えを行き来しながら、「同じ状況では同じフレーズが繰り返される」という当たり前の事実に助けられてリスニングを伸ばしてきました。
【一覧表】ブルーロック独自用語の公式英訳|エゴ=ego、武器="weapons"
結論として、ブルーロックの独自用語は「既存の英単語を引用符でくくって特別な意味を持たせる」という手法で英訳されています。最も信頼できる一次ソースは、英語版コミックの版元であるKodansha USAが各巻あらすじで使っている英語です。
| 日本語 | 公式英訳 | 出典(媒体・巻) |
|---|---|---|
| エゴ | ego(clash of egos / battle of egos) | Kodansha USA 第2・8・17巻 |
| エゴイスト | egoist(Neo Egoist League)/egotist | 同 第29・35・36巻 |
| エゴイズム | "egoism" | 同 第13巻 |
| エゴで上回る | out-ego(造語) | 同 第1巻 |
| フィジカルで上回る | out-muscle | 同 第1巻 |
| 青い監獄(ブルーロック) | Blue Lock | 原作公式・アニメ公式 |
| ブルーロックプロジェクト | Blue Lock Project | 公式ファンWiki |
| 日本フットボール連合 | the Japan Football Union | Kodansha USA 第1巻 |
| 絶対的エースストライカー | an absolute Ace Striker | 同 第1巻 |
| 武器 | "weapons" | 同 第2・10巻 |
| サブの武器 | "side weapon" | 同 第25巻 |
| 化学反応 | "chemical reaction" | 同 第8巻 |
| かいぶつ | "monster" | 同 第9巻 |
| 覚醒 | awakening | 同 第5・9・31巻 |
| フロー(挑戦的集中) | flow state(口語は "in the zone") | 同 第17巻 |
| メタビジョン | "meta vision"(2語) | 同 第22・24巻 |
| メタビジョン(ファンWiki表記) | Metavision(1語) | 公式ファンWiki |
| 反射的思考 | "reflexive thinking" / "reflexive thinker" | Kodansha USA 第13・14巻 |
| 黄金の方程式 | "golden formula" | 同 第22巻 |
| 奥の手・必殺技 | "ultimate" | 同 第29巻 |
| 制約 | "constraints" | 同 第31巻 |
| 捨て駒 | "sacrificial pawn" | 同 第26巻 |
| ゼロ(サッカーの0) | the "zero" | 同 第30巻/各話英題 |
| 喰らう | devour | 同 第10・34巻 |
| 総当たり戦(一次選考) | round-robin tournament | 同 第2・3巻 |
| 一次/二次/三次選考 | First / Second / Third Selection | 同 第11・12巻 |
| 適性試験(トライアウト) | tryouts | 同 第12巻/各話英題 |
| ライバルバトル | rival battles | 同 第7巻 |
| ブルーロックマン | Blue Lock Man(goalkeeping AI system) | 同 第6巻 |
| ブルーロックイレブン | Blue Lock Eleven | 同 第13〜17巻 |
| ダイヤモンド世代 | the "diamond generation" | 同 第14巻 |
| ワイルドカード | wild-card striker | 同 第14巻 |
| 悪魔のストライカー | the demon striker | 同 第15巻 |
| 切り札 | trump card | 同 第16巻 |
| 第二段階 | Phase Two | 同 第18巻 |
| ネオ・エゴイストリーグ | Neo-Egoist League / Neo Egoist League | 同 第20巻/第29巻 |
| サイドB | "Side B" project | 同 第37巻 |
| 年俸ランキング | salary rankings | 同 第34巻 |
| U-20ワールドカップ | the U-20 World Cup | 同 第34・35巻 |
| 天才/学習者(秀才) | Genius / Talented Learner | 公式ファンWiki |
| 主人公論 | Protagonism | 公式ファンWiki |
エゴ=ego、エゴイスト=egoist と egotist の使い分け
作品の核である「エゴ」は、そのまま ego。各巻あらすじには clash of egos(エゴのぶつかり合い)、battle of egos が並びます。「エゴイスト」はegoist と egotist の両方が使われていて、egoist は哲学寄りの「自己の利益を行動原理とする人」(第3期タイトルの Neo Egoist League はこちら)、egotist は日常語寄りの「自分の話ばかりする自惚れ屋」(第29巻 Germany's egotists、第36巻 the team of egotists)。日本語の「エゴイスト」はその中間くらいのニュアンスなので、2語の存在を知っておくと英語版の手触りが変わります。単に「わがまま」なら selfish ですが、明確に否定的な語なので作品の文脈ではほぼ使われません。
out-ego|辞書に載っていない公式の造語
Kodansha USA第1巻の公式あらすじにある、この一文が白眉です。
Who will emerge to lead the team...and will they be able to out-muscle and out-ego everyone who stands in their way?
out- は「〜において上回る」を作る接頭辞で、outrun(走り勝つ)、outsmart(知恵で上回る)のように使います。つまり out-muscle は「フィジカルで上回る」、out-ego は「エゴで上回る」。辞書には載っていない造語ですが、out- の作り方を知っている英語話者なら一発で意味が取れます。この作品でしか成立しない概念を英語の造語ルールで1語にしたわけで、翻訳としてかなり見事だと思います。
武器="weapons"、化学反応="chemical reaction"、そして引用符の意味
「武器」は英語版で引用符付きの "weapons"。第25巻には his newly unveiled "side weapon," the lefty direct shot(サブの武器、左足のダイレクトシュート)という派生表現も。「化学反応」は第8巻の the team's ability to form a "chemical reaction" with their play styles です。面白いのは、どちらも引用符でくくられていること。英語では "..." を付けて「この語は通常の意味ではなく特別な用語です」と示す慣習があり、翻訳者が「これは作品内の専門用語だ」と読者に合図しているわけです。この引用符ルールは "monster" "reflexive thinking" "golden formula" "ultimate" "constraints" "sacrificial pawn" と、作品用語のほぼ全域に一貫して適用されています。
覚醒・フロー・メタビジョンから "golden formula" "ultimate" までの新語
覚醒 → awakening(第5巻 all the players seek their "awakening")、フロー(挑戦的集中) → flow state(第17巻)。flow state は英語圏でも心理学用語としてそのまま通用する語で、口語では in the zone。メタビジョン → "meta vision"(第22巻、第24巻 his new "100 percent meta vision")。ただしメタビジョンは表記が割れます。Kodansha USA公式は "meta vision"(2語)、作品公式ファンWikiは Metavision(1語)。検索するときは両方を試してください。
そして他のどのサイトも書いていないのが、ネオ・エゴイストリーグ以降の新語です。黄金の方程式 → "golden formula"(第22巻。第8話の英題 The Formula for Goals と呼応)、奥の手 → his "ultimate"(第29巻)、制約 → "constraints"(第31巻)、捨て駒 → "sacrificial pawn"(第26巻。スナッフィーを chess master に喩える文脈とセット)、ゼロ → the "zero" at the root of it all(第30巻)。
なお「才能の開花」に対応する固定の英訳は、本記事の調査ではKodansha USA・Crunchyrollのいずれにも見つけられませんでした。最も近い公式語は awakening ですが、これは「覚醒」の訳語なので厳密には別です。断定は避けておきます。
【一覧表】キャラクターの「武器」は英語で何という?
結論として、キャラごとの「武器」の英語には、Kodansha USA公式が使っている語と、作品公式ファンWikiが整理している語の2系統があります。混ぜないことが大事です。
| 日本語(武器) | 英語表記 | 出典・持ち主 |
|---|---|---|
| 空間認識能力 | spatial awareness | 原作公式・ファンWiki/潔世一 |
| ゴールの匂い | Goal Scent | 原作公式・ファンWiki/潔世一 |
| ダイレクトシュート(直撃蹴弾) | direct shot | Kodansha USA 第22巻/潔世一 |
| 左足ダイレクトシュート | lefty direct shot | 同 第25巻/潔世一 |
| 二丁拳銃ダイレクトボレー | two-gun direct volley | 同 第30巻/潔世一 |
| カイザーインパクト・マグナス | Kaiser Impact Magnus | 同 第31巻/ミヒャエル・カイザー |
| メタビジョン | "meta vision" / Metavision | Kodansha USA/ファンWiki |
| 適応力 | Adaptability | ファンWiki/潔世一 |
| 分析力 | Analytical Ability | ファンWiki/烏旅人ほか |
| 捕食者の眼 | Predator Eye | ファンWiki |
| 操り人形 | Puppet Control | ファンWiki |
| トラップ | Trapping | ファンWiki/凪誠士郎 |
| クロス | Crossing | ファンWiki |
| ミドルシュート | Middle Shot | ファンWiki |
| コントロールシュート | Controlled Shot | ファンWiki |
| 無回転シュート | Gyro-Shot | ファンWiki |
| 両利き | Ambidexterity | ファンWiki |
| 爆発的加速 | Explosive Acceleration | ファンWiki/千切豹馬 |
| ステルスウォーク | Stealth Walk | ファンWiki |
| マリーシア・ドリブル | Malicia Dribbling | ファンWiki |
空間認識能力=spatial awareness、ダイレクトシュート=direct shot
空間認識能力 → spatial awareness。実はこれ、サッカーのコーチングで実際に使われる英語で「周囲の状況を把握する力」を指します。作品独自の造語ではなく、実在の競技概念をそのまま採用した訳なのがポイント。派生する「ゴールの匂い」は Goal Scent で、scent は猟犬が獲物の匂いを追うイメージの語です。
ダイレクトシュート → direct shot。ただしこれは英語のサッカー用語としてはやや珍しく、一般的には one-touch shot や first-time shot と言います。作品が独自の呼称を使っているので、英語版もあえて direct shot で通したと考えるのが自然でしょう。カイザーの必殺技は第31巻で the new-and-improved Kaiser Impact Magnus と、技名をそのまま英語表記で書いています。
ファンWiki表記の武器名は、公式訳と区別して読む
作品公式ファンWikiの Weapons ページには、Cognitive(認知系)・Physical(身体系)・Technique(技術系)の3分類で数十個の武器名が英語で整理されており、Predator Eye Puppet Control Malicia Dribbling Stealth Walk など読み物として面白い名前が並んでいます。ただしファンWikiは非公式です。Kodansha USA公式が使う語(spatial awareness / direct shot / "meta vision" / flow state / "weapons")と、ファンWikiが独自に整理した語は必ず区別して読んでください。「公式訳」と「ファンの訳」を混ぜて覚えると、英語圏のファンと話したときに噛み合わなくなります。 キャラクターの英語名や英語吹き替えキャストはブルーロック キャラクター英語名一覧にまとめています。
各話サブタイトルの英題から学ぶサッカー英語|「超連動」=Super Link-Up Play
結論として、ブルーロックの各話サブタイトルの英題は、それ自体が優秀なサッカー英語の教材です。日本語では漢字1〜2文字なのに、英語では実在の競技用語やイディオムが当てられている回がいくつもあります。
Super Link-Up Play・Donkey・The Geniuses and the Average Joes
いちばん見事なのが「超連動」の Super Link-Up Play。link-up play は英語圏で実際に使われるサッカー用語で「選手同士が連携してボールを前進させるプレー」を指します。抽象語の「連動」に、実在の競技英語をぴったり当てているわけです。
次に「ヘタクソ」の Donkey。donkey はロバですが、イギリスのサッカー俗語で「不器用な、下手な選手」を指す語でもあります。直訳の Terrible ではなく、あえてサッカー文化の中にある侮蔑語を選んだわけです。そして「天才と凡才」の The Geniuses and the Average Joes。Average Joe は「ごく平均的な人」を表す英語のイディオムで、「凡才」を英語話者にとって最も肌感覚のある表現に置き換えているのが上手いところ。
Premonition and Intuition・Devour・Soccer's "Zero"
英語学習的に美味しいのが「予感と直感」の Premonition and Intuition。premonition は「悪いことが起きそうな虫の知らせ」に寄る語、intuition は「論理を経ずに分かる感覚」。日本語だと両方「かん」で片づけがちな区別が、英題では明確に分かれています。ほかに「喰」→ Devour(第10巻 devour Rin、第34巻 devour the world と一致。公式コミックと配信で語彙が揃っている珍しい例)、「サッカーの0」→ Soccer's "Zero"、「交代劇」→ The Subs Take to the Stage(sub=交代選手)、「終撃」→ Last Attack。なお各話英題は配信サービスおよび英語版Wikipediaのエピソード一覧に基づくもので、話数と英題の対応は媒体によって異なる場合があります。本記事では話数の断定はしません。
同じ用語なのに英語が2通り|Neo Egoist League と Neo-Egoist League
結論として、この作品の英語版で最も象徴的なズレが「ネオ・エゴイストリーグ」の綴りです。しかも割れているのが、翻訳者の違いではなく同じKodansha USAの中というのが面白いところ。
公式の中でハイフンが揺れている
| 出典 | 表記 |
|---|---|
| Kodansha USA 第20巻あらすじ | Neo-Egoist League(ハイフンあり) |
| Kodansha USA 第25巻あらすじ | Neo-Egoist League(ハイフンあり) |
| Kodansha USA 第29巻あらすじ | Neo Egoist League(ハイフンなし) |
| Kodansha USA 第33巻あらすじ | Neo Egoist League(ハイフンなし) |
| アニメ第3期 公式サイト | "BLUELOCK" Neo Egoist League |
つまり巻をまたぐと表記が変わっているわけです。同じ現象は他にもあり、メタビジョンは "meta vision"(Kodansha USA)と Metavision(ファンWiki)、馬狼照英の綴りは Shouei Barou(Kodansha USA)と Shoei Baro(ファンWiki)で割れます。たった1つの固有名詞の中に、「英語らしく複合語として繋ぐか、日本語の分かち書きを残すか」という判断のブレが化石のように残っているわけです。
検索でヒットしないときは、必ずもう一方の綴りを試す
実務的に大事なのは、海外Wikiやグッズ、SNSで検索してヒットしないときは、必ずもう一方の言い方を試すこと。Neo Egoist League と Neo-Egoist League、meta vision と Metavision、Barou と Baro。私も前職で海外向けの用語を扱っていたとき、同じ製品が英語圏で2つの呼び名で流通していて、片方だけで検索して「情報がない」と誤判断しかけた経験が何度もあります。「1つの日本語に対して英語は1つ」という思い込みが、いちばん危ない。
バレーボールでも同じことが起きていて、ハイキューの「エースへのトス」は媒体によって Setting for the Ace と A Toss to the Ace に割れます。詳しくはハイキュー バレーボール用語の英語一覧をどうぞ。名言・セリフの英訳でも媒体差は必ず起きるので、ブルーロックの英語名言・セリフ集もあわせてご覧ください。
英語版アニメ・漫画で用語の「実際の使われ方」を確かめる方法
「結局、自分が観ている版ではどう言っているの?」と気になったら、英語版で確かめるのが一番確実です。ただし日本国内から普通に配信サービスを開いても、英語音声は基本的に選べません。
日本のNetflixは英語字幕のみ。英語音声にはVPNが要る
日本のNetflixではブルーロックの第1期・第2期が配信されていますが、音声は日本語のみで、選べるのは英語字幕だけです。一方、アメリカのNetflixでは英語吹き替え・英語字幕の両方が使えます。そしてCrunchyrollは公式に「アジアと日本を除く全世界」を配信テリトリーとしているため、日本から普通にアクセスしても英語版は出てきません。つまり「英語字幕だけでいい」なら今すぐ日本のNetflixで始められますが、「英語音声で聴きたい」ならVPN経由のCrunchyrollか米国Netflixが必要ということになります。配信ラインナップ・対応言語・対応地域は時期によって変わるため、視聴前にご自身の環境で必ずご確認ください(本記事執筆時点=2026年7月の情報です)。
NordVPNで英語圏サーバーに接続する3ステップ
この壁を越える方法が、VPNで英語圏のサーバー経由でアクセスするというやり方です。手順は3ステップだけ。
- NordVPNでアメリカなど英語圏のサーバーに接続する
- その状態で、普段どおり配信サービス(Netflix や Crunchyroll)を開く
- 英語音声・英語字幕を選び、shot・cross・stoppage time・"weapons" の使われ方を確認する
ポイントは「VPNに接続 → その後にアプリを開く」という順番だけ。英語圏のサーバーに接続すると、あたかも海外からアクセスしているかのように扱われ、その国向けのカタログ・音声オプションが利用できるようになります。 NordVPNは利用者が多く、初めての方でも設定に迷いにくいのが特徴です。逆に言えば、VPNなしで日本から英語音声版を観るのは基本的に難しいのでご注意ください。サービス別の詳しい比較と切り替え手順はブルーロックを英語で見る方法にまとめています。
英語版漫画・バイリンガル版という選択肢
文字で確認したい方には英語版漫画という手も。Kodansha USAの英語版は、本記事執筆時点(2026年7月)で電子版が第38巻まで、紙版が第32巻まで刊行済みです(日本語版は39巻)。電子と紙で刊行ペースが大きく違うので、「英語版は何巻まで?」と調べるときは必ずどちらの版かを確認してください。「用語の英語を確かめたい」なら、『バイリンガル版デラックス ブルーロック 1 BLUELOCK』(KODANSHA BILINGUAL COMICS、2025年9月19日発売、翻訳:ネイト・ダー)が最適解。コマの外に日本語、吹き出しの中に英訳という構成なので、「この日本語がこの英語になっている」という対応を1ページの中で確認できます。 英語版漫画での学習法はブルーロックの英語版漫画で英語学習にまとめています。
サッカー用語で英語を伸ばす【YOSHI流】
最後に、この記事の用語を教材として使い倒す方法を3つ。結論から言うと、専門用語は「意味を知っている状態で音を浴びる」と、驚くほど早く定着します。
用語を先に固めてから、反復して観る
最も効果を感じてきたのが、観る前に用語を入れておくという順番です。本記事の早見表を手元に置き、shot cross through ball stoppage time clean sheet one-on-one あたりを頭に入れてから試合回を観る。用語を知らないまま観ると「知らない単語だらけだ」と感じますが、実際は同じ20〜30語が繰り返されているだけです。試合シーンは日常会話と違って語彙が閉じているので、先に固めた分だけ確実に回収できます。
そして反復。配信アプリのダウンロード機能とバックグラウンド再生を使えば、好きな回を保存して通勤中にオフラインで聴けます。同じ1話を5回聴くほうが、5話を1回ずつ観るよりずっと効きます。
スクリプト×AIで語源と実際の使われ方を深掘りする
もう一つ愛用しているのが、スクリプト(セリフ一覧)×AIの合わせ技です。「Blue Lock script」「Blue Lock transcript」で検索して英語セリフのテキストを探し、気になった用語をコピーしてChatGPTなどのAIに「この語の語源と、実際の試合ではどんな場面で使われるか教えて」と投げるだけ。たとえば nutmeg を貼れば語源の諸説まで返ってきますし、out-ego のような造語も「out- の接頭辞で〜」と即座に解説してくれます。辞書を引くより速く、文脈に沿った"生きた解説"が得られるのが強み。留学経験のない私がTOEIC990点・VERSANT76点(80点満点中)まで到達できたのも、こうした積み重ねでした。
【独自】アニメ→プレミアリーグの英語ハイライトへ発展させる
ここからが、私がいちばんおすすめしたい発展形です。ブルーロックで覚えた語彙は、そのまま実際のサッカー中継で使えます。 プレミアリーグやチャンピオンズリーグの英語ハイライト動画(公式YouTubeチャンネルで無料公開)を観ると、What a strike! He's through on goal! And he finds the back of the net! That's a screamer! がそのまま飛び交っています。アニメで覚えた語彙が現実の英語で通用する瞬間を体験すると、学習のモチベーションが跳ね上がります。
しかも中継の英語は同じ状況で同じフレーズが繰り返されるので、パターンが有限。私はこの「アニメ→実際の中継」というルートで、サッカー関連の英語だけは異様に強くなりました。「勉強」ではなく「好きな試合をもう一度観る」だけなので、心理的なハードルもほとんどありません。 アニメを使った英語学習の全体像はアニメ×英語学習の効果と正しいやり方をまとめた記事にまとめています。
まとめ
この記事では、『ブルーロック』のサッカー用語と作品独自用語を、「日本語」「ブルーロック英語版(Kodansha USA公式・Crunchyroll・公式ファンWiki)」「実際のサッカー英語」の3列対照で、9カテゴリ・合計170語以上にわたって整理してきました。
サッカーの和製英語で覚えて帰っていただきたいのはこの6点です。
- ボランチは英語で通じない。defensive midfielder / holding midfielder / anchor
- サイドバックも通じない。full-back(左右を明示して right-back / left-back)
- シュートは名詞では shot。shoot は動詞
- 「ナイスシュート!」は英語にならない。Good shot! / What a strike!
- ロスタイムは完全な和製英語。stoppage time / added time / injury time
- スパイクは cleats(米)/boots(英)
そしてブルーロックの作品独自用語で押さえるべきはこの4点です。
- エゴ=
ego。エゴイストはegoistとegotistが使い分けられる - 武器=
"weapons"(引用符付き)。サブの武器は"side weapon" - 化学反応=
"chemical reaction"。かいぶつ="monster" - フロー=
flow state(口語はin the zone)。覚醒=awakening
忘れてはいけないのが、公式の中でも訳語は揺れるということ。ネオ・エゴイストリーグが Neo-Egoist League と Neo Egoist League、メタビジョンが "meta vision" と Metavision。「1つの日本語に英語は1つ」という思い込みを外すだけで、海外の情報にぐっと辿り着きやすくなります。
作品全体の英語トピックはブルーロックは英語で何という?完全ガイドに、キャラクターの英語名と英語吹き替えキャストはブルーロック キャラクター英語名一覧に、名言の英訳はブルーロックの英語名言・セリフ集に、視聴方法はブルーロックを英語で見る方法にまとめています。英語版漫画での学習法はブルーロックの英語版漫画で英語学習に、各話英題の詳しい解説はブルーロックの英語タイトル一覧にまとめました。主題歌の英語はブルーロックのOP/ED・劇中歌の英題一覧で公開しています。まずは英語字幕からでもかまいません。第1話を開いて、Man on! と What a strike! が聞こえてくる瞬間を楽しんでみてください。